サントリー天然水「1本買えばもう1本」キャンペーンはなぜ誕生したのか

bizSPA!フレッシュ / 2020年11月13日 8時47分

写真

サントリー天然水「1本買えばもう1本」キャンペーンはなぜ誕生したのか

「1本買えばもう1本」――2020年の夏、コンビニでやたら目にしたキャンペーンだ。なかでもサントリーの天然水(550ml)を買えば、2Lの天然水がもらえるというキャンペーンは、ネットでも大きな話題になり、猛暑のなか、旋風を巻き起こした。

サントリー

サントリー天然水。現在は南アルプス、奥大山、阿蘇という3つの採水地

 いくら「1本買えばもう1本」といったって、おまけとは、一般的に本体より同じか小さいサイズのものではないのか。一体どういう意図とからくりがあるのか。

◆「550mlを買えば2Lがもらえる」

 Twitterでも〈ファミリーマートで水500ml買うと水2リットル貰える頭のおかしいキャンペーンをやってる〉〈ファミマの水が5倍に増えるキャンペーン頭イかれてて草〉といった声のほか、〈発注し過ぎたのでしょうかwwwwww〉〈な、なにが目的なんだ?〉など、“バグ”を疑う声が噴出していた。

 なお、サントリーはその後も「スーパーC.C.レモン 350mLを買うとニチレイ超アセロラ 350mlが1本無料」(ファミマ)、「伊右衛門 600ml買うと伊右衛門 特茶/ジャスミンが1本無料」(ローソン)などといったキャンペーンを続々投入した。他社でも伊藤園が「おーいお茶 緑茶 600mlを買うと、2つの働き カテキン緑茶500mlが無料」(ローソン)、アサヒ飲料が「十六茶 660ml を買うとウィルキンソン エクストラ 490mlが1本無料」(ミニストップ)などというキャンペーンを展開。その他、ヨーグルトやスナック菓子、カップラーメンなど、この手のキャンペーンを挙げればきりがないが、どうしても気になるのは「儲けは出ているのか」「効果はあったのか」というポイントだ。

 そこで「550mlを買えば2Lがもらえるキャンペーン」の真意について、サントリー食品インターナショナル株式会社ジャパン事業本部 ブランド開発事業部の米谷美咲さんに詳しく話を聞いた。

◆2Lがおまけ、実は社内でも“物議”

サントリー

ジャパン事業本部 ブランド開発事業部の米谷さん

――「1本買えばもう1本」というキャンペーンは、そもそもいつからやっていたのでしょうか? きっかけや意図も教えてください。

米谷美咲(以下、米谷):2018年からです。飲料の新商品をできるだけたくさんの人に手にとってもらえるようにという意図で、定番商品にくっつけて。発売前の認知を高めるという目的で始めました。ミネラルウォーターの天然水でキャンペーンをするのは初めてでした。

――コンビニごとに内容が若干変わっていますよね。

米谷:商品によっては同じ組み合わせを同時に、ということもありますが、組み合わせはチェーンさんと相談して決めているんです。ちなみに、交換券をコンビニのレシートに印字するという仕組みは、もともとコンビニにそういうシステムがあって、それを利用させていただきました。

――そもそもは新商品をPRするためのもの、ということなら納得です。では、今年の夏、話題になった2Lのミネラルウォーターがもらえるキャンペーンについて。新商品というわけでもないし、もしかして在庫が余っていたとか?

米谷:余っていたわけではありません(笑)。ただ、社内からも「これ本気? どういう目的でやってんの?」って聞きにくる人がいたりしました。物流系の人にも、(社内資料)書き間違えてない? とか言われたりして。

◆“水分摂取の啓発”というテーマ

サントリー

――社員からも物議が。それで、どういう目的だったんですか?

米谷:今年の夏は、そもそも“水分摂取の啓発”というテーマで、日本人は、平均して、コップ2杯分の水の摂取量が足りないよという活動をしていたんです。5月頃、生活様式が変わって、家の中にいるようになったときに、水分も家の中で摂るようになりました。外に出ないので、550ml(ペットボトル)の売上は減りましたが、2Lの需要は増えました。求められる容器の大きさも変わったんです。

――確かに、各地のお店で、2Lペットボトルの棚が空っぽになっていました。

米谷:そこで、弊社としても、2Lが求められているなら、より届くように提供する形を変えたほうがいいのではないかと考えていたとき、室内での熱中症に警鐘が鳴らされたり、またコンビニさんにも来店が減っていたという事情がありました。550mlで、大きなおまけがもらえるというキャンペーンはコンビニで水を買ってもらう良いきっかけにもなる。お互いハッピーな企画だったんです。

――とはいえ、普通は2Lに550mlをつけよう、と考えそうですが……。

米谷:社内でも、その点は議論が分かれました。ただ、水がもらえるというのは、ある意味“驚き”がないことです。水は新しい何かではない、定番のものなので。それでも水を欲しいと思ってもらうには、これくらいのインパクトを仕掛けたいという熱量が大きかった。事後のニーズにつながるのか、賭けでもあると思っていました。

◆気になるキャンペーンの結果は?

サントリー

おまけの2L分のレジ袋はタダだったことも話題になった

――1本おまけにしても、ちゃんと儲けは出るってことですよね。そして、キャンペーンの結果、売上や効果はどうだったのでしょうか。

米谷:利益については、そのあとの購買につながればいいということで、広いレンジでみたら、キャンペーンは意味のあることだなと思っています。

 小容量のミネラルウォーター(550mlなどの容量帯)は都市部で消費される構成が高く、デスクワークの人が買われるので、実は一時は他の飲料よりも落ち込みが大きかったんですね。ただ、7月以降は回復して、天然水ブランドは伸長を続けています。またキャンペーンが終わったあとも歩留まりは高くて、気づきを得られた人が多くいらっしゃったと考えています。

――“気づき”とは?

米谷:2Lが家にあるならということで、ご飯を炊いてみたりお酒を割ってみたり、それまでミネラルウォーターをそういうふうに使ったことがなかった人が、生活のなかに取り入れてくださって、美味しいと気づいていただけたのかなと。また、夏の台風時期ということもあり、防災備蓄という観点からも関心度は高かったようです。大きなペットボトルの水が家にあるのは安心だよねという実感も生まれたかなと思います。

◆通常よりも数倍の出荷量に

サントリー

サントリーは日本各地で森を守り、水を育む活動に取り組んでいる

――大きな反響になった時、どう思われましたか。

米谷:ありがたいことに、通常よりも数倍の出荷量になりました。毎朝在庫を確認して、ドキドキしていました。耐え切ったときは安心しました。店舗さんがすごく盛り上げてくださったのも大きかったです。“何本買ったらケースでもらえます”といった工夫や、予約表を作ってくださっていたお店も。店員さんが車まで荷物を運んでくれたというケースもあったと聞いています。

――もう、毎年やってください!

米谷:それは私の一存では……(笑)。でも、違う形でまた何らかの機会を作れたらな、とは思います。

<取材・文/吉河未布 撮影/内海裕之>

【米谷美咲(こめたに みさき)】
サントリー食品インターナショナル株式会社 ジャパン事業本部 ブランド開発部。2019年4月~「サントリー天然水」ブランドのマーケティングを担当

【吉河未布】

編集者・ライター。ネットの海の端っこに生きています。気になったものは根掘り葉掘り

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング