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ホンダの新技術「電動過給機」ってナニ? 「ターボ」とは何が違う?

バイクのニュース / 2025年1月29日 20時10分

2024年11月にイタリア・ミラノで開催されたバイクの見本市「EICMA(エイクマ)」で、ホンダは「電動過給機」搭載V型3気筒エンジンのコンセプトモデルを発表しました。これは一体どんなモノなのでしょうか? 4輪車でメジャーな「ターボ」との違いは?

■そもそものハナシ……「過給機」ってナニ?

 ホンダが2024年にバイクの見本市「EICMA(エイクマ)」(イタリア・ミラノ)で公開した「電動過給機」は、2輪車では世界初の機構になります。その名称から「電気によって過給機を動かす機構」というのはイメージできますが、そもそも「過給機」とはどんな機械で、どんなメリットがあるのでしょうか?

「EICMA2024」でホンダが公開した「電動過給機」付きV型3気筒エンジンのコンセプトモデル「EICMA2024」でホンダが公開した「電動過給機」付きV型3気筒エンジンのコンセプトモデル

 現在の多くのバイクが搭載するエンジン(ICE=内燃機関)は、ガソリンと空気を混ぜた混合ガスを吸い込み、圧縮したところに点火プラグで火をつけて爆発(燃焼)させ、その爆発エネルギーを回転動力として生み出しています。

 大きなパワーを生み出すには排気量をアップしたり、圧縮比を高くするなど様々な方法がありますが、そのひとつに「吸気量を増やす」という手法があります。

 バイクのエンジンの多くは自然吸気(NA)で、シリンダーの中でピストンが下る際に生じる負圧によって混合ガスを吸い込んでいます。

 しかし、何らかの方法で混合ガスをシリンダーに「押し込む」ことで吸気量を増やせれば、結果として排気量を増やしたり、圧縮比を高めることと同じ効果が得られ、パワーアップが可能になります。この混合ガスを押し込む機械が「過給機」になります。

■「過給機」にも種類がある

 エンジンに混合気を押し込む「過給機」は、簡単に言えば「空気ポンプ(圧縮機=コンプレッサー)」です。構造は色々ありますが、羽根車が高速で回転して遠心力で吸気を圧縮するタイプがメジャーです。

「過給エンジン」は、混合ガスを押し込んでパワーアップを図る「過給エンジン」は、混合ガスを押し込んでパワーアップを図る

 そして、その空気ポンプを駆動する方法が、大別して2種類あります。

 ひとつはクルマ(4輪車)でメジャーな「ターボチャージャー」で、もうひとつはカワサキ「Ninja H2 SX」や「Z H2」などが採用する「スーパーチャージャー」です。

 じつは「過給機」を英訳すると「スーパーチャージャー」になるので、機能としてはターボチャージャーもスーパーチャージャー(=過給機)に含まれます。

 しかし駆動方式を区別しやすいように「ターボチャージャー(排気タービン式過給機)」と、「スーパーチャージャー(機械式過給機)」と呼び分けています。

■じつはデメリットもある!?

 まずクルマでもメジャーなターボチャージャーは、本来なら捨ててしまうだけの排気ガスを駆動力にしているので、エネルギーが無駄にならないメリットがあります(燃費にも有利)。

 ただし過給圧が上がってパワーが出るまでに、「スロットルを開ける→エンジンの回転数が上がる→排気ガスの量が増える→排気タービンの回転が上がる→過給圧が上がる」という過程があるため、いわゆる「ターボラグ」と呼ばれるレスポンスの遅れがあります。

 とはいえ、近年のクルマは技術が進化し、ターボラグはほとんど気にならないレベルと言えます。しかしスロットルレスポンスが重視されるスポーツバイクにおいては、わずかなターボラグでも許容しにくいケースもあります。

量産市販バイク初のターボ車は、1981年発売のホンダ「CX500 TURBO」。ホンダ初の電子制御式燃料噴射装置によって82馬力を発揮。翌1982年には650ccに排気量を拡大した「CX650 TURBO」(100馬力)を発売量産市販バイク初のターボ車は、1981年発売のホンダ「CX500 TURBO」。ホンダ初の電子制御式燃料噴射装置によって82馬力を発揮。翌1982年には650ccに排気量を拡大した「CX650 TURBO」(100馬力)を発売

 じつは1980年代初頭には、国内4メーカーからターボバイクが発売されましたが、ほとんどが1代限りで姿を消してしまいました。国内モデルとしてターボが認可されなかったり、当時の免許制度の関係も大きいと思いますが、ターボラグがバイクという乗りものの特性に合わなかった、という部分もあったのではないでしょうか。

 対するスーパーチャージャーは、圧縮機(コンプレッサー)をエンジンが直接駆動しているため、スロットルを開けた際にタイムラグ(ターボラグ)を生じないため、スポーツバイクの特性に向いています。ただしエンジンのパワーの一部を使っているので、燃費などを含めた全体のエンジン効率ではターボチャージャーに譲る部分もあります。

■電動化でメリット盛り沢山!!

 さて、前置きが長くなりましたが、いよいよホンダの「電動過給機」です。こちらは圧縮機(コンプレッサー)の駆動を電動モーターによって行う構造です。

ホンダの「電動過給機」は配置の自由度が高いホンダの「電動過給機」は配置の自由度が高い

 混合ガスを圧縮してエンジンに押し込んで大パワーを生み出すという目的は、従来のターボチャージャーやスーパーチャージャーと同じですが、電動によるメリットは非常に沢山あります。

 まずエンジンの回転数に関係なく、電動モーターを制御することで任意に過給圧をコントロールできるため、ターボチャージャーのようなタイムラグが無く、低回転域でもレスポンスの良い特性を得られます。

 またスーパーチャージャーのようにエンジンのパワーも使わないので、かなり高効率です。

 そしてターボチャージャーは排気管(エキゾーストパイプ)の配管が必要で、スーパーチャージャーは駆動用のチェーンやギアを要するため、過給機本体の配置場所に制限があります。

 しかし電動過給機は配置の自由度が高いため、スペースに限りがあるバイクにおいては、マスの集中化なども含めて有利です。

 バイクの魅力はハイパワーだけではありませんが、電動過給機によって小排気量でもビッグバイクに匹敵するパワーを発揮できれば、好燃費や排出ガスの低減など、昨今話題に上る脱炭素などにも効果があると思われます。

 ホンダの電動過給機はまだコンセプトモデルの段階ですが、是非とも製品化し、バイクの未来を広げて欲しいところです。

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