夫が墜落事故死。専業主婦からフジテレビ管理職になった私が「若者に伝えたいこと」

bizSPA!フレッシュ / 2021年2月24日 8時46分

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夫が墜落事故死。専業主婦からフジテレビ管理職になった私が「若者に伝えたいこと」

「入江くんの乗ったチャーター機が墜落しました」。1本の電話で、私の人生は大きく変わりました。1994年12月6日、フジテレビの報道記者でカイロ支局長だった夫が、取材中に乗っていた小型飛行機の墜落事故で亡くなったのです。

カイロ

※画像はイメージです(以下同じ)

 幼い2人の息子たちの手を引き、赴任先のエジプト・カイロから帰国した私が、悲しみに暮れながらも始めたことは職探しでした。そこからフジテレビの契約社員となり、最終的には管理職となって会社でのキャリアを終えました。フルタイムで働きながら育ててきた2人の息子も社会人になった今、若手ビジネスマンに伝えたいことが3つあります

◆夫の死をきっかけに仕事をスタート

 私が結婚したのは、女性を12月25日なると値下げされるクリスマスケーキに例えて「25歳過ぎると売れ残り」なんて平気で言われていた時代。結婚後は家庭に入るのが当たり前で、私も24歳で結婚し、26歳で長男を授かったことで仕事をやめていたのです。

 夫の死後、仕事を探していたところ、大学時代にお天気お姉さんを務めていた縁もあって、フジテレビから契約社員として声をかけていただきました。

 当時、長男は小学1年生、次男は1歳。「週に2~3日で」と言われたのに、週5日勤務を選んだのは、「息子たちを育てていくためには、私が社会とつながっていることが大切だ」と強く思ったからです

 共働き世帯が増え、結婚、出産後も女性が仕事を続けることは、特別なことではなくなりつつあります。とはいえ、なかには仕事も子育ても中途半端になってしまうことに悩んでいる人も多いのではないでしょうか?

◆フジテレビ社員になって抱いた劣等感

フジテレビ

 仕事と家庭のバランスを考えると、キャリアアップには二の足を踏んでしまう女性も多く、私はとても残念に思っています。忙しい毎日の中で仕事の結果を出しながら、子どもとしっかり向き合うことはできます。それに、これからの時代は、キャリアの捉え方も今まで通りでなくてもいいのではないでしょうか。

 フジテレビでは、まず、海外のコーディネートを行う国際局の役員秘書として、1年半休むことなく一生懸命働きました。

 契約社員としての入社は、正直、殉職した社員の遺族への配慮という面もあったと思うんです。でも、そこから正社員に推薦してもらえたのは、仕事への姿勢を評価してもらえたからじゃないかな、と。やはり契約社員から社員にしていただいたので、劣等感があった分、期待に応えたいという気持ちも強かったんですよね

 試験を受け、正社員として入社したのは34歳の時。一緒に入社した社員はひとまわりも下でしたけど、その後は主任、副部長、部長職と昇進して、同年代の社員に追いついていったんです。

◆自分の仕事をしながら続けてほしいこと

 入社後は、バラエティ制作の部署や子ども向け番組を制作するフジテレビKIDSなどで、子育て経験を生かした企画などを積極的に提案しました。提案はそういうクリエイティブなことだけじゃありません。当時は番組の権利に関する契約書が手書きの台帳で管理されていたので、Excelで検索できるように作り直したりもしました。このデータベースは今でもバージョンアップしながら使われているそうです。

 こうした経験から私が伝えたい1つ目は、自分に与えられた仕事は100%以上の力で取り組んで成果を出すということ。それと同時に自分にしかできない提案を続けることが、キャリアにつながるということです。

 もちろん、提案したままで終わった企画もたくさんありましたが、気にしませんでした。今は職場のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいますから、コロナ禍の今は、Zoomを使いやすくする方法やテレワークをやりやすくするツールのように、当事者ならではの提案ができるんじゃないでしょうか?

