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「毎月10万円の一律給付を」コロナ禍に“バラマキ”が必要な理由を専門家に聞く

bizSPA!フレッシュ / 2021年7月9日 8時46分

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井上智洋氏

 蔓延防止等重点措置を適用する東京都だが、2021年7月11日から4度目の緊急事態宣言を発令することになった。終わりのないコロナ禍は、確実に私たちの生活を蝕んでいる。経済的に苦しんでいる人も少なくない。内閣府が2021年6月4日に発表したアンケート結果によると、不安を感じていることについて、実に4人に1人が「生活の維持、収入」(26.7%)と回答していた。

金欠 預金通帳

画像はイメージです(以下同じ)

 経済対策が喫緊の課題であることが浮き彫りになったが、駒澤大学准教授の井上智洋氏は、著書『「現金給付」の経済学』や『毎年120万円を配れば日本が幸せになる』(小野盛司氏との共著)にて、今の日本経済を立て直すための最善策として“現金給付”を挙げている。

 今なぜ現金給付が重要なのか、その原因から私たちができることまで話を聞いた。

◆菅首相は国民を救う気がない

 まず、「現金10万円一律給付(特別定額給付金)」「持続化給付金」など、コロナ禍で政府が実施してきた給付策について、井上氏は「理想を上げるとキリはありませんが、思ってたよりはよくやったと思います」と評価する。

「消費税増税や公共投資削減など、自民党政権は“均衡財政主義”に基づいた政策を徹底してきたため、個人的には『給付金は絶対配布しないだろう』と思ってました。ただ、野党や国民からの批判による影響も強く、決して自民党政権を評価するつもりはありませんが、さまざまな給付策を実施してきた点は評価します。

 しかし、菅義偉政権になってからの給付策は語るに値しません。2021年に入ってから緊急事態宣言の発令・延長を繰り返していますが、まともな給付金の議論はほぼなし。それどころか、2月に持続化給付金、家賃支援給付金を打ち切り、雇用調整助成金は5月から支給上限額の段階的な引き下げが始まり、2020年以上に国民に自粛を強いているにもかかわらず、経済的なサポートを次々と削減しています

 さらには、菅首相は5月下旬、国民に向けた給付金について発表しましたが、対象者について『預貯金額が100万円以下』『ハローワークで求職中』など曖昧な条件を設けており、本気で国民をサポートする気があるのか大変疑わしいです

◆コロナ前から日本経済はどん底だった

井上智洋氏

井上智洋氏

 理想的な企業向けの給付金については井上氏はこう話す。

「企業向けの給付金として、中小企業に対して最大200万円の給付を行う“持続化給付金”がありました。ただ、中小企業と一括りしても規模は当然違いがあるため、適切な給付策とは言い難かったです。

 なので、各企業の規模に応じた給付策として、例えば、無条件で『15万円×従業員数』といった給付形式を採用すると良いでしょう。『感染拡大が深刻な地域に限定』『従業員の定義の明確化』など議論の余地はありますが、様々な条件を設けて複雑化してしまうと大打撃を受けている企業を救えないリスクがあります。給付形式を可能な限りシンプルにしたうえで、一律での現金を給付することが望ましいです。

 とはいえ、一律の現金給付を提案した際、『潰れるのは経営が悪かったから』『ゾンビ企業なんて助けなくても良い』といった批判が散見されますが、コロナ禍という未曾有の事態を想定しながら経営することは不可能であり、経営難に陥った企業に自己責任論を振りかざすことに無理があります

 そもそも、新型コロナウィルスが感染拡大する前から、自民党政権が“均衡財政主義”を貫いた結果、日本は長期間の不況に見舞われました。新型コロナウィルス以上に自民党政権の誤った政権運営の影響により、経営難に陥った企業は少なくなく、国は支援することは当然です」

◆数か月に1回給付金を一律で配布すべき

井上智洋氏

 次に個人向けの現金給付についても一律の必要性を訴える。

「可能であれば毎月、毎月が難しいのであれば数か月に1回は10万円の給付金を全国民に一律で配布すべきです。菅政権が発表したような条件付きの給付策ですと、困窮している全ての人を救済することが難しく、手続きに手間取ってしまい、“今すぐに支援すべき人”を救えないリスクがあります。

