ユニクロのチラシはなぜゴチャゴチャなのか?ブランド戦略で勝つ企業
bizSPA!フレッシュ / 2020年11月30日 8時46分

画像はユニクロ公式サイトより
「ブランディング」という言葉を最近よく耳にするけど、具体的にどんなことを指しているのか、説明しようとすると言葉に詰まってしまう。
そんな疑問に答えてくれるのが、美容室のシャンプー/ヘアカラーメーカー「ミルボン」のブランド戦略担当として活躍する、竹渕祥平さん(@buchi__san)だ。
竹渕祥平さん
前回のインタビューでは、主にご自身の経歴について語ってもらったが、他社の事例を紹介してもらいながら、ブランディングの真髄にせまる。
◆カロリーメイトは面白い
身近で面白いブランディングの事例があれば教えてください。
「大塚製薬の『カロリーメイト』は面白いですね。数字を調べてもらえたらわかると思いますが、2010年くらいから売上が少し停滞していた時期を脱却して、ここ数年は確実に伸びています。
2016年に展開していた『夢の背中』という学生の背中を、母親が後ろから温かく見守り続けるストーリーの動画があるのですが、受験生を応援するってコンセプトが、エモーショナルに伝わってきます。
質の高いクリエイティブな作品を生み出す一方で、公式Facebookページを覗いてみると、また印象が違ってきます。ポップなイラストがあったり、比較的ラフなコミュニケーションをとったりと、すごく親近感を覚えます。企業の公式ページで、数千もの“いいね!”がつくのは、なかなか目にすることはないですよ。
全体のコンセプトの軸があるなかで、Facebookなのか、YouTubeなのか、サイネージ広告なのか、媒体によって何が最適なのか、しっかり考え抜かれているのを感じますね」
◆消費者の意識にも変化が
画像はカロリーメイト公式Facebookより
「企業ブランディング」と、「製品ブランディング」は、別軸で考えた方が良いのだろうか。
「企業によって考えは異なると思いますが、予算が潤沢なところであれば、製品カテゴリー別でブランディングしているケースもあります。大塚製薬で言うと『カロリーメイト』や『ポカリスエット』など、製品単体として強いので、個別でブランディングするのが正しいのかなと。
潮流として、P&Gを例にあげると、最近では企業としてのブランディングを強化しているように感じます。CSR(企業の社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)などがフォーカスされるなかで、『この会社にどんな社会的な価値があるのか?』ってことに、消費者も敏感になってきているのだと思います。
ミルボンでは、製品カテゴリーごとに細かくブランディングをしている訳ではないですが、『美容師さんのパートナー』であることが企業も製品もきちんと伝わるように、各所でコミュニケーションを取っていますね」
◆ユニクロのチラシはなぜゴチャゴチャしているのか
画像はユニクロ公式サイトより
以前、ユニクロの「ブランディングと販促の二面性」についてつぶやいたツイートが多くの反響を呼んでいたので、改めてこの場でも解説してもらった。
「ブランディングの教科書としては、通常『統一性』を重視すると思いますが、その点でいうとユニクロは異質に映ります。
ユニクロが上手いなと思うのは、一流のデザイナーや、第一線のクリエイティブディレクターを起用して、しっかり投資をしながらブランドのイメージを作り込んでいる部分。一方で、目の前でお客さまがモノを買う、販売促進としてのチラシを残し続けていることです。
ドン・キホーテに近い感覚ですが、ごちゃっとしたレイアウトのチラシの中から、掘り出し物を見つけるって作業から、購買意欲が刺激されるんじゃないかなと」
ミルボンでも、そういった点を戦略的に取り入れているのか。
「ユニクロとまではいかないですが、発信する媒体によってトーン&マナーの方向性は分けています。Twitterでは、フランクなコミュニケーションを頻繁に取りながら、ユニクロのチラシに近い役割を果たしています。また、ブランドのイメージや世界観を伝えていくのが、Instagramの役目。無理やり統一感を持たせようとするより、顧客の情報接点に合わせて上手く切り分けられるブランドでありたいと思います」
◆偏愛的な情熱が大事かも
消費者目線にたった時に、竹渕さんが好きなブランドは「Mr. CHEESECAKE(ミスターチーズケーキ)」だという。フレンチレストランのシェフだった田村浩二さん(株式会社Mr. CHEESECAKE代表)が独立し始めた、ネット限定のチーズケーキ専門店だ。
「テレビで紹介されていたり、SNSでも話題になっていますが、とにかく作り手であるシェフの田村さんが、チーズケーキを語っている熱量がもの凄いんです。もちろん語るだけでなく、周りのスタッフさんもきちんと固まっていて、HPやSNSに載せる写真もセンス抜群。チーズケーキってもともと苦手だったんですけど、今では嫁と子供を含めて、すっかりファンになりました(笑)。
とことんこだわっているからこそ、『どう売り込もうか?』と押しつけるのではなく、『どうやったらお客さんが喜んでくれるか?』ってところにフォーカスしているんだと思います。
ミスターチーズケーキのWEBサイトや田村さんのツイートを見ていても、こだわりを強く感じますし、予算や戦略どうこうってことではなく、偏愛的な情熱が大事なのかなと。ブランディングに携わる者として非常に勉強になりますし、今後も注目しています」
◆経験の引き出しを増やしていく
竹渕祥平さん
自身の経験を踏まえたうえで、企業のブランディングや広報担当にアドバイスするとしたらどんなことを伝えたいか。
「学習する習慣と実践する行動力が大切です。センスは磨けるものだと思うので、ひたすら学んで、インプットした知識を試してみて、うまくいくまで改善し続けることがカギです。
たとえば先ほどのようにブランディングの好事例を聞かれたときに、『今から調べます』ではなく、どれだけ“引き出し”があるかってこと。過去のAって事例と最近話題のニュースと掛け合わせると、面白い展開になるんじゃないかとか、自分(自社)に置き換えた解像度の高い仮説を立てられるようになります。
『センスがないから』とか、『向いてないから』と諦めるのではなく、地道にやり続けた先に成果がついてくるのだと思います。つねに好奇心や興味のアンテナを張り巡らせて、ぜひ自分の中の“引き出し”を増やし続けていってください」
<取材・文/黒岩秀利>
【黒岩秀利】
大学卒業後、ロンドンでフリーライターとして活動。帰国後、大手広告会社で、求人広告の記事制作に従事。現在はフリーランスとして、Webライターの他にも、編集、ディレクションなどをやっています
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