81歳知日派の苦言「韓国の政治家は、『日本非難が愛国』だと思っている」

文春オンライン / 2018年12月14日 7時0分

写真

文藝春秋1月号

 慰安婦問題や徴用工問題が日韓関係を揺るがし続けている。

 そんな折、私は月刊 「文藝春秋」新年号 で、韓国有数の知日派である元駐日韓国大使・柳興洙(ユ・フンス)氏にインタビューし、これらの問題などについて胸の内を聞いた(「文在寅政権は我が韓国の『信用』を失った」)。

文政権には憤懣やるかたない

 この懸案をめぐって文在寅政権下の韓国は、日本との“約束”を破ったことで日本世論の激しい非難と反発を招いている。柳・元大使は、この懸案で日本との“妥協”を模索し、慰安婦問題では合意を決断した朴槿恵・前政権の対日スタッフだった。文政権の日本に対する“手のひら返し”には当然、憤懣やるかたない。

 彼が強調したのは「国家にとって最も重要なことは信用」ということだった。それは外に対しても内に対してもそうだという。ところが左翼・革新政権下の韓国では「積弊追放」の名の下で無理な過去否定が強行され、「国の信用」が失われているというのだ。このインタビューは、過去の保守政権時代に内務官僚出身で国会議員を4期勤めた韓国保守派の「憂国の声」になっている。

 とくに慰安婦合意については、駐日大使(2014年~2016年)として舞台裏交渉にかかわって苦労しているだけにこだわりがある。彼によるとあの合意は、(1)軍関与認定、(2)安倍首相の謝罪、(3)政府予算による補償――という韓国政府のかねてからの要求が実現したもので、当事者の元慰安婦たちの大多数(70%以上)が合意を評価し補償を受け取っているのだから大きな成果があったという。

 徴用工問題においても、日本企業に対する賠償要求は国家間の条約無視になり「国の信用」を落とすもので認めてはいけないという。

 柳・元大使は今年、81歳になる。子ども時代の戦前、家族とともに京都で暮らしたことがあり、終戦から4年後の1949年、小学5年生の時に韓国に戻ったという。そんな京都との縁もあって、国会議員落選中の1989年に、京都大学に1年間、研究留学し、ロシア思想史の大家で保守派論客として知られた勝田吉太郎教授に師事している。

 勉強家で日本語は完璧。国会議員時代は韓日議員連盟幹事長をしており、日本の政界にも知己が多い。日韓双方をよく知るだけに、最近の日本における反韓・嫌韓感情の高まりには頭を痛めている。

韓国の政治家は「日本非難を愛国だと思っている」

 それから、日本への注文もあった。「韓国人は(ご承知のように)非常に感情的な民族」で、日本人まで感情的になると収拾がつかないので、その振る舞い方は考えて欲しいという。また、今回のインタビューには引用できなかったが、「韓国の政治家は今なお日本非難を愛国だと思っている」が、これを正さない限り日韓関係はよくならないとも言っていた。

 韓国では、彼のような、日本時代を経験した世代、保守政治家、そして知日派は今、社会的、政治的にきわめて厳しい環境にある。日本の有力メディアで下手な言動があったとなると、たちまち本国での存在が危うくなる。今回のインタビューはそのギリギリのところでの本国への苦言である。

(黒田 勝弘/文藝春秋 2019年1月号)

文春オンライン

トピックスRSS

ランキング