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「“安全な地域”を次世代に」が住民の願い【能登半島地震1年 歩みあしたへ】液状化現象の被害を乗り越えて 新潟市江南区天野地区

BSN新潟放送 / 2025年1月10日 7時53分

BSN

1年って… こんなに短かったのか

能登半島地震1年 歩みあしたへ

能登半島地震による液状化現象で大きな被害をうけた新潟市江南区の天野地区の住民たちは、子や孫の世代に“安全な地域”を残すため、復興に向かって歩みを進めています。

新潟市江南区の天野中前川原自治会の増田進会長(75歳)らは12月、新潟市の野島晶子副市長を訪ねました。

「孫・子の世代に、安全安心な地域として引き継ぎたい」

手渡した要望書のなかには、増田さんたち住民が抱く“地域への思い”が込められていました。

2024年1月。
元日に起きた能登半島地震から2週間たった新潟市江南区の天野地区では、土のうの積み込み作業が雪の降る中で行われていました。

雪に隠れた道路は、いたるところで陥没。


砂利を埋めて応急処置をしていましたが、地震から半年がたってもその風景は元に戻りませんでした。

【天野中前川原自治会 増田進会長】
「陥没はだいたい…今、80か所くらいですかね」
「まだ時折穴が開いて陥没したりして…」

それどころか、新たに陥没したところもありました。

「誰しも早く忘れたいんですよ」
「やっぱりこういうのがあると見ると思い出しますからね」

液状化現象による被害の大きかった天野地区を中心に、江南区では1614棟(6日現在)の住宅が被害を受けています。

能登半島地震では、新潟市江南区の天野中前川原自治会長・増田進さん(75歳)の自宅も被害を受け、新潟市の罹災証明で『半壊』の認定を受けました。

増田さんがこの天野地区に住み始めたのは、今から40年ほど前のこと。
住民の年代も同じくらいだそうです。

「昭和50年前後から、ここは急激に世帯数が増えた地域…」

日本一の大河・信濃川沿いに位置する天野地区は、1967年に曽野木団地の建設が始まったのをきっかけにして、その後は住宅地として急速に発展。多くの人が移り住みました。

そんな天野地区周辺は、国土交通省の『液状化しやすさマップ』では、最も高い危険度を示す赤色で塗られています。この湾曲した赤色のラインは、江戸時代に治水事業が行われるまで天野地区に信濃川が通っていたことを示しているのです。

この『液状化しやすさマップ』は、北陸地方整備局と地盤工学会が2012年に作ったもの。天野地区が住宅地として発展した当時にはなかったものです。
長年住み続けた我が家が“液状化する土地”の上に建っていた、という受け入れがたい現実を、住民たちは地震によって突きつけられたのです。

【住民】
「私も歳だから、なんとかいい方法を考えてるんですけど…」
「地盤は見えないでしょ、目にね。それが怖いですよね」

【天野中前川原自治会 増田進会長】
「『とてもこんなところ住んでられない』と、引っ越しや建物を壊すことを考えているお宅もあるようで…」
「表現悪いかもしれないけど、“限界集落”というそんな状況になりつつある」

高齢化が進む地域に降りかかった液状化現象の被害と、今後への不安…。
そんな中で住民は、“地域を元気づけよう”と動き出しました。

もともと新興住宅地だったため、昔から続く“お祭り”のなかった天野地区では、住民同士の交流を深める『夏祭り』を2019年から始めています。

しかし、能登半島地震で多くの世帯が被災したこの年…

【天野中前川原自治会 増田進会長】
「だからこそ、やる価値があると私は考えています」
「少しでも元気を取り戻してもらいたい」

そうして2024年8月も、子どもたちの元気な声が地域に響きました。
「ワッショイ、ワッショイ…」

【住民】
「自分の家もそうなんですけど、まだ被害を直していない状況なんですけど…」
「徐々に気持ちから盛り上げていきたいなって」

「元気づけたい」と話した増田さんも、子どもたちの“元気”に励まされました。

「この子たちには絶対、安全安心な地域にして引き継ぎたい」
「本当に勇気づけられ、これからまた頑張っていかないといけない」

地震から10か月となった2024年11月。

新潟大学 災害・復興科学研究所の卜部厚志教授らが、今後の液状化対策に役立てようと、天野地区の地層を調べるボーリング調査を行っていました。

「この辺が液状化している可能性があって…」
「あとはここ」
「あとはこの辺がモヤモヤとしているので…」

機械で地面を掘り進める音が響くなか、住民たちもその様子を見守っていました。

【天野中前川原自治会 増田進会長】
「人間って何かわからないのが一番不安なので…」
「被害があったということは事実ですので、その原因が何かっていうのがわかると、それによって一歩前に進めるかなって」

一方で、住民たちのこんな思いもまた本音です。

【住民】
「がっかりしたね。ここ買った時はそういう地盤はわからない…」
「移るにしても…。売ったってどうにもならない」
「この年代で引っ越すわけにはいかないしさ」

地震の“爪痕”は、住民の心に深く残されています。

新潟市江南区の天野中前川原自治会の会長・増田進さんたちが12月に、新潟市の野島晶子副市長に手渡した『要望書』は、住民へのアンケートをもとに作られたもので、新潟市が実施する液状化対策工事について、住民の費用負担を減らしながら早期の実施を求める内容です。

【新潟市 野島晶子副市長】
「この要望は、まさに地域の皆さまの心の声が詰まっているものと受け止めます」

野島副市長は、対策工事には高度な知見と技術が必要で時間がかかるものの、「現状や見通しをできるだけきめ細やかに伝えたい」と回答するとともに、「いくばくかの負担をしていただくのが基本」と経費負担についての理解を求めました。

元日以降、住民からの相談を受け、行政への要望活動もしてきた増田さん。

【天野中前川原自治会 増田進会長】
「やっと一里塚。古い言い方かもしれないけど、なんとか一歩踏み出したのかなという気持ちはある」
「1月1日に、笑って酒を飲める日が来るように…」

地震から1年。
復興は、まだまだ道半ばですが、次の世代にこの地域をつなぐため、住民たちは一歩ずつ、前に進んでいます。

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