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死屍累々のスマホ市場に、意外な挑戦者。ライカから19万円の高級品も

bizSPA!フレッシュ / 2021年7月16日 18時45分

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2019年12月でサポートが終了したWindows Phone ©︎Roman Pyshchyk

 2021年5〜6月にかけ、意外なメーカーによるスマホ参入が相次いで報じられた。高級カメラ製造で知られるライカ(ドイツ・7月16日発売)と、デザイン家電が評判のバルミューダ(日本・11月以降発売予定)の2社だ。

ライカ

画像はソフトバンク公式サイトより

 現在の日本における売れ筋は、AppleによるiPhoneと、中国系メーカーによるAndroidスマートフォン(いわゆる「中華スマホ」)である。競馬に例えるなら、iPhoneが逃げ馬、中華スマホが差し馬といったところだろうか。

 そういうわけで今日では、中国系メーカーが日本・台湾・韓国のメーカーを追い抜きつつある(SAMSUNGは善戦しているが)。最大の武器は安価と高性能だが、「格安プラン」を提供するキャリア各社が中華スマホの販路になったのも追い風だ。

 依然として競争の激しいスマホ業界だが、畑違いとも思われるライカやバルミューダが出走するのはなぜか、その背景を探ってみたい。

◆ライカのスマホは19万円

 ライカブランドを背負って発売される新型スマートフォン、その名前は「LEITZ PHONE 1」。シャープ製「AQUOS R6」をベースに独自チューンの光学ユニットを搭載、そのカメラ性能をセールスポイントにしている。ただし、この機種に関してライカの立場は「全面監修」に留まっており、スマホ本体がドイツ本国で製造されるわけではない。

 現在のところソフトバンク専売となっており、機種代は19万円程度をつける。「トクするサポート+(特典A)」を適用すれば半額程度になるが、この場合には機種変更時に端末が回収されるため、ライカファンはこのオプションを選ばないものと思われる。

◆類似機種とは差別化できている

ライカ カメラ

ライカのカメラ ©︎boysen

 やはり、LEITZ PHONE 1を町中で見かける機会はそう多くないだろう。最高級機として、むしろ「Android OSを搭載した、質の高いコンパクトデジカメ」として、マニアの間で存在感を醸していくはずだ。

 同じようなマーケティングを行っているAndroid端末はすでにあり、ソニーの「Xperia PRO」(実売25万円程度)がそうだ。こちらは映像制作の現場をターゲットにしたものであり、趣味的な静止画撮影をメインとするLEITZ PHONE 1とはすでに一定の差別化がなされている。

◆60代以上のマニア向け!?

 そもそも「ライカのカメラ」自体が、「たくさん作って安く売る」ような商品ではない。Appleは1年間に2億台以上のiPhoneを作っているが、その1/1000の生産量でも、高級カメラとしてはヒット商品になる。したがってLEITZ PHONE 1も採算ラインに乗るという目論見だろう。

 日本のカメラマニアにとって「ライカ」の持つブランド力は絶大である。『ちびまる子ちゃん』に出てくるカメラフリーク「たまちゃんのお父さん」の愛機もライカだった。とりわけ日本では60代以上の層にファンが多く、資金に余裕のある「逃げ切り世代」を狙った商品だと見ていいだろう。

 ドイツは伝統的な工業先進国だが、現在もスマートフォンを製造しているメーカーはミュンヘンのGigaset社のみである。シーメンスの携帯電話事業撤退以降、世界的なブランドは存在していない。

 LEITZ PHONE 1も実質的にはシャープの製品なので、「ライカのスマホ」をイチから作ろうというほどの関心はなさそうだ。要するに、ブランド商売である(もちろんモノも良いのであろうが)。

◆バルミューダもスマホに参入

バルミューダ

デザイン性の高さが人気の秘訣 「バルミューダ ザ・トースター」 ¥23980

 デザイン性の高い掃除機や空気清浄機で知られる日本の家電メーカーが「バルミューダ」である。横文字のブランド名を称し、製品のデザインも「白物家電」とは一線を画しているために、日系メーカーだと知らない人も多いのではないだろうか。創業は2003年であり、業界では新興企業に数えられる。

 このバルミューダも、秋モデルでスマホに参入すると伝えられた。キャリアとしてはソフトバンク、製造元としては京セラとの提携がすでに発表されている。ガラケー時代から“通好み”する端末を開発することでも知られる京セラだけに、どんな製品が出てくるのか楽しみになる。

 とはいえ、中華スマホに太刀打ちできるような高いコストパフォーマンスを実現できるかは未知数だ。バルミューダの売れ筋はあくまでインテリアであり、PCやスマホのようなデスクトップガジェットにはこれまで注力してこなかった。

 発売後数年で時代遅れになるスマートフォンは、デザインや堅牢さの一辺倒で通用する領域ではない。2〜3年後の買い替え時に「また同じブランドを選ぼう」と思わせるためには、あくまでも部品の性能が肝要になる。

 スマホ製造から撤退していった日系メーカーは数多いが、スマホの普及期には名だたる大企業が次々と“失敗作”を量産し、ユーザー離れが進んでいった。日本における“iPhone一強”は、その惨憺(さんたん)たる結果でもある

 数少ない生存者である京セラには、バルミューダの挑戦を力強く支えるよう望みたい。

◆世界企業が次々と撤退するスマホ市場

2019年12月でサポートが終了したWindows Phone ©︎Roman Pyshchyk

 スマホ市場における生き残りが難しいのは、日系メーカーに限った話ではない。世界企業GAFAでも、スマートフォンの根幹部分で実績を残しているのはAppleとGoogleの2社だけだ。

 Amazonは2014年に「Fire Phone」を市場に投入したが、約1年で販売終了。同社製品としては「Fire Tablet」シリーズが成功を収め、タブレット市場で存在感を強めているが、スマホに関しては正反対の結果に終わった。

 また、Facebookもかつては野心を持っていた。2013年には台湾HTC社と組んで「Facebook Phone」ことHTC Firstを開発、スマホ業界に殴り込みをかけたものの大失敗。後継機は製造されていない。

 GAFAではないが、PC向けOSで最大のシェアを誇るMicrosoftも、「Windows Phone」がふるわず撤退している。PC版Windowsのインターフェイスをタッチパネルに近づけるなど、「スマホとPCの一体化」に向けたさまざまな工夫があったのだが、携帯機のセールスには結びつかなかったようだ。

 有力企業が挑戦と失敗を繰り返してきたスマホ製造は、死屍累々のレッドオーシャンである。果たして「意外な挑戦者」たちが市場に歓迎されるのかどうか、その行方を見守りたい。

<TEXT/ジャンヤー宇都>

【ジャンヤー宇都】

「平成時代の子ども文化」全般を愛するフリーライター。単著に『多摩あるある』と『オタサーの姫 〜オタク過密時代の植生学〜』(ともにTOブックス)ほか雑誌・MOOKなどに執筆

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