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「自分の姿が犯罪の抑止力になれば願ってもないこと」警察官とプロボクサーの『二刀流』を続ける覚悟

BSN新潟放送 / 2024年9月3日 18時31分

BSN

鋭い眼差しでボクシングの練習に励む滝沢栄吉さん(24歳)。
警察官とプロボクサーとの“二刀流”に挑む新潟県の男性です。

幼少期からの夢の実現と、『県民を勇気づけたい』という警察官としての思いがありました。

7月に東京の後楽園ホールで行われたプロテストに合格した滝沢栄吉さん。
「嬉しいです。自分の中ではもともとプロになるつもりだったので、やっとスタート地点に立てたなという気持ちが強いです」

一方で滝沢さんは、
「自分の中で完全に分けてやってるので、両方頑張ってるって認識はなくて…」
と話します。

滝沢さんは2023年に警察学校を卒業し、現在は柏崎警察署地域課の巡査として交番に勤務し、日々発生する事件や事故の対応のほか、地域のパトロールなどで住民の安全を守っています。

交番勤務は、当番・非番・休みの3交代制で勤務が組まれています。
取材に伺ったこの日は当番日。朝9時から翌朝9時までの勤務です。

― 警察官とボクシングとに通ずるものは?
「失敗することって一日のうちに何回もあって…、できるようにどうすればいいんだろうって姿勢は、ボクシングにも仕事にも通ずるんじゃないかと思います」

滝沢さんとペアを組む、北村恭田尻交番所長は
「何でもやりますと言ってますし、一つずつ業務を頑張ってる。個人的にはボクシングの話はしないっていうのも、警察の仕事は警察の仕事で割り切ってやってるんじゃないかな」と信頼を寄せています。

当番日の交番勤務は翌日午前9時まで。
引継ぎをして交番勤務は終わりとなります。

【滝沢栄吉さん】
「この後は2時間くらい仮眠して…。自分の中で2時間は寝るようにしていて、リセットしてから気持ちを切り替えて、ジムに行くようにしています」

警察官とプロボクサーの“二足のわらじ”を履く滝沢栄吉さん。
朝9時までの交番勤務を終えた後は制服から着替え、プロボクサーとしての活動をはじめます。

勤務先の新潟県柏崎市から十日町市のボクシングジムまでは、車でおよそ1時間。
早速、シャドーボクシングで自身の構えやポジショニングをチェックします。

所属するこのジムには、一日の交番勤務の後に週2回程度通っています。
仮眠をとったとはいえ、体は疲れているはずですが
「メリハリつけて。ボクシングやっている時はボクシングで…」と、ハードな練習に取り組んでいます。

滝沢栄吉さんがボクシングを始めたのは、小学5年生の時でした。

メキメキと実力をつけ、開志学園高校に進学した後は新潟県総体で3連覇を達成。
日本大学時代はボクシング部の副主将として活躍。

大学卒業後、プロボクサーを目指さない仲間も多くいる中で、より過酷な警察官とプロボクサーとの“二刀流”をなぜ決断したのでしょうか?

「警察になりたいというのも、小学生の頃からの夢だったので叶えたいものでもありました。ボクシングで活躍したい、もっとやりたい、っていうものありました」

どちらの夢を選ぶのか…。
2つの道を同時に歩む決断をする背中を押したのは、両親の存在でした。

「父親と母親は自分がやりたいと言ったことに対して反対することなく、黙って見守りながらサポートしてくれて…。両親には感謝しかないです」

『警察官』と『プロボクサー』。
幼い頃からの2つの夢を叶えた滝沢栄吉さんは、強い覚悟を持っています。

「警察官の仕事に関しては、自分の気持ちだけじゃなく市民が最優先だと思っている。自分が楽しんでやるものではなく、市民のためにやろうという意識…」
「ボクシングについては、1番はボクシングをやらせてもらっている警察の皆さんへの感謝。その次に自分が大事にしているのは“楽しむ”こと。ボクシングは楽しめるものだと思っている」

実戦形式の練習で、ミットをめがけ力強いパンチを打つ滝沢栄吉さん。
最後に肝臓やみぞおちなどを打たれ強くするための“腹打ち”も行い、この日の練習は終わります。

警察官とプロボクサーの二刀流をこなす滝沢さんには、所属する大翔ジムの嶋田雄大会長も期待を隠せません。

「運動神経抜群のセンスの素晴らしい持ち主」
「始まったら集中していますね、スイッチ入りますね。だから本当にボクシングが好きなんじゃないですか」
「期待してる。チャンピオンにしますよ」

ベタ褒めです。

新潟県警から許可を得た上で、プロ試験を受けた滝沢栄吉さん。
プロボクサーになったとはいえ、警察官は副業を禁止されているので、試合で得た報酬は、犯罪や交通事故に遭われた方やその家族の支援を行う「にいがた被害者支援センター」に寄付することにしています。

【滝沢栄吉さん】
「自分が戦ってる姿を見て、新潟県民の方や被害者の方を勇気づけられる試合ができれば嬉しいですし、長い目で見て、自分の姿が犯罪の抑止力になれば、それは願ってもないことだと思います」

周りへの感謝を胸に、警察官とプロボクサーの道を歩み始めた滝沢栄吉さん。
プロボクサーとしてのデビュー戦は、早ければ12月中旬にも行われます。

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