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ワイヤー式クラッチと油圧式クラッチ、ナニが違う?

バイクのニュース / 2025年2月7日 21時10分

スポーツバイクのクラッチレバーを見ると、根元からワイヤーが伸びる「ワイヤー式クラッチ」と、ブレーキと似ている「油圧式クラッチ」の2種類があります。なんとなく油圧式クラッチの方が高級な感じがしなくもないですが、機能や性能に違いはあるのでしょうか?

■クラッチ本体の構造は、ほとんど同じ

 発進や停止、ギアチェンジのたびに操作するクラッチレバーには、「ワイヤー式」と「油圧式」があります。操作においてはレバーを握ればクラッチが切れ、レバーを離せばクラッチが繋がるという部分で違いはありませんが、構造的な違いやメリット・デメリットはあるのでしょうか?

ワイヤー式クラッチはワイヤーケーブルを引っ張り、油圧式クラッチはマスターシリンダーの油圧でエンジン側のクラッチを断続するワイヤー式クラッチはワイヤーケーブルを引っ張り、油圧式クラッチはマスターシリンダーの油圧でエンジン側のクラッチを断続する

 エンジンがかかっている間は、常に回転し続けるクランクシャフトと、トランスミッション(変速機)や後輪への駆動力を断続するのがクラッチの役目です。

 現行バイクに多い「湿式多板クラッチ」および少数派ですが「乾式多板クラッチ」は、金属製のクラッチプレートと摩擦材を貼ったフリクションプレートを互い違いに複数枚重ね、クラッチスプリングの力で押し付けることでクラッチが繋がります。

 そして、クラッチレバーを握るとスプリングで押し付ける力を緩めてクラッチが切れます。このエンジンに装備されるクラッチ本体の構造は、ワイヤー式クラッチも油圧式クラッチも基本的に同じです。

 それではナニが違うのかというと、クラッチを切る際にスプリングの力を緩めるための力を、クラッチレバーからエンジンのクラッチユニットに伝える方法が異なっているところです。

 ワイヤー式クラッチは、文字通りワイヤーケーブルを引っ張り、エンジン側のクラッチレリーズレバーが「テコの原理」でクラッチスプリングを押し縮めてクラッチが切れます。

 対する油圧式クラッチの構造は、ザックリ言うと油圧式ディスクブレーキに近く、クラッチバーを握るとマスターシリンダーで発生した油圧がホースを伝わってエンジン側のクラッチレリーズピストンを押し、その力がクラッチスプリングを押し縮めてクラッチが切れる仕組みです。

■油圧式クラッチは、メリット盛り沢山!?

 バイクのクラッチ操作方式は長らくワイヤー式のみでしたが、1982年にホンダが世界で初めて「VF750セイバー」および「マグナ」に油圧式クラッチを採用しました。とくに「セイバー」は水冷のV型4気筒エンジンをはじめ、新機軸のメカニズムを満載したバイクだけに、クラッチ操作にも新方式を取り入れたワケです。

バイクで世界初の油圧式クラッチを採用したホンダ「VF750セイバー」(1982年型)バイクで世界初の油圧式クラッチを採用したホンダ「VF750セイバー」(1982年型)

 従来からのワイヤー式クラッチは、ワイヤーケーブルへの注油や、クラッチプレートやフリクションプレートの摩耗に対してワイヤーの遊び調整を行なうなどのメンテナンスが必要です。またワイヤーケーブルが劣化したら交換する必要があります。

 そして大パワーのバイクだと、クラッチが滑ってしまわないように強力なクラッチスプリングを使用するため、クラッチレバーの操作が重くなるデメリットもありました。

 他にも、ワイヤーケーブルの取り回し方でクラッチ操作が重くなったり、半クラッチのフィーリングが変わることもあります。

 対する油圧式クラッチは、クラッチプレートやフリクションプレートが摩耗しても自動的に調整され、ワイヤー注油も必要ないので基本的にメンテナンスフリーです。

 そしてクラッチレバー側のマスターシリンダーと、エンジン側のクラッチレリーズピストンのシリンダー径の大きさや組み合わせによって、クラッチの操作力を軽くすることが可能なので、大パワーのバイクでもクラッチ操作が重くなりません。

 また、油圧を伝えるパイプはワイヤーケーブルと異なり、取り回しの自由度が大きいため、操作の重さやフィーリングが変化しません。これはカウリングを装備してハンドル周りのスペースが狭いバイクにも有効です。

エンジン側のクラッチユニットの基本的な構造は、ワイヤー式クラッチも油圧式クラッチもほとんど同じエンジン側のクラッチユニットの基本的な構造は、ワイヤー式クラッチも油圧式クラッチもほとんど同じ

 ……と、油圧式のメリットばかりが強調されますが、じつは信号待ちなどでギアを入れたままクラッチレバーを根元まで完全に握り切った状態だと、ワイヤー式クラッチはワイヤーの摩擦抵抗があるためクラッチスプリングの反発力と相殺して、レバーを握って保持する力が(若干)軽いという効果があります(油圧式クラッチは摩擦が無いので重さは常に一定)。

■ワイヤー式と油圧式、どっちが優勢かは微妙なトコロ……

 こうしてメリットが多い油圧式クラッチは、大排気量バイクを中心に徐々に装着車が増えました。とくに1990年代のフラッグシップ系やビッグネイキッドの多くは油圧式クラッチを採用しました。

大パワーでもクラッチが滑らないよう密着し、かつクラッチレバーの操作が軽いアシストスリッパークラッチ大パワーでもクラッチが滑らないよう密着し、かつクラッチレバーの操作が軽いアシストスリッパークラッチ

 ところが近年の大型車を見ると、必ずしも油圧式クラッチというワケではなく、国産バイクは高出力なスーパースポーツ系も含めて、どちらかと言うとワイヤー式クラッチの方が多いように感じます。

 じつは、最近は大パワーでも操作力の軽い「アシスト&スリッパークラッチ」や、走行中はクラッチレバーの操作なしでギアチェンジできる「クイックシフター」の装備が標準化したため、操作力が軽い油圧クラッチの優位性が薄れたためかもしれません。

 また、ワイヤー式に比べて部品点数の多さ(=高コスト)なども影響している可能性があります。

 とはいえ外国車を見ると、ドゥカティの現行モデルは全車が油圧式クラッチを装備し、BMWは水平対向2気筒エンジンのモデル(Rシリーズ)は油圧式クラッチ、ハーレーダビッドソンもモデルによってワイヤー式クラッチと油圧式クラッチを使い分けています。

 なのでアッパーミドルクラス以上のバイクで、ワイヤー式と油圧式のどちらが優勢かは微妙なトコロで、現時点では単純に優劣をつけるのが難しい……と言えます。

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