バイデン政権誕生でも、イラン核問題の解決には困難が山積み

bizSPA!フレッシュ / 2021年1月31日 8時46分

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 2021年1月20日、アメリカ合衆国大統領に就任したジョー・バイデン氏は、2015年に交わされた「イラン核合意」(※)への復帰を公約に掲げている。つまりこれにより、対イラン政策はドナルド・トランプ政権の4年間とは違ったものになる。

バイデン氏

バイデン氏の公式ツイッターより

 イランのハサン・ロウハニ大統領はアメリカ大統領選挙の開票作業中の2020年11月4日、「次の大統領が誰であろうとアメリカが国際協調路線に戻ることを願う」との認識を示した。そして経済制裁が解除されれば、対米関係で変化が生じる可能性にも言及した

(※イラン核合意:2015年7月に、イランと米英独仏中ロが結んだ合意。イランがウラン濃縮活動など核開発を大幅に制限するかわりに、米欧が、イランに対する経済制裁を解除することとした。だが、オバマ政権時代のこの合意から、2018年5月にトランプ大統領(当時)が離脱して制裁を再開。反発したイランは、合意に反するウラン濃縮活動を再開した)

◆バイデン政権でイラン情勢に変化

 また、イラン最高指導者のアリ・ハメネイ師も12月16日に、「ハサン・ロウハニ大統領率いるイラン政府はすぐにアメリカを信頼するべきではない」としながらも、バイデン氏の核合意へ復帰する姿勢を評価。対イランの経済制裁が解除された場合には、それに対応していくべきだとの考えも示している

 だが、最近のイラン情勢を見ていると、ロウハニ大統領とハメネイ師、そしてバイデン大統領の思うようにはいかない可能性が浮上している。

 トランプ大統領(当時)は2020年12月23日、イラクの首都バグダッドにあるアメリカ大使館がロケット弾で再び攻撃された件に言及し、「もし米国人が1人でも殺害されればイランに責任を取らせる」とけん制している。

◆トランプ前大統領の発言の背景は

ドナルド・トランプ

ドナルド・トランプ大統領 © Gints Ivuskans

 このロケット弾攻撃の実行組織は分かっていないが、イランは中東地域を覆うシーア派の弧を作るべく、イエメンのフーシ派やレバノンのヒズボラ、バーレーンのアル・アシュタール旅団、イラクのカタイブ・ヒズボラなど親イランのシーア勢力を軍事的・財政的に支援している。また、アフガニスタンやパキスタン出身のシーア派民兵をシリアやイラクに送り込んでいる。

 イランは11月27日、テヘラン郊外で核開発において主要な役割を担ってきた核科学者モフセン・ファクリザデ氏が暗殺されたことを受け、イスラエルの関与を指摘し、「適切な時期に報復する」と明言した。

 その直後の12月2日、イラン国会では保守強硬派の主導で、国連による核施設への査察停止や核開発の拡大を求める法案が可決された。ファクリザデ氏の暗殺によって、保守強硬派はイスラエルやアメリカへの敵意を強め、同派の勢いが議会内でも強くなっている

◆暗殺、経済制裁で揺れ動くイラン

 また、その影響もあり、イランは2021年に入って1月4日、中部フォルドゥにある地下施設でのウラン濃縮活動について、濃縮度を20%にまで引き上げると発表した。2015年のイラン核合意で決定された濃縮度の上限は3.67%であり、今回の引き上げは明らかな合意遵守違反となる

 イランはトランプ政権による経済制裁に反発し、2019年以降、4.5%までウラン濃縮度を高めるなどしてきたが、この発表はアメリカやイスラエルを強く刺激するものとなった。

 このようなイラン勢力によるアメリカ権益への攻撃、保守強硬派による法案可決、ウラン濃縮度の引き上げという事実によって、核合意への復帰は遠のいたと言えるだろう。

◆6月のイラン大統領選がポイントに

アメリカ イラン

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 バイデン大統領自身も前提としてイランが核合意を遵守することを挙げている。そして、新型コロナ対策にまず取り組まなければならない新政権としては、核合意復帰という公約自体が達成されない可能性もある。

 このようななか、今後の米イランを中心とする中東情勢を見ていくにあたっては、6月18日にイランで実施される予定の大統領選挙に注目すべきだ。穏健派のロウハニ大統領に代わって、保守強硬派のリーダーが選出されれば、米国やイスラエル、サウジアラビアとの関係が大きく変わることになる。

 仮に、以前のマフムード・アフマディネジャド氏のような保守強硬派の政権となれば、バイデン政権との間でも関係がうまく行かないばかりか、イスラエルとサウジアラビアとの緊張がいっそう高まり、中東情勢が不安定になる恐れがある。

<TEXT/国際政治学者 イエール佐藤>

【イエール佐藤】

国際政治学者。首都圏の私立大学で教鞭をとる。小さい頃に米国やフランスに留学し、世界の社会情勢に関心を持つ。特に金融市場や株価の動きに注目し、さまざまな仕事を行う。100歳まで生きることが目標

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