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安倍昭恵夫人のスピリチュアルな言動に見る、右派も左派もスピと繋がるわけ

bizSPA!フレッシュ / 2021年11月12日 8時45分

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安倍昭恵『「私」を生きる』(海竜社)

 オカルト、スピリチュアルが好きな人は一定数いるものだが、政治の世界にも時々、“そっち系”の人があらわれる。たとえば、2020年4月、当時総理大臣だった安倍晋三の妻、昭恵夫人が、スピリチュアル系の発信をしている人物と国内旅行をしていたことを覚えているだろうか

スピリチュアル

※画像はイメージ(以下同じ)

 オカルト・スピリチュアル・悪徳商法研究家でライターの雨宮純さん@caffelover)は「右派でスピリチュアルな人は珍しくありません」と語る。またスピリチュアルは右派だけでなく、左派の思想とも共鳴するとも。今回はそんなスピリチュアルと政治イデオロギーについて紹介したい(以下、雨宮純さん著『あなたを陰謀論者にする言葉』より一部編集のうえ、抜粋)

◆安倍昭恵さんとスピリチュアル

 2020年4月、新型コロナウイルスが流行する中、当時総理大臣だった安倍晋三の妻、昭恵夫人が50名のツアー客とともに大分県の宇佐神宮に参拝していたことが騒がれました。

 このツアーを主催していたのはMという男性で、「新型コロナウイルスは大宇宙の意思であり、DNAを書き換えてもらうことによって人類を進化させる」88次元からのメッセージを謳う書籍や、「コロナウイルスを愛の波動に変える高次元エネルギー曼荼羅(まんだら)」が掲載された著書を刊行し、スピリチュアル系のイベントにも登壇している人物でした。

 東日本大震災後の反原発運動や放射能忌避投稿を行う人々にスピリチュアルや疑似科学と相性のいい自然派の方が多かったことから、スピリチュアルを左派と考えている方もいるかもしれません。それでは、安倍昭恵は左派なのでしょうか。確かに反原発や反防潮堤、反TPPなど安倍晋三とは異なる主張をしていた彼女は左派に見えるかもしれません。

◆スピリチュアルだけど思想は保守

あなたを陰謀論者にする言葉

雨宮純『あなたを陰謀論者にする言葉』 (フォレスト2545新書)

 ところがその一方で、塚本幼稚園幼児教育学園を母体とする神道系小学校「瑞穂の國(みずほのくに)記念小學院」(一時期名誉校長だったものの後に辞退)に対して、教育勅語の朗唱や自衛隊への慰問、伊勢神宮参拝に感銘を受けたと語っており、さらには「先の大戦は解放戦争であり、ただ謝罪するのはおかしい」旨の発言も行い、「神道儀式で重要な大麻は、先の大戦で負けてしまったために米国によって禁止された」という陰謀論も支持しています

 左派の人がこのような発言をするものでしょうか。発言からはむしろ、安倍昭恵氏は根本的には保守であり、思想としては夫の安倍晋三とも共通していると考えたほうが自然です。それではなぜ一見左派に見えるような活動を行っていたのでしょうか。その鍵がスピリチュアルです。

◆スピリチュアルは右派とも親和性が高い

不安 精神

 実は、スピリチュアルは右派とも親和性が高いのです。

 たとえばスピリチュアル系の人たちを見ていると、日本を「神国」として天皇を礼賛したり、中国共産党を激しく非難するアカウントがあります。ここまでではないにしても、パワースポットとして神社を巡る人は多いですし、勾玉(まがたま)を使ったセラピーもあります。

 また多いのは、「元氣」のように「気」を「氣」に置き換えたり、「私」を「和多志」と記述する人たちです(「和多志」で検索してみるとかなりの数いることがわかります)。

「氣」については、「『気』は中が『〆』になっているので言霊(ことだま)パワーが発揮できなくなってしまう。一方の『氣』は中が『米』になっているのでパワーが八方に広がる。日本人はもともと『氣』を使っていたが、言霊パワーを封じたいGHQが『気』に改めさせたのだ」という一種の言霊信仰と陰謀論によるものです。

