アマゾン創業者が祖母を泣かせた失敗に学ぶ「人を動かす言葉」

bizSPA!フレッシュ / 2020年9月28日 8時45分

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アマゾンのロゴ Selective focus on Amazon logo with the typical smile on an aluminum bottle. © Kraft74

 取引先へのプレゼンやスピーチで自分の主張を通すには何が必要でしょうか。それは「自分のことば」でしっかりと話すことです。

「自分のことば」で人を動かすとは、どういうことか? 全米で活躍中の日本人プロフェッショナルスピーカーで事業戦略コンサルタントのリップシャッツ信元夏代に、いまでは世界水準の話し方となっている「ストーリーで語る」という話し方について解説してもらいます。ビジネスシーンで人の心を惹きつける話し方とは?

会議 プレゼン

※イメージです(以下同じ)

※本稿は『世界のエリートは「自分のことば」で人を動かす』(リップシャッツ信元夏代・著、フォレスト出版)を再編集しました。

◆アマゾン創業者のスピーチとは?

 まず、ストーリーで語るとはどういうものなのか。アマゾン共同創業者・CEOのジェフ・ベゾスが母校の大学で卒業生へ向けたスピーチがあります。ジェフ・ベゾスが子どもの頃、夏休みをテキサスにある祖父母の家で過ごしたことから始まります。

 10歳の時、祖父が運転する車で小旅行に出かけたのですが、後部座席に乗っていたジェフ少年は、助手席の祖母がずっとタバコを吸っているのに閉口したのです。

 当時、何かにつけ計算をするのが好きだったジェフ少年は、祖母のためにタバコを1回吸うごとにどれだけ寿命を縮めるかを計算しました。そして自慢げに言ったのです。

「1回吸うごとに2分だとして、おばあちゃんはもう9年間も人生を短くしているよ!」

 ジェフ少年はそんな自分の頭の良さと、計算ができることを褒められるだろうと、勝手に思い込んでいました。ところが突然、祖母が泣き出したのです。どうしていいかわからず困惑するジェフ少年。すると、祖父がハイウェイの側道に車を停め、車から出て、ジェフ少年についてくるよう外で待っていました。そして、静かにこう語ったそうです。

◆なぜベゾスの祖母は泣き出したのか

アマゾン

アマゾンのロゴ Selective focus on Amazon logo with the typical smile on an aluminum bottle. © Kraft74

「ジェフ、いつかおまえにも、やさしくあることは頭が良いことよりも難しい、ということがわかるだろう」

 このストーリーを語ってから、ジェフ・ベゾスは卒業生たちに向かって、こう切り出します。

「みなさんに話したいのは、才能と選択の違いです。頭が良いというのは才能です。やさしさは選択です」

「みなさんは才能にプライドを持ちますか? それとも選択にプライドを持ちますか? 16年前、私はアマゾンを作るアイデアが浮かびました」

 すでに金融業界で働いていた彼ですが、この途方もないアイデアに夢中になり、妻も賛成してくれて、熟考を重ねた結果、最終的にやってみることを決断します。

◆リーダーは“ストーリー”で心を掴む

「あなたは才能をどう使いますか? どんな選択をするのでしょうか? 惰性に身を委ねますか? それともあなたの情熱に従いますか? 簡単な人生を選びますか? それとも献身と冒険に満ちた人生を選びますか? 批判されると挫けますか? それとも信念に従いますか? 結局のところ、私たちは何を選択したか、なのです」

 80歳になった時に自分の「ライフストーリー」を振り返るとして、結局人間とは何を選択したかである、とベゾスは語ります。そしてクロージングのことばとして、こう結びます。

「みなさん、自分のために、ステキな物語を書き上げてください」

 このようにトップリーダーはストーリーで人の心を動かします。アップルのスティーブ・ジョブズ、アリババのジャック・マーなど聴衆の心をつかむことがうまいリーダーは、なにも海外だけではありません。あのイチロー選手の話もシアトルの人々の心をわしづかみにしています。

 このようにトップリーダーたちは、ストーリーで失敗や笑いとともに、聞き手に教訓となることや勇気を与える話をしているのです。

◆「ワンビッグメッセージ」と「4つのF」

会話

 次世代のリーダーに求められる資質は何でしょうか? それは「自分らしいことば」でストーリーを語ることです。何も世界のトップリーダーたちのように、素晴らしいストーリーテラーになれということではありません。しかし、自分の自慢話や聞き手が飽き飽きする、いわゆるオレオレスピーチから脱却し、聞き手に共感してもらえる話し方をすべきです。

 とくにビジネスにおいては、商談やプレゼン、会議などにおいて、商品説明や議事内容ばかりに終始せず、まずは聞き手の心をつかみ、行動を促すことを目的としなければなりません