 なにより、現在の生活保護受給状況を鑑みれば、一律の現金給付にこだわることは必然。生活保護を利用する資格がある世帯が、実際に生活保護を受給している割合(捕捉率)は2割程度で、『生活保護バッシングを恐れている』『役所に問い合わせるも対応してもらえなかった』など、権利のある8割の人が生活保護を受給できていません。しかし、2020年に実施された10万円の現金給付の給付率は9割以上。一律配布することで、多くの人に現金が行き渡らせることができます

◆「風俗嬢に給付金を出すな!」が的外れな理由

菅首相

首相官邸HPより

 けれども、一律の現金給付に対する反対意見は少なくない。とりわけ「税金を納めていないから」という理由から、風俗従事者を始めとした“夜の仕事をしている人”に給付金が渡ることに激しい嫌悪感を抱く人もいる。

 しかし、井上氏は「納税しているかどうかは、あくまで現行の税制度に問題があるため、現金給付と結びつけて考えるべきではありません」と一蹴。

「また、『富裕層にも給付するのか!?』といった声も寄せられますが、支援が必要のない個人だけでなく企業にも後々納税してもらえば良い。個人の場合、所得税は“経費を膨らませる”という逃げ道があるため、“資産税”を増税すれば、一律給付に再分配機能を持たせることができます。現金給付を議論する際、税制度の見直しをセットにすれば、多くの人が抱いている不安や不満は解消されるでしょう

◆財政支出を拡大し、市場にお金を流すことが大切

「現金給付」の経済学

「『現金給付』の経済学: 反緊縮で日本はよみがえる」(NHK出版、井上智洋)

 給付金の議論になると必ずと言って良いほど「財源の確保」が争点になるが、井上氏は「財源は全く問題ありません」と言い切る。

「財政破綻したギリシャと違って日本は“円”を発行できるため、財源について心配することは何もなく、所謂“国の借金”が膨らんだところで容易に返済できます。そのため、直ちに均衡財政主義を諦め、現金給付はもとより公共投資など財政支出を拡大し、市場にお金を流すことが大切です

 倒産や失業を理由に自殺者が増加傾向にあり、国民の命が危険にさらされている現状を直視せず、この期に及んでプライマリーバランスの黒字化(財政規律)を順守しようとしている政治家はクビにして良いでしょう」

 しかし、均衡財政主義に囚われた国会議員や官僚の考え方を改めることは難しい。

「国会議員や官僚は学歴が高く、エリート揃いのはずなのですが、それでもなお“個人”と“国家”を類似し、『借金は当然返すべきだ!』『支出を抑えて節約しよう』と考えている人は多く、今もなお国会のみならず国民の中でも均衡財政主義は根強いです。しかし、均衡財政主義が日本経済を停滞させたことは誰の目にも明白。今こそ、一律の現金給付を実施し、国民の命を守り、経済を活性化させなければいけません

◆Twitterで声を上げよう

 最後に一律の現金給付を実現するため、私たち国民ができることとしてTwitter世論の重要性を示す。

「昨年実施された現金10万円一律給付(が議論された際、自民党は条件付きだったり給付ではなく貸与だったりなど、あの手この手で給付を拒んでいました。しかし、Twitter上で『一律給付を!』といった機運が高まったことにより、政府もあれだけ渋っていた現金給付10万円に踏み切りました。

 もちろん、Twitter世論が全てではありませんが、問題点があれば声を発し続けることが、より良い社会を実現する基本です。政治経済の動向を注視し、声を上げることが私たちに今できる運動だと思います」

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 現金給付の必要性だけでなく、均衡財政主義の危険性も浮き彫りになった。今年は衆院選が控えているが、均衡財政主義かどうかを注目して各政党、各候補者を見ると、良いのかも知れない。

<取材・文/望月悠木>

【望月悠木】

フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている Twitter:@mochizukiyuuki

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