2年半で印税200万円…契約社員をやめたラノベ作家の後悔

bizSPA!フレッシュ / 2020年10月8日 15時45分

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2年半で印税200万円…契約社員をやめたラノベ作家の後悔

 出版不況の中でもライトノベル(ラノベ)は、売れ行きが好調な数少ないジャンル。毎月数百冊の新作が発売されています。ネット上には気軽に自分の作品を発表できる小説投稿サイトが複数あります。そこから出版社の目に留まって、というのがラノベ作家のステップになっているそうです。

書店

※画像はイメージです(以下同じ)

◆趣味のラノベで作家デビューも…

「個人的な趣味で書いていただけで自分に出版オファーが届くなんて夢にも思っていませんでした。もしそんなことがあったらいいなとは思っていましたが、それが現実のことになったんですから。編集者の方からのメールを見て、家の中で大声で叫びながら『よっしゃー!!』ってガッツポーズをしたのを覚えています(笑)」

 うれしそうに当時のことを話してくれたのは、元ラノベ作家の山本洋一郎さん(仮名・28歳)。実は、公式に引退を宣言したわけではないですが、現在は作家としての執筆活動は行っていないとか。

「出版依頼がなくなり、そのままフェイドアウトって感じです。要は出した本がどれも全然売れなかったんです。ラノベといってもベストセラーになるような作品はほんの一部。僕みたいな初版どまりが続いていた人間に、チャンスはそう何度もありませんでした

◆契約社員をやめて後悔している

喜ぶ男性

 もともとラノベやアニメ、ゲームなどが好きで、専門学校時代から異世界モノの作品をネット上で発表していた山本さん。23歳のとき、作品のひとつが、投稿サイト内でそこそこの人気を得ていたそう。それをたまたま読んだ編集者から連絡が来たそうです。

「当時は飲食店で契約社員として働いていました。編集者の方からは『仕事はなるべく続けたほうがいい』と言われたのですが、執筆時間を確保するのが大変だったこともあり、辞めてしまったんです。でも、その会社は契約社員から正社員に登用してくれるところだったので、やめたのは完全な勇み足でした。今だから言えることですけど、この判断が間違っていたと後悔しています」

◆作品はまったく売れず、現在は廃業状態

手取り10万台

 約2年半の間に複数のペンネームを使って7冊のラノベを発表しましたが、いずれも鳴かず飛ばずで散々な結果に。出版社との間に「○年間で×冊」というちゃんとした出版契約があったわけではなく、最後の作品を出してからは連絡がまったくないそうです

「ラノベは大ヒットすればシリーズ1000万部超えとかもあって、漫画化やアニメ化で一攫千金なんて話も聞いていて、最初はすごく期待していたんです。ただ、反響も全然なく、途中からは『次の作品が最後かも……』っていうプレッシャーがありました。結局、その通りになってしまったんですけどね」

 これまで得た印税は200万円程度。作家としての収入だけでは食べていけないため、執筆時間を確保しやすい短期や日雇いのアルバイトをこなしながら作家活動をしていたといいます。

「仕事がなくなってからちゃんとした仕事に就こうとしましたが、非正規雇用で働いていた期間が長いせいか、書類選考で落とされることも多かったです。ようやく見つけた健康食品会社の営業の仕事もノルマが厳しくて、試用期間の3か月で自分から退職を申し出ました」

◆落ちぶれたと思われたくない

 その後も正社員の仕事が決まらず、現在はゲームセンターのアルバイト店員として週5日勤務。月に14万~16万円の収入を得ているそうです。

「時給はそんなに悪くないですが、毎日8時間も働いているわけじゃないので、月収としてはイマイチですね。ただ、30歳手前になってゲーセンの店員っていうのもさすがに恥ずかしい。しかも、ラノベでも一応、作家として活動していたわけですし。デビューしたことは本当に親しい友達にしか言ってなかったけど、きっと落ちぶれたように見えると思うんです。

『今はアミューズメント系の会社に勤めてる』って少し話を盛ってますけど、ひょっとしたらバレているかもしれません。別に見栄を張りたいわけじゃないんですけど、元作家がゲーセン勤務っていうのはどうしても言えなくて……」

 たとえ売れなくてもデビューして作品を残せたことには満足しているそうですが、「兼業作家としてやっていくべきでした」と作家業に色気を出しすぎたことには後悔している様子。デビューしたくてもできない人が大勢いる以上、山本さんは恵まれていたのかもしれません。しかし、その代償はあまりに大きかったようです。

<取材・文/トシタカマサ イラスト/パウロタスク(@paultaskart)>

【トシタカマサ】

ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中

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