「さいたま新都心は、海のない豊洲」湾岸 VS 埼玉の住宅事情を比較<のらえもん×すんで埼玉>

bizSPA!フレッシュ / 2020年10月4日 8時47分

写真

さいたま新都心駅周辺

 東京湾に面した都内の人気住宅地・湾岸エリアと、東京近郊のベッドタウンとして知られる埼玉県……。

のらたま

左から、のらえもんさん、すんで埼玉さん

 それぞれの場所に住む人たちの思惑を探るべく、このサイトでも連載を続けている湾岸タワマンに住む自称・湾岸妖精(ブロガー)の、のらえもんさん@Tokyo_of_Tokyo)と、Twitterで積極的に埼玉県の物件情報を発信している、すんで埼玉さん@sunde_saitama)の対談が実現しました。

 インタビューを仕切ったのは、共に埼玉出身である編集者とライター。のらえもんさん対埼玉勢3人による攻防はいかに。その一部始終をお届けします。

◆さいたま新都心は“海のない豊洲”!?

shintoshin

さいたま新都心駅周辺

――今回のテーマはズバリ「湾岸 VS 埼玉の住宅事情」です。とはいえ、埼玉勢3人がいる状況で、のらえもんさんにとっては若干不利な状況かもしれませんが……。フェアに進めるためにまず、それぞれのよさを語っていただきましょう。

のらえもん:やはり、東京湾岸エリアは眺望がよくて都心に近い。ちょっと歩いたら海にも行けますが、こういう環境が「寂しい」と思う人と「開放感があっていい」と思う人もいて、後者の人たちが選ぶエリアとなっていますね。埼玉には、湾岸みたいなエリアはないよね?

すんで埼玉:まあ、ゼロですよね。しいていえば、さいたま新都心の開けた空気感が「海のない豊洲」を思わせるかなって(笑)。どこを切り取るかにもよりますけど、平坦な土地にマンションや商業施設が立ち並んでいて、歩道も広く、天気がよければ空が抜けた開放感も味わえるから、あえて対抗するとしたらさいたま新都心がそれっぽいとは思います。

のらえもん:さいたま新都心か、なるほど。私も郊外出身だからわかるんですけど、東京から埼玉などの郊外へ行くと、歩道がとにかく狭いのが目立つんですよ。車道と歩道がきちんと分離されていない場所が多くて、自宅のある湾岸の感覚のままで歩くと辛いときもあって。

すんで埼玉:たしかに……。つい最近も東武東上線の志木駅で同じことを思いました。志木駅の周辺にマンションがどんどん建っていたんですが、インフラの整備が追いついていないのか道路がとにかく狭くて。志木は駅前が活気あって楽しいんですけどね。だから、のらえもんさんの指摘は正しいと思います。

◆眺望のよい湾岸と、公教育に力をそそぐ埼玉

湾岸タワマン

※画像はイメージです(以下、同じ)

――早くもおたがいの住む地域に対する印象が出ましたが、改めて、のらえもんさんからみた埼玉の印象、すんで埼玉さんからみた湾岸エリアの印象は?

のらえもん:埼玉って代表格は大宮ですかね? マンション族なのでどうしても駅から徒歩圏内で住むことを考えちゃいますね。そうすると、正直なところ大宮の駅近にはあまり住みたくないです。駅前商業は発達しているけど、風俗店やラブホも多いし、子どもの教育を考えるとどうにも……。ただ、氷川参道周辺の住宅地は素晴らしいの一言ですので、駅前の一部を切り取ればという感じです。

 同じさいたま市内で考えると、やはり浦和の常盤あたりは落ち着いてますし、教育熱心な方が多いです。埼玉は東京と比べると公教育への信頼が厚いと感じますね。正直、都内や神奈川の一部エリアだと「小学校はともかく、中学校からは私立へ通わせないと…」って空気感もあります。場所によっては私立中学受験組がクラスの半分もいますからね。高校まで公教育で育てることを考えると、教育のコスパは高いのかなって。とはいえ、浦和あたりだと物件の相場が湾岸と同じかそれ以上になっている場所もあるから、だったら「都内へ住めばよくない?」とも思います(笑)。

すんで埼玉:(笑)。湾岸エリアのよさはまず、都心へのアクセスのしやすさですよね。東京メトロの豊洲駅から有楽町駅までも4駅だし、タクシーを使えばいろいろな場所に行けるので。赤坂の飲み屋街から深夜割増でも4000円ぐらいで帰れるし、移動の利便性はやはり素晴らしいと思います。

 それに、埼玉では絶対に手に入らない「眺望」もあるから。僕も友だちが住む湾岸のタワマンへ行ったことがありますけど、圧倒されて正直に「悔しい!」と思いました(笑)。でもじつは、湾岸と埼玉って親和性もあると思うんですよ。

のらえもん:親和性って?

