木村花さんも苦しんだ「ネット中傷」。弁護士も悩む、定義のあいまいさ

bizSPA!フレッシュ / 2020年7月18日 15時46分

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木村花さんInstagramより

 5月23日に死去した「テラスハウス」(フジテレビ、Netflix)に出演していた女子プロレスラー・木村花さんの一件をきっかけに、ネットの誹謗中傷に対する社会的関心が高まっています。最近ではアンジャッシュ渡部建さんの不倫騒動で、無関係の一般女性が、不倫相手だと勘違いされ、誹謗中傷を受けたという被害もありました。

落ち込む女性

画像はイメージです(以下同じ)

 7月10日には、木村花さんの母である響子さんが、「誹謗中傷ツイートのスクショをリプライで送ってほしい」という趣旨のツイートを発信。その意図は明らかでない点もありますが、賛同した多くのユーザーからスクショが寄せられていました。

 そこで気になったのは、法律ではネットの誹謗中傷(ネット中傷)について、どのように規定しているのかということ。弁護士で公認会計士の資格を持つ後藤亜由夢氏に話を聞きました。

◆「誹謗中傷」を定義するのは難しい

 そもそも「誹謗中傷」は、法的にはどのような解釈となっているのでしょう?

 後藤弁護士は「一般的に、誹謗中傷は悪口などにより他人を傷つけること捉えられますが、法的に定義するのは難しい」と語ります。

 木村花さんの死去を受けて、著名人の中には「誹謗中傷には法的措置をとる」と明言する人も増えていますが、法的な定義がないのに「法的措置」がとれるのでしょうか。

「具体的に法的措置を取るとしたら、名誉毀損プライバシー侵害信用毀損(経済的な信用を毀損すること)に当てはめた対応が考えられます。民事上なら損害賠償請求、刑事上では名誉毀損罪、信用毀損罪、侮辱罪などで告発するということでしょう」

◆最大で3回の裁判が必要に

裁判 判決

 法的措置をとる際には、書き込んだ者のアカウント情報の開示請求を行うことになります。誹謗中傷の書き込みがあったサイトの管理者にはIPアドレス、プロバイダーには住所などの個人情報を請求しますが、すんなり進まないこともあり……。

慰謝料請求まで含めると最大で3回の裁判が必要になります。まずサイト管理者に対し、任意での書き込みIPアドレスの開示請求を行い、サイト管理者が任意で応じない場合、1回目の裁判として、サイト管理者に対して『IPアドレス開示請求の仮処分』を行います。

 次に判明したIPアドレスに基づき、経由したプロバイダーを特定し、2回目の裁判として、プロバイダーに対する『発信者情報開示請求訴訟』を提起します。これら一連の手続が『発信者情報開示請求』と呼ばれています。

 勝訴した場合、プロバイダーから、書き込みを行った者の氏名、住所等が開示されます。その後、判明した氏名などに基づき、ようやく3回目の裁判として、『慰謝料請求訴訟』を行うことになります」

◆弁護士費用はいくらかかる?

 誹謗中傷した相手がわからない段階で裁判を起こさなければいけないとなると、大変な手間がかかりそう……。

 弁護士費用はいくらくらいかかるのでしょうか?

「事務所によってそれぞれ異なるのであくまで目安ですが、着手金・成功報酬含め、『発信者情報開示請求』については30万~50万円。その後の『慰謝料請求』についても30万~50万円で、計60万~100万円といった相場でしょうか。慰謝料請求が多額になる場合は、それに伴い、弁護士費用が増額するような料金体系の事務所もありますね」

◆誹謗中傷にあたる書き込みは

作業する女性

 ひと言で「誹謗中傷」と言っても、その線引きは難しいところ。誹謗中傷に当たらない、ギリギリのラインで不快なリプやコメントをする人も少なくありません。

 どんな内容が「誹謗中傷に当たる」と判断されるのか?

 後藤弁護士によれば、名誉毀損なら「不特定多数が知りうる状態で、特定人の社会的評価を低下させるに足りる事実を摘示したか、否か」が判断基準になるようです。

「具体的には、書き込みの内容や書き込まれた場所、その特定人が一般人か公人(政治家など)か、などを総合的に考慮して判断されます。ただ、一概に明確な線引きは難しいのが現実です。プライバシー侵害や信用毀損についても同様に、明確な基準はなく、やはり書き込みの内容次第といえますね」

◆名誉毀損が成立するケースは?

 例えば加害者側が「そんなつもりはなかった」などと釈明した場合にはどう判断されるのでしょうか。

「加害者側が『名誉毀損するつもりはなかった』と主張しても、その内容が一般人の感覚で名誉を毀損するに足りるものなら、『名誉毀損の故意がある』と判断される可能性があります。

 例えば、ある人が『同性愛者である』との記事とその広告について、平成18年の裁判例では、『現在の日本社会においては、同性愛者、同行為を愛好する者に対しては侮蔑の念を抱く者がなお少なくないことは公知の事実ともいえる』ため、『社会的評価を低下させるものということができる』と判示しています。

 もっとも、これは平成18年における『一般人の感覚』であるため、LGBTに対する理解や社会的状況が変化した今では、その一般人の感覚も異なってくるのかもしれませんが」

 今回の事件を受けて、政府は発信者情報開示までのプロセス簡略化、プロバイダ事業者に対する罰則や説明責任の強化などを検討しています。どのような議論が行われるのか注視してみてもいいかもしれません。

<TEXT/林加奈>

【林加奈】

子育て中のママライターです。大学卒業後、通信関連会社、広告代理店等を経て結婚後にフリーランスのライターに転身。法律、子育て、キャリア、就活など、さまざまなジャンルの記事を執筆しています

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