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基本給6万円!残業は過労死級、「サカイ引越センター」で労組を作った20代に聞く

bizSPA!フレッシュ / 2021年9月29日 8時47分

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サカイ引越センターで発足した労働組合の面々

「勉強しまっせ」「仕事きっちり」などと歌ったり踊ったりする強烈なインパクトのCMでおなじみのサカイ引越センター。現在のCMでも「親しみやすさ」や「まごころ」をウリにするサカイ引越センターだが、不明瞭な給与支払いや過労死レベルの残業が常態化しているとし、同社20代社員6人が2021年5月に労働組合を結成した。

サカイ引越センター

サカイ引越センター(※公式サイトより)

 組合役員であり分会長でもある大森陸(25歳)氏を筆頭に、現在の組合役員はすべて20代。2020年に入社して間もない大森氏と年齢の若い社員たちが、一体どのように組合を立ち上げたのだろうか? 組合を結成したキッカケとともに、大森氏に尋ねた。

◆サカイ引越センター組合結成のキッカケ

「入社してすぐに、『給料が低い』と同僚などから聞いて時給に換算したところ、神奈川県の最低賃金1,012円を下回る状態だったことが組合結成のキッカケです。また、基本給が6万円のうえ、残業手当や深夜手当などの計算方法も不明瞭ということに衝撃を受けました。

 年に2回のボーナスも、金額は6万円ほど。さらに、お客さんの荷物を壊したり、車両事故を起こしたりすると、減額、あるいはもらえなくなります」

 支社によっては繁忙期の残業が月120~160時間と過労死レベルにもかかわらず黙認状態だったほか、パワハラ行為、労災隠しや社員寮への立ち入り検査・撮影、勤怠の時間操作など問題は山積み。靴や帽子などの作業着代を給料から天引きするシステムにも疑問があった。

「そういった労働環境に悩んでいたとき、『組合を立ち上げて、会社に訴えてみればどうか』と声をかけてくれたのが、母の古くからの友人で、いま組合の特別顧問を務めてくれている方でした」

◆組合結成までの道のり

サカイ引越センター

サカイ引越センターで発足した労働組合の面々

「特別顧問が神奈川県労働組合総連合の事務局長を紹介してくれ、事務局長からは全労連・全国一般労働組合神奈川地方本部の執行委員長を紹介してもらいました。そのため、ユニオンなどへは相談せずに、サカイ引越センター労働組合を立ち上げることができました」

 結成までがスムーズだったのは、特別顧問がすでに「神奈川県労働組合総連合とパイプがあったことが大きい」と大森氏は振り返る。

「労働組合は個人でも立ち上げられますが、会社へ提出する意見の書き方など難しいこともあります。執行委員長がいれば、意見を取りまとめて会社に提出してくれるのでスムーズです。なので、全労連などにパイプがない場合は、ホームページから問い合わせて加盟するのがおすすめです」

◆活動に縛られたり費用が発生しないか?

 組合を立ち上げたあと、組合同伴で川崎北労働基準監督署へ申告。現在は全労連に加盟し、全国一般労働組合として活動している。組合に入ると、活動に縛られたり費用が発生したりしないかと不安になる人も多いようなので、そのあたりについても尋ねてみた。

「組合に入っても、活動を強制されることはありません。仕事や生活が優先なので、会議に欠席という人も多いですし、最近ではコロナの関係もあってZoom会議がほとんどです。費用に関しては、どの組合に入っても『組合費』というものが発生します。

 一般的には1500~5000円ぐらいで、大きな組合や組合費が高いところは、組合員が裁判などを起こすときにお金を貸し出せるようプールさせていることが多いです。サカイの場合は、アルバイトや解雇者、退職者など毎月の収入により上限を設けているため540~2410円。組合費が比較的安い反面、交通費などは組合員の自腹です。組合員が増えれば、組合費を下げても交通費などが捻出できるので、早くそうしたいと思っています」

◆組合の発足と嫌がらせ

サカイ引越センター

 結成まではスムーズだった組合だが、すぐに壁が立ち塞がる。組合発足の翌日からハッキリわかるほど皆の対応がガラリと変わったのだ。

「組合役員の4人だけが集められ、1軒の引っ越しをすることが続いた時期もあります。ほかの社員とおこなっていた『誰がどの現場に行って、何時頃に終わった』という情報共有もなくなり、終了報告についても、気づいたら僕たち組合役員だけがほかの社員とは違う従来の窓口でおこなっていました」