すんで埼玉:勝手な持論ですけど、どっちもフロンティア精神を持っている気がするんです。湾岸エリアは2011年頃に、東日本大震災の影響で危険性を指摘されて叩かれていた時期もあったじゃないですか。かたや、埼玉も「ダサい」と言われがちですけど、どんな声があろうとそれを受け止めながら前へ向かう姿勢が似ているというか。

 埼玉は何がなんでも住みたいっていう憧れの街ではないだろうけど、物理的な距離はまったく違う湾岸エリアと埼玉は「遠いようで近い存在なのかな」と思っています。

◆住むための街だからこそ、湾岸は今なお元気

――今年はコロナ禍でさまざまな業界に影響が出ていますが、お二人からみてそれぞれの土地についての影響は?

のらえもん:湾岸エリアですけど正直、そんなに変わっていないと思います。むしろ公園とかで人の動きが活発になった印象もありますね。都心の会社へ勤めていてリモートで働ける環境もありながら「週2、3回は会社へ来い」といわれている人は、感染リスクを考えるなら電車に乗る時間が少ない都心に近いほうがいいと考えるのも当然だし、最近の傾向ではコロナでむしろ湾岸エリアの価格が上がっているんです。

 また、銀座や六本木みたいなインバウンド需要でブイブイ言わせていた歓楽街やオフィスビルが立ち並んでオフィスワーカーの分厚い需要に支えられていたエリアの飲食店が寂しい状況になりつつある中でも、豊洲や月島の辺りは空き店舗が目立たないくらい元気なんですよ。住宅に重きを置いていたエリアだったので、住む人たちが普通に生活しているし、遠くに外出する人たちが少なくなったぶん、どのお店も案外混んでいる印象です。

すんで埼玉:埼玉も、コロナの影響はあったのかな。コロナ禍で職場のリモート化が進み、「自宅にもう1部屋か、2部屋は欲しいよね」となった人たちもいるはずで、間取りを見直そうとした人たちはいるかもしれませんね。知り合いで20代中盤のリモートワーカーがいるんですが、都内で家賃10万円の場所に住みながら、ベッドで仕事をしなきゃいけないのを見ていてもかわいそうで……。

のらえもん:湾岸だと1部屋増やそうとすると、安くても2000万円はしちゃうからね。だから、合理的に考えて、1部屋追加が500万円くらいで済むなら「埼玉を選ぼう」という話もありえる気はします。

◆埼玉という“劇薬”に耐えられるか

大宮駅

大宮駅

――元から住んでいる人たちが間取りを見直そうとするのはもちろん、埼玉へ移り住む人たちも増えそうですか?

すんで埼玉:どうでしょう。そこは難しいところで、僕は「東京在住の世帯年収1000万円超のパワーカップル」を埼玉へ連れてくるというコンセプトで事業をやっているんですが、正直なところ全員に移り住んでほしいとは思っていないんです。何せ、埼玉は劇薬だから。

のらえもん:劇薬って何なの(笑)。

すんで埼玉:そもそもみずから意地でも「埼玉へ住んでやる!」なんていう人、いないと思うんですよ。自分から湾岸エリアの豊洲や勝どきに住みたいと思う人たちはいるかもしれないけど、東京から埼玉にわざわざ移り住むというのは、感情と合理のせめぎ合いの末の決断だと思うんです。だから、劇薬を飲んでも耐えられる人であれば、来たほうがいいって感じですね(笑)。浮いた予算を投資に回したり趣味や子供に使ったりできるメリットももちろんあります。

 それに、少なくとも都内と比べて、クセの強い人たちもちらほらみかけるというか……。品のある方ももちろんいますけど、昼間に街中を歩いていて隣にふとワンカップ大関を手にしている人たちがいるケースもあるので(笑)。ただ、僕はそもそも埼玉の中でも田舎町の鴻巣市出身で、港区に住んでいたこともありますけど、地域ごとの振り幅をピンキリで知っておくのも人生経験としてはアリだなと思います。

のらえもん:僕も郊外から上京してきた人間だから、言っていることがすごいよく分かる。日本のマジョリティは「国道16号線(「東京環状」とも呼ばれ、横浜市、相模原市、八王子市、さいたま市、千葉市を結ぶ)沿いにある」と思っているんですが、都内で仕事をしていると、東京産まれ東京育ち、ハイソな奴らだいたい友達的な人たちは日本のマスをぜんぜん見れていないなと思うことがよくあります。“国道16号線”の感覚を持つことは、社会で生きる強さにも繋がっていきそう。

◆埼玉はマンションと戸建てをどちらも選べる

のらたま

今回はリモートにて対談を行う…予定だったのだが、なぜか一緒にいる2人

――湾岸エリアについてふと気になったのですが、湾岸エリア内でタワーマンションではなく戸建てという選択肢はあるのでしょうか?