◆子どもとの時間は1日10分でも大丈夫

子供 教育

 2つ目に伝えたいのは、特に働く女性に向けてのメッセージですが、忙しい中で子どもと向き合う方法です。夫の死後、フジテレビで働くことが決まった時、まずベビーシッターさんやハウスキーパーさんを探したんです。お金は大変だけど、子どもはいつか成長しますから。仕事、そして息子たちとの濃密な時間を優先するための投資でした。

「とにかく時間がない」というワーキングマザーは多いはず。でも1日10分でいいんです。私も「この時間は子どもに集中する」と決めたら、携帯の電源を切って、一緒に本を読んだり、遊んだりして過ごしていました

 その時間は常に笑顔で、息子たちをいい気分にさせることを心がけたし、息子たちも心から甘えることができていたんじゃないかな。私にとっても、ハードな仕事から離れてホッとできる時間でした。

 私の著書の中で、社会人になった息子たちが「いかに親が一生懸命働いているかは伝わっていた」「母が自己実現してくれていることが、自分にとってもよかった」と書いてくれているので、関わる時間は短くても、思いはしっかりと伝わっていたんでしょうね。

◆子育てに集中する期間にやること

 今までは出張もこなせたのに、お迎えのために思うように仕事ができないとか、子どもの世話でくたくたでファッショナブルに装う余裕もないなど、ワーキングマザーゆえのジレンマもたくさんあるでしょう。

 でも、その状態が一生涯続くわけではないですし、これからは70代以降もキャリアが続く時代。今、30代だとしたら、その時期の3年、5年なんて長くないと思いませんか?

 私が伝えたい3つ目は、もっと長いスパンでキャリアを考えてみる、ということです。思い切って「今は子どもにエネルギーを注ぐ」と決めてもいいと思うんです。女性の能力を長期スパンで活かす経営者も増えていますし、今後はオンラインが当たり前になってフレキシブルに働きやすくなっていくはずですから。

 ただ、仕事の量はこなせなくても、思いついたアイディアを発信するとか、自分を表現する努力を続けることが、その後のキャリアにつながっていくということは覚えておいてほしいです。特に子どもを通じたコミュニティはコンシューマーに近いので、商品開発やコンテンツ開発などにも生かせる貴重な情報だということを、女性だけでなく、男性も含めた会社全体で理解し合えるといいですよね。

◆幸せな結婚をしても頼れるのは自分

結婚

 最近、「Clubhouse(クラブハウス)」で働く女性や子育て中の女性ともトークを楽しんでいるのですが、さまざまなことに問題意識を持ち、行動していて頼もしいです。一方で「結婚して家庭に入りたい」という女性は今でも一定数いるそうですね

 昔の私にもそういう気持ちはあったので、女性が誰かに頼りたいと思うことは否定しません。でも、どんな裕福な相手と結婚しても、やっぱり人生って色々なことが起こるもの。私のようにある日突然、夫が亡くなるかもしれません。

 それに、息子たちも自立した今、たくさんの人と繋がっているけれど「結局、人は1人で生まれて、1人で死んでいくんだ」とリアルに感じることが増えていて。「頼れるのは自分だけ」という思いがますます強くなっているんです。だから、女性には1人で生きていく力を身につけてほしい。お金を得る手段を持つことって自信につながるし、自分で決断して人生を決める権利を持つことにもつながりますから。

 社員や派遣社員でなくても、稼ぐ金額が少なくてもいいんです。お菓子を作ってネットで販売してみるなど、得意なことを活かしてみてください。自分のスキルやキャリアを活かしてお金を生み、それを継続していくことが大切です。

 もし、これから何か始めるのだとしたら、まずはコミュニケーション能力とデジタルスキルを高めること、そして、1分以内で自分を最大限表現するプレゼン能力を身につけておくことをオススメしたいですね

<TEXT/子育てアドバイザー 入江のぶこ>

【入江のぶこ】

【プロフィール】 1962年、東京都生まれ。大学卒業後、フジテレビ報道記者の入江敏彦氏と結婚。1994年12月、移住先のカイロで小型飛行機が墜落し、乗っていた入江氏が死亡。帰国後、フジテレビに就職。バラエティ制作、フジテレビキッズなどを担当。2017年7月に退職後、東京都議会議員選挙に出馬、港区でトップ当選を果たす。著書に『自ら学ぶ子どもに育てる 息子2人が東大に現役合格した、ワーキングマザーの子育て術』(あさ出版)がある

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