「和多志」についても同様で、もともと使われていた「和多志」を、GHQが「私」に改めさせたという陰謀論が浸透しています(もちろん、そんなことはありません。戦前の文学を読めばすぐにわかります)。

◆「仏教伝来以前に遡るべき」という主張

 さらに、右派的なスピリチュアルを好む人は、神事で使われる大麻やマコモを神聖なものとして大事にします。マコモとは水辺に群生するイネ科の植物で、菌の寄生によって根元が白く膨らみ、マコモダケと呼ばれる食材になります。こうした人たちからよく聞かれるのが「古神道」です。

 スピリチュアル系の投稿で「古神道」という言葉を見たとき、私は「そんなに昔のことがわかっているのだろうか」と不思議に思いました。

 というのも、神道は長く仏教と一緒に信仰される神仏習合(神道の神は仏の化身であるとする本地垂迹説(ほんじすいじゃくせつ)が代表的です)の時代が続いており、古神道を「仏教が伝来する前の『純粋な神道』」とすると、仏教伝来より前に遡る必要がでてきます。

 仏教が伝来したのは6世紀ですが(538年説を覚えるのに「ご参拝」と語呂合わせをした人は多いのではないでしょうか)、これは『古事記』(神道神話が多く収録されている最古の歴史書)の成立(8世紀)よりも早いのです。

 つまり、最古の神道聖典である古事記が成立した時点ですでに仏教は伝来していたわけです。ここからさらに遡った神道の姿、いわゆる神祇信仰(じんぎしんこう)がどの程度明らかになっているのか疑問だったのですが、スピリチュアル関連の本を読むと、どうもここで言われる古神道とは神祇信仰ではなく、平田篤胤(ひらたあつたね)に端を発する霊学の流れのようです

◆古神道とは国学者により「復興」されたもの

スピリチュアル

 たとえば大野百合子著『レムリア&古神道の魔法で面白いほど願いはかなう!』(徳間書店)では、次のように書かれています。

=====
 古神道というのは、実際には江戸時代になってから平田篤胤や本居宣長が、本来の日本の「道」という考え方はこうなのだろうと復興したものですが、アカシックレコードから見ても、和に伝わる叡智はその教えの核にあるとともに、有効な儀式や行も古神道にたくさん伝えられています。

 (中略)私たちは皆、神そのものの存在である分け御魂であることに、再び焦点を絞り始めたのが古神道であり、大本教などの古神道系の新興宗教です。今一度、「私たちは、本当は何者なのか」を探求し伝え始めました。しかし、当時はその思想が危険ととらえられ、大本教の出口王仁三郎は投獄されました
=====

 スピリチュアルに触れていないと読み解くのがやや難しい文章ですが、ここで言われているのは、古神道とは平田篤胤や本居宣長といった国学者たちが「復興」したものだということです。国学とは古代から伝わる日本固有の文化や精神を明らかにしようとする学問であり、古事記や日本書紀といった日本の古典が研究されました。

◆「直感的に何かを受け取った」人たちの言葉

 特に平田は純粋な神道の姿を追い求めており、この姿勢が神道系新宗教の大本(「大本教」と言われることが多いですが正式には「大本」です)にも受け継がれることとなります。この後はこうした流れについて見ていきます。

 ちなみに引用文中に突然アカシックレコードが出てくるのは、「ここで言っていることはアカシックレコードを読んだ結果からも正しい」というスピリチュアルな根拠づけのためです

 スピリチュアルな話を読んでいると「アカシックレコードをリーディングするとこうです」という言い回しが出てくることがありますが、「アカシックレコード」という古文書のようなものが実在するわけではありません

「宇宙人からのメッセージ」と同じく「直感的に受け取った何か」というイメージです。

◆仏教が混じった神道は「俗神道」

仏教

 平田篤胤は国学の中心人物として知られるため、その名前をご存じの方は多いと思います

 実は、彼は仏教が混じった神道を「俗神道」として批判し、イザナギ・イザナミによってつくられた日本こそが世界の中心=「大地の元本」であって、外国は「枝の国」である、旧約聖書のアダムとイヴはイザナギ・イザナミ神話が誤って伝わったものである、といった国粋主義的な主張を行っていました。

 平田の神道の根源への情熱は、鎮魂帰神法(精神集中法である鎮魂法と神懸を誘発させる帰神法からなる行法)を復興させた本田親徳、言霊学を確立した大石凝真素美といった人物に受け継がれ、これらが出口王仁三郎(でぐちおにさぶろう)による大本教義の基となります。

 大本から離脱して「ひかり教会」を立ち上げた岡本天明(おかもとてんめい)が16年に渡って自動書記した『日月神示』は現在でもスピリチュアル系でよく参照される文書で、ガイドブックや予言の書として読み解く類の本が多く見つかり、新型コロナウイルスと結びつけている本もあります。

◆日本は世界の雛形であるというスピリチュアル

 平田を源流とした、古代の神話を根拠として日本を優位に置く潮流にはかなり強烈なものもあり、日本の歴史が数億万年に及び、高度な超古代文明により天皇が世界に君臨していたとする『竹内文書』や酒井勝軍(さかいかつとき)によるピラミッド日本起源論、木村鷹太郎(きむらたかたろう)による外八洲(そとやしま)史観、出口王仁三郎による日本雛形論などが生まれました。

 外八洲史観とは、古事記に登場する淡島はアフリカ、新羅はイタリア、富士は東ヒマラヤといった具合に日本ではなく世界の地理であり、ユダヤ教は記紀神話を基につくられたというものです。

 また、日本雛形論とは北海道は北米大陸、本州はユーラシア大陸、四国はオーストラリア大陸、九州はアフリカ大陸、台湾は南米大陸に対応しており、日本は世界の雛形であるという説です。

 現在のスピリチュアルで見られる、「地球は宇宙の雛形説」はこの日本雛形論を発展させたものと考えられます。この潮流を取り込んだスピリチュアルに見られるのは、「太古の智慧にすごいパワーが秘められているのではないか」という期待です。

 これはホゼ・アグエイアスの「マヤ文明にすごいパワーが秘められているのではないか」という発想と共通しており、カウンターカルチャーから続く反近代志向を持つスピリチュアルは、今とは違う時代、すなわち古代への憧れを持っているのです。

◆スピリチュアルは左右両派に共鳴している

安倍昭恵

安倍昭恵『「私」を生きる』(海竜社)

 前項のように保守的な方面のスピリチュアルも存在するため、右派でスピリチュアルな人は珍しくありません。

 スピリチュアルは自然派や添加物忌避、反原発といった方面からは左派と、神道や天皇崇拝、古代日本の神聖視という方面からは右派と相性がいいのです

 スピリチュアルは左右のどちらに寄っているわけでもなく、左右両派が持つ反近代や反合理主義といった部分に共鳴していると考えると合点がいくのではないでしょうか。

◆安倍昭恵夫人のベースにある幼い思考

 こう考えると、一見矛盾しているかのように思える安倍昭恵氏の行動にも一貫性が表れます。彼女について取材した『安倍昭恵「家庭内野党」の真実』(文藝春秋)で、石井妙子氏は次のようにまとめており、私も同感です。

「反原発、反防潮堤、大麻、神社、農業、天皇、神、宇宙、夢、平和……といった彼女のキーワードは、彼女のなかでは矛盾なく、すべて繫がっている。そして、そのベースにあるものは日本を神聖視する、危うさを含んだ、少し幼い思考ではないだろうか」。

 安倍昭恵は、反原発や自然農で知られた左派のミュージシャン・政治活動家、三宅洋平と意気投合し、オスプレイ用ヘリパッド建設反対運動が行われていた沖縄県東村の高江に降り立っています。スピリチュアルは左右対立さえ超越してしまうのです。その三宅は現在、反ワクチン陰謀論を唱えるようになっています。

<TEXT/オカルト・スピリチュアル・悪徳商法研究家 雨宮純>

【雨宮 純】

オカルト・スピリチュアル・悪徳商法研究家。思春期にカルト宗教による事件が多発したことから、新宗教に関心を持つ。オカルト検証好きが高じて(ノストラダムスの大予言が外れたため懐疑派に転向)、理工系大学院を修了し現在に至る。週末はメイクをする女装男子。著書に『あなたを陰謀論者にする言葉』 Twitter:@caffelover note:「大仏

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