のらえもん:このあたりは戸建てがそもそもが現実的ではないです。そうですね、月島の佃辺りだと築古の戸建てや、豊洲隣接の枝川だと狭小3階建ての住宅も選べるかもしれませんが、選択肢としてはごくごく限らられていますね。

すんで埼玉:その点では、マンションと戸建ての両方を選べるのも埼玉のメリットかもしれませんね。関東の一都三県でも、埼玉は抜きん出て戸建ての希望率が高いというSUUMOの調査もあるんですよ。理由にあるのは土地の安さで、大宮から少し離れた北上尾のようなエリアでは、建売なら3000万台から新築が買えるし、都心へのアクセスが電車1本でありながらコスパがいいという特徴もありますね。

 ただ、大宮や浦和といった中心地の徒歩10分圏はだいぶ土地が高くて、東京の一部のタワマンより物件価格も高くなっています。だから、埼玉とひとくくりにするのも難しいし、特に浦和なんかはもう埼玉県から外していいくらいだと思います。

のらえもん:それは分かる(笑)。でもまあ、戸建てを考えるなら、やっぱり都内よりも郊外のほうがいいですよね。都内の市町村部は別として、都心に近い地域で立派な戸建てに住みたいって考えると1億5000万円くらい出さないとちゃんとした戸建てに住めない。そんなに住居費にお金かけられないですよ。

――戸建てにこだわる人の理由って何でしょうか?

すんで埼玉:家自体の広さや隣近所の騒音問題であったり、あとは、駐車場の問題も大きいのかなと思います。

のらえもん:マンションだと駐車場代がかかるしね。湾岸でクルマを持つとなると月々で駐車場代が2万〜3万円くらいかかるけど、埼玉で戸建てなら駐車場代がいらない。月3万円は、35年ローンで換算すると約1000万円に相当します。戸建てはマンションより予算が上乗せできるんです。ただ、戸建ての場合は修繕費は自分たちで計画的に貯めていかなければいけないから、さじ加減は難しいよね。ところで、埼玉で戸建てを買う人は共働きなの?

すんで埼玉:感覚的な話ですけど、奥さんが専業主婦か、リモート環境を導入しながら共働きをしている人たちだと思います。共働きで二人とも都内でフル出勤をしている人たちは、そんなにいないと思うんですよ。フルで働いて共に年収400万円だとしても世帯年収は800万円になるので、それならば埼玉で住む理由がなくなるじゃないですか。

 だから、リモートワークをしながらスキルを活かして取り組める職種か、旦那さんの稼ぎだけで充分な生計を建てられている世帯が現実的ではないのかなと思います。

◆ムダなプライドは荒川に置いていけ!

東京都北区と埼玉県川口市の間で荒川にかかる荒川橋梁

のらえもん:フルタイム正社員の共働き家庭となると、湾岸まさにそれに特化したエリアなんですよ。世帯年収でいえば1400万〜1600万円というのもザラだし、歩道事情や近隣の環境も広々としていて子育てもしやすいから。

すんで埼玉:だから、正社員の共働きでしっかり生計を立てられているのであれば、埼玉を選ぶべきではないですね。やっぱり東京にいるべきなんですよ。じつは、僕が自分の事業を通して訴えているのは、のらえもんさんが言っていた方々ではない中間層で、“ギリギリ東京で生活している人たち”なんです。常々「ムダなプライドは荒川に置いていけ!」と言っているので(笑)。

――(笑)。まあ、どうしてもダメなら埼玉へ戻るという選択肢はありつつも、埼玉出身者からすると、出戻りにはある種の“都落ち”みたいな感覚もありますしね……。

すんで埼玉:でも、僕のメインターゲットは埼玉出身の人なんです。相談に来るカップルのお客さんをみても、男女どちらかが埼玉に由来を持っているんですよ。違う地方から来る人だと、あえて埼玉を選ぶ人たちが少ない印象もあって。

のらえもん:そうだなー、上京してきて東京に通いながら戸建て買いたいってなると、溝の口とか高津、稲城か若葉台、南大沢や橋本ってなりませんかね。東京から西エリアがメインになると思う。

すんで埼玉:そう、「この辺なら世間的にも大丈夫だろう」みたいな(笑)。たしかに、僕も都内の大学を出てから東京で働いて、埼玉に戻るのはある種の“負けた感”もあったんですよ。でも、そういう時代でもないというのを事業を通して提案していきたいですね。

<取材・文/カネコシュウヘイ>

【のらえもん】

湾岸タワマンに住んでいるという設定の湾岸妖精(ブロガー)。「マンション購入を真剣に考えるブログ」を運営。人間界ではいたって普通の都内勤務サラリーマン。著書に『専門家は絶対に教えてくれない! 本当に役立つマンション購入術』(廣済堂出版)など

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング