東京電力HDはどんな会社?原発事故から黒字転換、社員の平均年収は

bizSPA!フレッシュ / 2021年1月27日 8時46分

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東京電力HDはどんな会社?原発事故から黒字転換、社員の平均年収は

 日本列島を襲う寒波により電力需要が高まっています。それを受けて、電力会社各社が「節電」の呼びかけをしており、連日、それらが各種メディアによって報じられている状況です。では、なぜ寒さが厳しくなると電力需要がひっ迫するのでしょうか。

東京電力

節電を呼びかける東京電力(※公式サイトより)

 本連載「ブラック企業アラート」では、電力需要についての解説を足掛かりに、日本を代表する電力会社でもある「東京電力ホールディングス(以下、東電)」の分析をしていきます。

◆日本の電力が不足する可能性が?

 電力広域的運営推進機関のサイトによると、「寒冷な気候条件が続いたことなどにより、全国的に需給バランスを保つ調整力電源の供給力不足が継続的に発生」と説明されています。事実、年始年末にて寒波到来とそれに伴う事象(関越道立ち往生など)が報じられており、例年よりも多く、暖房を動かす必要があります。

 そして、電力については、すでに発電させて余ったものを貯めるのがコスト面で非常に難しく、「需要を予測しながら発電し、その分を可能な限り適切に使う」という対応が必要です。

電力広域的運営推進機関」は、電気事業法第28条第4項に基づいて2015年に設立された、日本の電気事業の広域的運営を推進する団体です。各地域の電力会社は、この電力広域的運営推進機関への所属が電気事業法第28条第11項にて義務付けられているため、この団体の発表が「日本の電力会社」の動向を表すものです。

 2021年1月のみで73件もの改善指示が全国各地の電力会社に対して行われており、今冬の電力不足に対して深刻に受け止めて対応していることがうかがえます。

◆全国的に発電用燃料の在庫が減少

東京電力

 東電の子会社である東京電力パワーグリッド社では、

・火力発電所の増出力運転や需要抑制対策
・自家用発電設備からの追加調達
・電力広域的運営推進機関と連携しながら、需給ひっ迫エリアへの広域的な電力の融通

 といった対応を進めている旨を公表しています。しかし、その対応を踏まえても「火力発電の電力量の増加に伴い全国的に発電用燃料の在庫が少なくなるリスクが高まっており、一日の電力使用量(kWh)を確保していくことが厳しくなることも予想」と記しており、依然として状況は厳しいようです。

 東電の事業エリア(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・静岡県・山梨県・茨城県・群馬県・栃木県)の電力需要については「でんき予報」というサービスが提供されており、リアルタイムで需給ひっ迫度が確認できます。93%未満であれば「安定的」と言えますが、それ以上になると停電、さらにはブラックアウト(北海道胆振東部地震で起きたもの)などのリスクがあり得ます

◆業績:3.11の影響も近年は黒字転換

 つづいて、東電の決算推移を確認します。売上は5~7兆円の範囲で推移。特筆すべきは2011年3月期に最終赤字になり、2012年3月期・2013年3月期は営業赤字となっている点です。

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図:東京電力HDの決算推移(決算短信より筆者作成)

 決算短信の記載を時系列で整理すると、

【2011年3月期の最終赤字】
東北地方太平洋沖地震により被災した資産の復旧等に要する費用または損失
【2012年3月期の営業赤字】
節電・生産活動の落ち込みにより電力販売量が減少し、原子力発電を減少したことによる燃料費の上昇
【2013年3月期の営業赤字】
原子力発電を減少・為替レートの円安化による燃料費の上昇

 となっており、東日本大震災3.11による原発事故の影響が大きいと考えられます。しかし、2014年3月期以降は営業黒字となり、2020年3月期も同様の状況です。2012年3月期以降、どのように営業黒字転換を果たしたのでしょうか

◆社内カンパニー制から持株会社体制に

東京電力

図:3.11以降の営業利益推移(決算短信より筆者作成)

 黒字転換までのセグメント別推移を見ていきます。まず、2012年3月期・2013年3月期には電力安定供給に必要不可欠な事業以外は「その他」にまとめられました。電気事業の赤字については、先述の通り、電力販売量の減少や、電子力発電からの切り替えによる燃料費の上昇が主因と考えられます。

 続いて、2014年3月期から社内カンパニー制が導入され、それぞれ大まかに、フュエル&パワー(火力発電による電力販売・燃料調達など)、パワーグリッド(送電・変電・配電による電力供給、水力発電による電力販売など)、カスタマーサービス(お客様サービスの提供など)、コーポレート社(経営サポート・原子力発電など)のような分類になっています。

