母と離れ46年「本当に『時間がない』と叫び続けたい」 曽我ひとみさんが探し続ける母の面影
BSN新潟放送 / 2024年8月3日 6時0分
新潟県佐渡市で北朝鮮に拉致され、2002年に帰国した曽我ひとみさん(65)。
今から46年前の1978年、ともに北朝鮮に拉致され、今も行方がわかっていない母・ミヨシさん(92)への想いを語り、「本当に『時間がない』というのをこれまで以上に叫び続けたいと思っている」と胸の内を明かしました。
拉致される前年にしたためた“親孝行”
曽我さんは去年、恩師の家で長年大切に保管されていた作文を受け取りました。
手にした作文のタイトルは『母』。原稿用紙7枚にわたって、ミヨシさんへの思いがつづられていました。
作文は2人が拉致される前の年、1977年に曽我さんが定時制高校の夜間部に通っていた3年生のころに書いたものです。
作文から抜粋
「『親孝行したいときは、親はなし』という言葉があると思います」
「母の優しい思いやりの心は誰よりも私が一番よく知っています。人が困っていればすぐに行って世話をします。働き者の母、涙もろい母、ドジな母、私はこんな母が誰よりも大好きです」
作文を目にする前に、娘とともに北朝鮮に拉致された母
夜間高校に通いながら、1977年に准看護師として病院で働き始めた曽我さん。
作文には娘を育てるため、朝から晩まで働いていた母・ミヨシさんへの感謝の言葉があふれています。
作文から抜粋
「こんな私をここまで育ててくれたことを心から感謝しています」
「これからも今まで以上に心配をかけるかもしれません。それでも許してください。これからも体に十分気を付けて、長生きしてください。素直な心をいつまでも持ち続けたいと思っています。今、『母ちゃん、ありがとう』と心から思っています」
ミヨシさんはこの作文を目にすることなく拉致され、今年12月に93歳になります。
曽我さんは、ミヨシさんとの関係をこう語りました。
「親子なんですけども、友達みたいにすごくどんなことでも言い合える…本当に仲がよかったんです。小さな頃にはいろいろな失敗もしたんですけど、でもやはり、そのことがあったからこそ、ぐっと近づいてなんでも話し合える、隠し事がない、そんな仲のいい親子になれたのかなって思っています」
タラップを降りたとき、母はいなかった
佐渡市で暮らしていた曽我さんとミヨシさんは1978年8月、近所の商店で買い物をした帰りに拉致されました。
2002年、北朝鮮は初めて日本人の拉致を認め謝罪。
曽我さんを含む5人の拉致被害者が24年ぶりに帰国を果たしました。
ただ蓮池薫さん夫婦らに続き、一人でタラップを降りた曽我さんは、どこか浮かない表情をしているように見えました。
「(日本の)調査団が来たときに『お母さんは日本にはいません』と言われてはいたんですけど、でもそれも信じることはできなくて…どこかにいるのかなって思いながら、お母さんのことを考えたり、いろいろなことで頭がごちゃごちゃになっていて」
理由の一つは、拉致された当初「日本に行けば会える」と聞かされていた母・ミヨシさんの姿がどこを探しても見当たらなかったことです。
北朝鮮では「勉強を頑張れば、母に会わせる」「家族ができれば、日本に帰してやる」など、期待させては反故にされ…ということの繰り返しだったといいます。
「日本に帰ってくることができたのは本当にありがたいと思っています。でもその反面、まだ帰国をされていない人たち…もちろんその中にはお母さんもいますし、横田めぐみさんもいますし、そのほかたくさんの方がいらっしゃって、その方々にもご家族があるし、ご家族の気持ちは一番よくわかるので」
曽我さんは、今も北朝鮮で救出を待つ被害者を思うと“いてもたってもいられなくなる”といいます。
一日も早い解決を求め、「少しでも力になれば」と活動を続けています。
46年、探し続ける母の面影
曽我さんとミヨシさんが拉致されたあの日から、8月で46年。
「母と同じくらいの年齢の方とかも近所にたくさんいたりして、『ああ92歳か、ああ、このおばあちゃんも92歳だ』って。母もこのくらいの年だから、こんな感じなのかなって… 実際に姿を見ることができないので、想像することしかできないですけど…」
曽我さんは今年度から、佐渡市役所の拉致被害者対策係で仕事を始めました。
全国各地で講演や署名活動に取り組みながら、報道機関の対面での個別取材にも精力的に応じることを決めました。
「被害者のご家族の方が今、横田早紀江さんにすれば88歳、有本明弘さんで言えばもう96歳という本当にご高齢になられまして、必ず元気なうちに娘さんたちにお会いしていただきたいという気持ちが、ますます大きくなりまして…」
政府は全力で北朝鮮と交渉を
曽我さんは政府に対し、一日も早い解決に向け北朝鮮との交渉を求めています。
訴えているのは、『もう猶予がない』という切迫した気持ちです。
「こちらで被害者のことを待っているご家族もそうですし、北朝鮮で、いつ迎えにきてくれるのかなって、日本にいつ帰れるのかなって待っている被害者の方もそうですし、日に日に年老いていってしまうので。そうなれば体のことも心配ですし、本当に『時間がない』というのをこれまで以上に叫び続けたいと思っています」
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