「現在の風景を残したい」自宅の取り壊しを決めた68歳の油彩画家 能登半島地震を乗り越えて
BSN新潟放送 / 2024年7月15日 17時32分
色鮮やかなピンク色で表現した「上堰潟公園の夫婦桜」や、日本海を見渡せる断崖の「角田岬灯台」などの油彩画の数々。
新潟市西蒲区出身の画家 樋口正さん(68歳)は、西蒲区の風景を描き続けています。
樋口さんが絵を始めたのは、16年前の52歳の時。
がんで闘病していた母親が、余命宣告を受けたことがきっかけでした。
「3か月くらいしか生きられないと。入院するので寂しいだろうなと思って、この際だから実家の一番記憶に残るような風景を描いてみようと…」
この時から絵筆を持ち続け、実に40点にも上る風景画を描いてきました。
そして、創作活動の集大成となる個展の準備をしていたさなかに、能登半島地震が起きたのです。
「玄関に入る階段が液状化で沈下しまして…」
「家自体が全体で30cmほど沈下した感じですね」
元日の能登半島地震で、画家・樋口正さんが43年間住んできた西区の自宅も「大規模半壊」になり、家族4人で過ごしたキッチンやリビングも、変わり果てた姿になってしまいました。
「ここにこたつがあって、地震後はみんなここに雑魚寝してたんですよ。そしたら徐々に盛り上がって、私の女房がメチャメチャ滑り落ちていって…」
新潟市に住む油彩画家・樋口正さんは、能登半島地震で大規模半壊となった西区の自宅を取り壊し、ふるさとの西蒲区へと引っ越すことにしました。
「なんとも言えない雰囲気で、それなら新居行ったほうがいいなと」
「悔しいというのはないけど、寂しいというだけかね」
自宅においてあった油彩画も破損。さらに樋口さんの心を痛めました。
個展の開催はおろか、画家としての活動を続けるかどうかも思い悩みました。
「1~3月いっぱいまでは完全に筆を1回も握らなかったし、途中1回やめようかなとも思ったんですけど、新居移ってちょっと制作活動を再開したら、あっこれはいけるなと…」
好きな画を描くことはやめられず、個展の開催を決意した樋口さん。
地震の経験を経て、画への向き合い方が変わったそうです。
「画として、現在の風景を残したいという気になりましたね」
「今回の震災で、今まであった風景がいつ何時なくなるか分からないので、今の時点で画として残していきたいと」
樋口さんは前を向き、改めて『ふるさとの風景』を描き続けます。
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