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160年以上続く老舗酒蔵を継いだ東大卒38歳の女性 金融業界から転身し日本酒文化の発信に挑戦「好きなことを仕事にするのは幸せ」 新潟・長岡市

BSN新潟放送 / 2025年2月11日 6時44分

BSN

金融業界で働いていた三重県出身の青木里沙さん(38)。
創業160年以上の歴史がある新潟県長岡市の酒蔵・高橋酒造の経営を2024年9月に引き継ぎました。
「日本酒業界に新たな風を吹かせたい」と意気込む青木さんに密着しました。

取材当日、高橋酒造では2月の新酒完成に向けた仕込みの真っ最中でした。

高橋酒造 醸造責任者 阿部龍弥さん(33)※山形から移住
「正直、今まで作ったことないタイプのお酒とかもたくさん作っていくので、もしかすると失敗するかもしれないですけど、それがまた来年度の課題になると思うので。今年は社長から、いろいろなものをつくっていいよと言ってもらっている」

この高橋酒造の経営を2024年に引き継いだのが、社長の青木里沙さん(38)です。

「ここでお米を蒸しているんですけど、朝、白い蒸気がワッと充満するんです。それがすごくきれいで、あといい香りもするので…温かいですし。好きなシーンです」

国内消費量の落ち込む日本酒業界で、青木さんが目指すのは、古い概念にとらわれずに「チャレンジできる蔵」です。

東京大学経済学部を卒業後、証券会社や国内外の企業で資金調達業務に携わるなど、金融関係で12年ほど働いていた青木さんが酒造りの世界に飛び込んだのは4年前。山形県の酒蔵に、経営企画担当として入社したのがはじまりです。

「いろいろな理由があるんですけど、一番大きいのは“日本酒が好き”ってこと」
「好きなことを仕事にすることって、幸せじゃないですか」

日本酒好きが高じて転身し、山形県の酒蔵で仕事をするなかで、青木さんは「酒蔵を経営したい」という思いが強まったそうです。

「国内はどうしても人口が減るので、マーケットは小さくなっているとみえますけれど、海外の輸出が伸びていたりとか、海外でお酒を造る酒蔵が増えてきたりだとか、これからまだ可能性がある…」

「広い敷地・雪が降る・コメの産地」を条件に事業譲渡を望む酒蔵を探していた青木さん。2024年9月に高橋酒造と出会い、念願の酒蔵の経営者となりました。

「『ようやくここまで来たな』というのが正直な気持ちなんです。すごく小さな一歩なんですけど、大きな一歩だなと思っています」

ただ、日本酒業界を取り巻く状況は厳しさを増しています。

国内での日本酒の消費量は年々減少が続いています。
2023年の新潟県内酒蔵の日本酒の出荷量はおよそ3万2000キロリットルになるなど、10年間で3割ほど減りました。

長岡市の高橋酒造も、この厳しい現状によって事業継続が難しくなり、今回縁のあった青木さんにその経営を託しました。

現在、高橋酒造に勤めているのは社長を含めて4人。
全員が30代の移住者で、その背景も様々なのです。

営業やマーケティングを担当するのは、ドイツから移住した大手広告代理店出身の土居将之さん(31)。

「今まで日本酒を愛していただいた方々ももちろんですけど、日本酒に触れて来なかった方々に、国内外含めてどうやってコミュニケーションしていくのか、というところを、ひとつ考えていきたい…」

土居さんは、これまで高橋酒造が取り組んでこなかった海外輸出や外国人観光客を対象とした酒蔵見学を検討しています。

さらに酒米も自社栽培する予定で、青木さんの弟で三重県で農家をしていた魁人(かいと)さんが新潟県に移り住んで、この春から酒米を作ります。

高橋酒造 製造部 青木魁人さん(33)
「うちの姉の話をずっと聞いているうちに、お酒だけではなくて自社で原料から作るというところで、そういったところにワクワクして…」

この日、青木さんが慣れない手つきで作っていたのは、杉玉です。

高橋酒造 青木里沙社長
「もうすぐできるんです、新酒が。すごいうれしいなと思って、杉玉を作っています」

杉玉は新酒の完成を知らせるため、各酒蔵の入口に吊るします。

越銘醸 小林幸久社長
「ちょっとちょっとなんかいびつだな。この辺が出ている、この辺が…」

青木さんが杉玉の作り方を教えてもらっているのは、長岡市内にある別の酒造会社の専務と社長。杉玉を作ったことがない青木さんが相談したところ、教えてもらえることとなりました。

本来は競合同士が一緒につくることがない杉玉ですが…

越銘醸 吉原雅史専務取締役
「ライバルというか、もうこの産業事態が衰退がしているので、ともにやっていかないと生き残れないという危機感もありますし、一緒にやっていった方が絶対に面白いことが起こりますし、異業種から参入した強みをこの業界にどんどん生かしていければいいなと思って。そのきっかけですよね」

新体制となった高橋酒造は、2月に社名と銘柄も変更し新たなスタートを切ります。

青木さんを含め、4人と小さな酒蔵ですが、若い社員それぞれがこれまでの経験を生かして酒造りを始めます。

高橋酒造 青木里沙社長
「日本酒を飲む方は今、減っていると思うんですけど、今まで日本酒を手に取ったことがない方に手に取って頂けるような日本酒をまず作っていきたいなというのが1つあります。古い概念にとらわれずに新しいことを自由にやっていけるような、『チャレンジができる蔵』にしたいなと」

今回仕込んだ新酒は一升瓶でおよそ6000本と少量ですが、長岡市内の1店舗での販売が決まっています。

小さな1歩ですが、夢は海外への輸出!
低迷が続く日本酒業界に新たな風を吹かせるため、青木さんたちの奮闘が続きます。

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