なぜ「香港国家安全法」を各国が支持するのか?メディアが報じない思惑

bizSPA!フレッシュ / 2020年7月12日 15時46分

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史上最大規模のインフラ投資計画となる「一帯一路」

 新型コロナウイルスの感染拡大に世界が頭を悩ませるなか、中国と周辺諸国との間で緊張が高まっている。東シナ海では尖閣諸島を巡って日中の間で緊張が走り、南シナ海では中国の内海化政策が進んでいる。

香港 デモ

2019年6月12日、香港での大規模デモ

 また、新型コロナウイルスの発生源や香港国家安全維持法を巡って、中国と米国、オーストラリアなど欧米諸国との間ではこれまで以上に関係が冷え込んでいる。さらに、中国とインドの国境付近でも衝突が発生し、45年ぶりに死者が出る事態となり、両国の緊張も高まっている。

◆賛成する国が多数となった

 そのような中、6月30日、スイス・ジュネーブで第44回国連人権理事会が開催された。同会合では、香港国家安全維持法に対する審議が行われ、反対する国と賛成する国で意見が分かれた。

 反対する国は、日本を始め、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、スウェーデン、スイス、イギリスなどの27か国で、欧米諸国が圧倒的多数となった。ちなみに、米国はトランプ政権になってから国連人権理事会から脱退している。

 賛成する国は、中国を始め、カンボジア、キューバ、エジプト、イラン、イラク、パキスタン、北朝鮮などの53か国だった。

 同法を巡って、日本の多くのメディアは自由や民主主義が奪われる香港への悲観的な見方、米国や英国の懸念的なコメントを流すしかしておらず、これについて大々的に報じていない。

 賛成する国をみると、どこにあるか分からないような小さい国も多く含まれているが、なぜ53か国も賛成に回ったのだろうか。いくつか例を挙げて見てみたい。

◆関係を悪化させたくない北朝鮮

 まず、北朝鮮だ。北朝鮮が賛成に回ることは想像に難くない。自国も独裁的であり、市民への強い統制を維持している。2020年6月、韓国の脱北者団体が金正恩氏を批判する内容のビラを気球に乗せて散布したが、それが南北友好の象徴だった事務所の爆破に繋がった。

 統制が弛み、市民の中から反発や抵抗の声が大きくなることを常に金政権は警戒している。そして、新型コロナウイルスの影響で1月から中朝国境が閉鎖され、物資の9割以上を中国に依存する北朝鮮が反対に回ることは経済的にも厳しい。

 国家安全維持法が世界的な物議を醸すなか、北朝鮮としても下手に中国からの不信感を高めたくない。また、独裁的な体制で市民や反政府勢力を警戒しているという意味では、中東やアフリカの国々も状況は似ている。

◆反対する国には中国からの援助が停止?

一帯一路

史上最大規模のインフラ投資計画となる「一帯一路」

 また、53か国を見ると、カンボジアやミャンマー、スリランカやラオスなど中国の一帯一路による多額の援助を受けている国が目立つ

「カネでモノを言わせない!」と言えばそれまでかも知れないが、チャイナマネーによって経済成長を後押ししようとしている国にとっては、国家安全維持法の反対をすることで、莫大な資金が突然入って来なくなることは大きな脅威だろう。

 すでに借金を返済できない国も多く存在し、中国はこういったやり方でも国際機関で影響力を高めているように見える。いずれにせよ、世界各国の思惑はそれぞれだ。日本で報道されるように国際社会が一丸となって国家安全維持法に反対しているわけではない。日本のメディアも、こういった視点からの世界をもっともっと報道してほしいものだ。

<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>

【イエール佐藤】

国際政治学者。首都圏の私立大学で教鞭をとる。小さい頃に米国やフランスに留学し、世界の社会情勢に関心を持つ。特に金融市場や株価の動きに注目し、さまざまな仕事を行う。100歳まで生きることが目標

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