中国・習近平主席の、強気な対米発言を読み解く。武力行使も辞さない構え
bizSPA!フレッシュ / 2020年11月5日 8時46分

第70回国連総会での習近平氏 ©Palinchak
アメリカ合衆国のマーク・エスパー国防長官は10月20日、中国に対峙していくうえで、自由や民主主義など同じ価値観を共有する国々との同盟関係をさらに強化・拡大していくとの姿勢を明らかにした。
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新型コロナウイルスの感染拡大以降、米中対立はこれまでになく悪化しており、最近ではインドやオーストラリアが米国に積極的に接近する姿勢を示すなど、インド太平洋地域では中国けん制を目的とした多国間協力が進んでいる。
◆米国との対決姿勢が鮮明に
エスパー国防長官は中国が債務の罠(債権国側から政策や外交、インフラ運営が拘束を受ける状態)によって、ASEANのミャンマーやカンボジア、ラオスなどと関係を強化していると不信感を示し、日米豪印のクアッドに加え、インドネシアやベトナム、フィリピンなどとの関係を強化する姿勢も示した。
そういった状況のなか、中国の習近平国家主席は、最近の発言の中で、これまで以上に米国との対決姿勢を鮮明にしている。最近の習近平氏の発言を簡単に振り返ってみたい。
例えば10月23日、北京で開催された中国軍の朝鮮戦争参戦70周年を記念する式典の席で演説では「中国は米国からの圧力に屈することはない」「台湾の独立的・分裂的な動きに対しては絶対に容認しない」「(トランプ政権)の一国主義や保護主義、中国包囲網的な動きは通用しない」など、武力行使も辞さない姿勢を改めて強調し、“抗米援朝”という言葉を繰り返し使った。
抗米援朝は文字通り、米国に対抗して北朝鮮を支援するという意味だが、海洋覇権や貿易摩擦、ハイテク覇権などで米国に負けないという姿勢に加えて、朝鮮半島を巡る情勢でも「自由にはさせない」という意思を感じる。
◆香港・マカオとの経済一体化に意欲
第70回国連総会での習近平氏 ©Palinchak
10月14日には、香港に近い深セン市の経済特区設立40周年を祝う式典に出席し、中国本土と香港・マカオとの経済一体化を今後加速化させる方針を発表。式典には香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官やマカオの賀一誠(ホー・ヤッシン)行政長官らも参加し、広東省と香港・マカオを合わせた経済圏構想「グレーターベイエリア」の建設に強い意欲を示し、香港・マカオの人々に対して中国への祖国心を高めるよう求めた。
国家安全維持法を巡っても米中の間で火花が散ったが、香港の中国化は避けられなくなり、習近平氏による一体化・同化政策もいっそう進んでいる。
習近平氏は、その前日にも広東省東部にある潮州市に駐屯する海軍陸戦隊基地を訪ね、「戦争への備えに全神経を注ぎ、最大の警戒態勢を維持しろ」「軍は党に対して絶対的な忠誠を堅持する必要がある」などと軍を鼓舞する姿勢を示した。さらに、9月3日に開催された第二次世界大戦終結75周年記念式典の席では「中国復興は共産党政権の運営によってのみ実現される」「共産党の方針や趣旨、歴史をゆがめたり中傷したりする勢力や個人を決して容認しない」などとの姿勢を示した。
◆けん制する姿勢は就任当初からだが…
習近平氏の米国をけん制する姿勢は就任当初から見られるもので、決して新しいものではない。しかし、トランプ政権との溝が深まるなかで、今年に入っての新型コロナウイルスの感染拡大は「米国との対立はもう避けられない」と決心をさせたようにも映る。
菅義偉首相は10月26日の所信表明演説で、中国に対して「主張すべきことは面と向かって主張する」との姿勢を示したが、習近平氏の最近の発言から鑑みて、「やるべきことはやる」というもう一歩進んだ姿勢が必要だろう。
米大統領選の結果も影響するだろうが、これによって習近平氏の姿勢や発言がトーンダウンするとは考えにくく、日本としても中国に対してもっと厳しく対応する姿勢も必要だろう。
<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>
【イエール佐藤】
国際政治学者。首都圏の私立大学で教鞭をとる。小さい頃に米国やフランスに留学し、世界の社会情勢に関心を持つ。特に金融市場や株価の動きに注目し、さまざまな仕事を行う。100歳まで生きることが目標
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