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トヨタ関連企業を辞めて「歌舞伎町でNo.1ホスト」になった男の半生

bizSPA!フレッシュ / 2021年9月19日 8時45分

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トヨタ関連企業を辞めて「歌舞伎町でNo.1ホスト」になった男の半生

 親の敷いたレールを歩み、“求められていたキャリア”を順調に築いていたのに、ある出来事がきっかけで地元を飛び出すことに――。

 28歳で歌舞伎町のホストになり、現在は3店舗のホストクラブを経営する皐月さん(41歳、@thegodsatsuki)。夜の世界に入り、遅咲きながらグループ年間売り上げナンバーワンまで昇り詰めた。

皐月さん

皐月さん

「本当に熱狂できる仕事に出合いたい」と、もがき苦しんだ20代を経て、ホストとして開花するまでに、どのような葛藤や思いがあったのだろうか。経営するホストクラブ「OZONE(オゾン)」で詳しく話を聞いた。

◆敷かれたレールを進むが、徐々に違和感が

 愛知県で生まれた皐月さん。彼の住む地域には日本を代表する自動車メーカー・トヨタが本社を構えており、“この企業に就職して結婚し、マイホームを建てること”が幸せの定義とされていた。

 両親と弟をはじめ、親戚の多くはその関連企業に勤めており、皐月さんも地元の大学を卒業し、何の迷いもなく同じ企業に就職した

「機械設計エンジニアをしていました。要は車の部品の設計ですね。この会社は地元の優良企業ということもあり、仕事に誇りを持っている人が多かったのですが、僕はどうしても好きになれなくて。朝9時から深夜までただひたすらに働き、ほかに楽しいこともない日々。数年働いたのちに、『もっと大きなことをやりたい』『東京に出て勝負したい』という気持ちが湧き出てきました。でも家族の期待を裏切れないし、そもそも地元を出るのが怖くて……」

◆不幸が重なり精神科に。地元企業も退職

皐月さん

 新しいことに挑戦したいと思いつつも勇気がなく、ただ時間だけが過ぎていく。そんな毎日が大きく変わったのは、27歳のときに起きたある出来事がきっかけだ。

12年飼っていた愛犬の死と10年付き合った彼女と別れたのが同じタイミングできて、精神的に参ってしまったんです。人生で初めて精神科に行って薬を処方してもらいました。そのタイミングで会社も辞めました。両親は……すごく悲しんでいましたね」

 なんとか社会復帰しようと、様々な自己啓発本を読むも、心が追いつかず頭に入らない。書店に足を運ぶ中で、人生を変えるある1冊の本に出合う。

◆結婚資金を使い、世界一周の旅へ

「たまたま手に取った高橋歩さんの『WORLD JOURNEY』(A-Works)という本に惹かれたんです。世界一周はお金がかかるし、英語も話せないと無理と思い込んでいましたが、英会話ができない著者が150万円で世界中を旅したという話が書いてあって。

『そういえば、結婚するために貯めていた200万円があるな』と思い出し、世界一周の旅に出ることにしました。当時は失うものがなかったので、『いけるとこまでいこう』と前向きな気持ちになれたんです。ただそのときも両親はすごく心配していたし、泣かれましたね」

 地元でさえ出たことのない皐月さんが憧れていた東京よりさらに遠い、世界へ飛び出した。世界一周は、今までに触れたことのない価値観や人との出会いがあり、心に大きな変化を与えたという。

◆保険営業かホストで迷った結果…

皐月さん

「23か国訪れた中で、特に印象に残っているのはインド。日本人はもちろん、アジア人がほとんどいない小さな町を訪れたとき、『自分はなんてちっぽけなんだ』と思うと同時に、『だからこそなんでもできる』と思ったんです。気持ちがふっと軽くなりました。今までやりたいことや成し遂げたことが何もなかったけれど、『世界一周をする』という目標が達成できたことで、自分に自信が持てるようになりました」

 日本に帰国後、3か月の療養期間を経て、「自分が本当に熱狂できる仕事」を見つけるために上京を決意する。

「大きなことを成し遂げたかったので、努力した分だけ結果につながる営業職をやりたいと思いました。営業の過酷さでいうと、昼間だと保険、夜だとホストというイメージがあり、どちらにしようか悩んだ結果、ちょっとだけ顔に自信があったので後者を選ぶことに。でも、実際に働いてみると顔では全然敵わないことにすぐ気づきました(笑)」

◆本音での接客で売り上げナンバーワンに

 当時28歳。ホストの中ではかなりの遅いスタートだが、地元を捨てお金もなく「もう戻れるところはない」と無我夢中で働いた。

「崖っぷちだからとにかく必死でした。お店での接客はもちろん、当時はSNSもなかったのでメールや電話、ブログなどで積極的に営業。入店して6か月でナンバーに入れたのですが、その後は伸び悩みました。原因は明らかでした。年齢をサバ読みし、とにかく好かれようと偽りの自分を演じていたこと。女の子に見透かされるし、本音で話せない自分自身にもモヤモヤしていました。ならばいっそのこと、嘘つくのをやめようと思ったんです。そしたら人気が上がりました

 意外と年上のほうが『落ち着く』とか『大人の男性』とかポジティブに捉えてもらえることがわかって。接客も、ゴマをするんじゃなくて『俺はホストだから売り上げを気にしてる』と伝えるように。その代わり『お金を使ってくれた分、楽しませるから』と正直に向き合いました

◆愛知県は自分の力で開拓していきたい

皐月さん

 入店から3年後の2011年にはグループの年間売り上げナンバーワンに。以降、10年にわたり、売り上げトップをキープ。もともと「皐月」という源氏名だったが、その活躍からいつしか「GOD皐月」と呼ばれるようになった。

 2016年に36歳でホストを引退し、経営者の道へ。2020年からはコロナによる苦境も続くが、地元・愛知県でも新店舗をオープンする予定だ。

「両親は今の働き方を認めて応援してくれています。地元に錦を飾る、というわけではないけれど、愛知県は自分の力で開拓していきたいという気持ちがあります。とはいえ、実際はめちゃくちゃ大変。だからこそもっともっと仕事に熱狂して、これからも成長していきたいです」

<取材・文/橋本岬>

【橋本 岬】

IT企業の広報兼フリーライター。元レースクイーン。よく書くテーマはキャリアや女性の働き方など。好きなお酒はレモンサワーです

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