青春の狂気と刀剣の輝き 危険なゲームの結末は?

文春オンライン / 2018年12月15日 17時0分

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『七胴落とし』(神林長平 著)

 世の新刊書評欄では取り上げられない、5年前・10年前の傑作、あるいはスルーされてしまった傑作から、徹夜必至の面白本を、熱くお勧めします。

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 名刀を擬人化したオンラインゲーム『刀剣乱舞』の影響もあって、若い女性にも拡がりを見せたここ数年の日本刀ブームの盛り上がりは凄まじい。だから、神林長平『七胴落とし』の主人公である予備校生・脇田三日月の名前の由来に、今ならばぴんと来るひとも多いだろう。平安期の名刀・三日月宗近だ。

 十九歳の誕生日を控えた三日月は憂鬱だった。大人になると、他人と意識を共有できる精神感応力を喪失してしまうからだ。不良の麻美に誘われ、感応力を使ったゲームに参加するうち、彼は同級生の赤井を死なせてしまう。麻美は麻美で、感応力を使って次々とひとを殺してゆく。この危険なゲームの結末には何が待っているのか。

 子供時代には誰もが持ち合わせていたであろう、大人になることへの拒絶感が充満した本書の手触りは、若者のピリピリするような苛立ちでささくれ立っている。そして三日月の周囲では、残酷な麻美、得体の知れない転校生・月子、脇田家の妖艶な使用人・佳子といった、少年の性への関心と嫌悪を具体化したような異性たちが蠢(うごめ)く。

 死のイメージで彩られた本書の中でもとりわけ不吉さを放つのが、三日月の祖父が所蔵する日本刀「七胴落とし」だ。認知症になった筈の祖父がそれを手にしただけで精気が漲(みなぎ)るほどのこの妖刀は、七人の胴を重ねて斬り落としたと言い伝えられ、今は生きた人間の血を求めるかのように三日月を誘惑する。

 青春の熱気や狂気と、刀剣の冷やかな輝きとの強烈なまでの相性の良さを描ききった小説だ。時代小説やミステリーにはよく出てくる日本刀が、SFで存在感を示した珍しい例でもある。(百)

(徹夜本研究会/週刊文春 2018年12月20日号)

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