 ビジネスにおいてストーリーを語ることは「コーポレートストーリー」と言われます。まずは、このビジネス戦略としてのコーポレートストーリーを商談やプレゼンで活用していきます。それには、次の2つがストーリーで語る前提になります。

・ひと言で共感を集める「ワンビッグメッセージ」を伝える
・失敗談こそ人を動かす「4つのF」を使う

◆共感を集める「ワンビッグメッセージ」

 どんなスピーチでもプレゼンでも、この1点だけは聞き手に伝えたいというメッセージがあるものです。その「たった1つの大事なメッセージ」を、私が提唱しているブレイクスルー・メソッドでは、「ワンビッグメッセージ(One Big Message)」と呼んでいます。

 相手に伝わるだけでなく相手を動かすことのできるストーリーを作るために何よりも大切なのは、話の最初から最後まで全体を通して、このワンビッグメッセージが一貫して明確に伝わってくる、ということなのです。

 そのためにすべきことは、まず話し手自身が、伝えたいことを、たった1つのワンビッグメッセージに絞り込むことです。英語の場合は「10語以内で」と言われるのですが、日本語にすると「約20字」が適切な長さです。

「ワンビッグメッセージを20字以内に凝縮する」

 というルールを決めておくと、本当に言いたいことだけに徹底的に絞り込むことになります。絞り込まれているからこそ、異なる解釈をする余地を与えず、圧倒的に伝わるメッセージに仕上がるのです。

◆20文字以内に言葉を凝縮する方法

プレゼン

 また短いためにメッセージを覚えやすくなり、聞き手の脳裏にしっかりと焼きついてくれるのです。20字にまとめるプロセスは、以下の手順でやってみましょう。

① まず本当に大切なメッセージは何か、考える
 ここで「あれも入れたい」「これも入れたい」としたら、情報が絞り切れていないということですから、まず情報を絞りましょう。そして、「自分視点」ではなく、「聞き手視点」を持つことも忘れずに。

② そのメッセージを20字以内にまとめてみる
 ここで30字も40字もあったら、やはり情報が絞り切れていないということになります。

◆失敗談こそ人を動かす「4つのF」

 あなたがふだんしているビジネスプレゼンを考えてみましょう。

「わが社の製品がどれほど素晴らしいものか」
「わが社はどれほどグローバルに活躍し成功している会社か」

 そうやって「成功話」にフォーカスしていませんか? もちろんビジネスでは、自社や自社商品・サービスを売り込むため、相手が獲得する「ベネフィット」にフォーカスする必要があります。しかし、相手を「その気」にさせるためには、「いかに良いか」だけにフォーカスしていては成功しないのです

 聞き手が苦労しているような課題や問題意識を察知し、いかに自分たちもその苦労を経験してきたか、そこからどんな失敗やフラストレーションを経て解決策を見いだしてきたのか、そこを語ることで「この人は/この会社は、われわれの苦労をわかってくれる」と共感し、人の心が動くものです。

 いかなるストーリーにおいても「4つのF」のいずれかの要素を組み込んでいくのが大切です。4つのFとは次のとおりです。

① Failures(失敗、過ち)
② Flaws(欠点)
③ Frustrations(フラストレーション、不満、苦悩)
④ Firsts(初めての体験)

◆誰にも語れない“あなただけのストーリー”を

通勤

 プレゼンテーションというのは、人と人との心のつながりを作るものです。心を動かさない単なる情報提供なら、資料を配布して読んでもらえばよいのです。

 わざわざ「人」が「人」に向かって、「ことば」というアナログな方法でコミュニケーションするのは、心のつながりを求めるからです。そして人は、お互い何かが足らないからこそ惹かれ合うものです。

 大成功を収めて完璧なように見える人の話は、自分とは遠い存在としてしか見えません。けれども、先の4つのFのような失敗談を聞くと、親近感が湧き、「自分にもできるかも」「それをやってみよう」と思うようになるものです

 以上、伝えるべきことを20字にまとめ、そのストーリーに4つのFを入れ込むことで、聞き手は動かされていきます。そうしたあなた自身の経験から、エピソードを取捨選択してストーリーを作り上げた時、誰にも語れない“あなただけのストーリー(ことば)”になるのです。

<TEXT/リップシャッツ信元夏代>

【リップシャッツ信元夏代】

事業戦略コンサルタント、認定スピーチコーチ、プロフェッショナルスピーカー。2014 年には「ブレイクスルー・スピーキング™ 」を立ち上げ、グローバルに活躍する日本人向けに人々の心を魅了するプレゼン・スピーチを指導。著書に『世界のエリートは「自分のことば」で人を動かす』(フォレスト出版)など。著者メディア「信元夏代のスピーチ術」も更新中

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