 ただ、「サカイに労働組合がないのは、団体に加盟せず労働組合法の手順で立ち上げた組合を過去にサカイが潰したため」だと事前に聞いていた大森氏は、「ほかの非組合役員の接触を避けるためではないか」と推測。支店長に訪ねてもみたが、「意図的なものではない」と回答され、このような状態は約3か月間も続いている。

「1か月ほど前からは改善されつつありますが、少し前まではすごく働きづらい環境でした。また、これまでは1日1~2件だった引っ越し件数が1件に減らされ、1か月の給料が5~10万円違っています。手取りで、6月分は15万円、7月分は19万円でした

◆仕事を辞める選択肢はない

「組合を結成して働きにくくはなりましたが、僕は引っ越し業務が好きだし、引っ越しの作業をして、お客さんから『ありがとう』と言われることをとても嬉しく思っています。サカイ引越センターには、そういう社員がたくさんいます。だからこそ、基本給6万円を改善し、社員全員が普通に1日8時間、残業は1日2時間以内で人間らしい暮らしができるようになるまで辞めるつもりはありません」

 大森氏をはじめ、現組合役員は皆、同じ気持ちだと言う。しかし組合発足前には、思っていた給料と違っていたために生活ができず、やむなくサカイ引越センターを退職し、組合役員としては活動ができなくなった者もいる。

PANDA BAMBOO LEAF JAPANの会(笹の葉会)を立ち上げてカンパを募っていますが、2021年9月時点で約11万円しか集まっていません。活動するための交通費や消耗品費などもかかるため、弁護士費用を賄うことができず、組合の特別顧問頼りとなっています」

 組合の活動を妨害する「不当労働行為」に対しては、労働委員会で対応するため、収入や資産が一定以下の場合に無料で法律相談が可能な法テラスの対象外。そのため、弁護士費用などは組合役員の持ち出しやカンパにて賄う必要があるが、実質的な減給にあることやカンパが思うように集まっていないことから、活動が大きく制限されている。

◆休業補償を「これ以上払わない」

サカイ引越センター

子供もいる大森さん

 組合は熱心に活動を続けているが、前途は多難だ。団体交渉で労災隠しを認めたサカイだったが、組合を通して支払うと提示していた休業補償額について、約束よりも少ない額を直接本人に振込み、「これ以上は支払わない」の一点張り。

 サカイ側の対応に呆れる特別顧問は、下記のようにアドバイスしてくれた。

「このようなケースに発展すると入金されるまでに手間も時間もかかるので注意してください。会社が労災の手続きをしてくれず会社記入欄が空白でも、労基署へ相談すれば受理してもらえます。また、仕事中の怪我は本人の不注意でも適応になりますし、通勤途中も対象です。会社に言いくるめられないようにしてください。

 仕事中にケガ未払い賃金などがある場合、身近にある組合に気軽に相談してほしいです。組合員でなければ相談に乗らないということはないですし、相談するだけなら無料です」

◆サカイの労働組合の輪を広げたい

引っ越し

※イメージです

 活動はスムーズに進まないことも多いようだが、組合の現状と今後の展望について、大森氏は下記のように語る。

「給料や残業、パワハラといった内容のほか、引っ越し作業で床を傷つけないよう下に敷くポリカーボネート板のノルマや転勤に関する相談も増加。管理職や配偶者からの相談も多くなり、組合の活動が広がっていると感じました。今後も、賃金を明確にすることや過労死レベルの残業廃止、制服をレンタルや無料にするといった要求を続けていきます

 また、特別顧問からも、下記のような補足があった。

「解決までの道のりは遠いですが、ホームページでの告発や報道、過去の不祥事が会社に対して相当なボディーブローになっています。また、宮前支社や川崎支社をはじめ加盟希望者が増えているので、このまま全国の支社に活動を広げてサカイの労働組合を認めさせ、全国の支社で組合員の活動を認めさせることが最終的な目標です」

 20代という若さにもかかわらず、減給や嫌がらせに立ち向かう彼らに、明るい未来と働きやすい職場が用意されていることを願わずにはいられない。

<TEXT/山内良子>

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