 上記をみると、「コーポレート」セグメントに原子力発電が割り当てられていることがわかります。コーポレートのみが営業赤字になるのも必然と言えそうです。燃料費の上昇の影響を受けるであろう「フュエル&パワー」セグメントも黒字になっています。

 さらに2016年3月期には持株会社制に移行したことから、

【ホールディングス(旧称コーポレート)】
経営サポート・原子力発電など
【フュエル&パワー】
火力発電による電力販売・燃料調達など
【パワーグリッド】
送電・変電・配電による電力供給、水力発電による電力販売など
【エナジーパートナー(旧称カスタマーサービス)】:お客様サービスの提供など

 とセグメント名称変更が行われています。東電のセグメント構成は比較的安定していてわかりやすく、構成変更の理由も追いかけやすい状態でした。コーポレートセグメントの赤字については、2017年3月期でいったん収束し、2018年3月期以降は全セグメントが黒字となっています

◆有価証券報告書・報道などから現場を予測

 では、現場の雰囲気や働きやすさはどのようになっているのでしょうか。有価証券報告書・公式サイトの情報などからその姿に迫ります。

 まず、有価証券報告書では、従業員数が連結で3万7892人、提出会社(東京電力HD)のみで8291人となっています。公表されている平均年収は提出会社の分のみであり、812万円でした

 東京電力HDの社員数は連結の2割程度で、この値が全体の値とは言えませんが、総じて給与水準は高いと推察されます。また、福利厚生についても、フレックスタイムや在宅勤務・社宅・企業内保育所などがそろっており、従業員の働きやすさは担保されていました。

 つづいて、主だった判例を見ていきます。今回は主に「福島第一原子力発電所事故」について触れていきます。なお、本件については詳細に立ち入ると本が数冊書ける状況であるため、時系列での整理としていきます。

◆「福島第一原子力発電所事故」のその後

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2020年10月、田村厚生労働大臣が福島第一を視察(※厚労省HPより)

 まず、東電の経営改革については「特別事業計画」に基づいて行われています。この計画の変更は、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法第46条第1項の規定により、主務大臣の認定を受ける必要があります。したがって、東電の独断ではなく、国の認定を受けながら推進されています。

 直近で2020年4月24日に「原子力損害賠償に万全を期すため『要賠償額の見通し』に係る項目」を中心に変更しています。また、本件の賠償額の推移については「新々・総合特別事業計画(抄)(第三次計画)」内の図表にあうよう、金額が増えることはあっても、減ることはないです。

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図:賠償支払額・要賠償額の推移(新々・総合特別事業計画(抄)より引用)

 賠償関連のプレスリリースも公式サイトでまとめられており、事故後10年弱が経過しても、毎月、賠償関連の発表があります。判決としては、仙台高等裁判所・福島地方裁判所で行われたものが原文ともに公開されていました。

 判決本文は500ページ超のボリュームですが、元住民による原状回復(除染)および損害賠償請求に対し、原状回復請求は却下し、国と東電の賠償責任を一部認めたものです。また、東電の旧経営陣3人が「強制起訴」により業務上過失致死傷罪に問われた件は、2019年に無罪判決となっています。

◆東京電力「ホワイト/ブラック度」判定

東京電力:★★★☆☆

ブラック企業

 大きな原発事故(福島第一原子力発電所事故)を起こしたものの、国と連携しながら継続的に賠償を実施し、企業運営を続けています。東京電力改革・1F問題委員会が公開した「東電改革提言」には、

「2011 年、東京電力は国の一時的支援を得て、福島への責任を果たすためにその存続が許された」「当時も、東京電力を破たん処理すべしという議論もあったが、賠償や廃炉事業、そして電力の安定供給が損なわれることのないよう、あくまで福島の責任は東京電力が負うことを基本とし、国は原子力損害賠償支援機構(現 原子力損害賠償・廃炉等支援機構。以下、「原賠機構」という。)を設立、東京電力に出資(1兆円)と賠償の一時的援助(5兆円)を行うこととした」

 という厳しい文言が並んでおり、東電は福島への賠償を完遂するために事業運営を継続しているとも言えるでしょう。一方、寒波で電力需要がひっ迫するなか、中部電力パワーグリッドや東北電力ネットワークなど他社から電力供給を受けることで、計画停電をせずに電力供給できています。したがって、今回は評価を★3としました。

<TEXT/アラートさん(@blackc_alert)>

【アラートさん】

ブラック企業を生き抜いた歴戦のプロダクトマネージャーが、公開情報からホワイトorブラックを判定し、率直な理由とともにお伝えします。twitter:@blackc_alert、note:ブラック企業アラート

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