ホークス戦力外の山下亜文が巨人へ 「投げれば目立つ子」の野球人生は終わらない

文春オンライン / 2018年12月14日 11時0分

写真

トライアウトで力強い投球を見せた山下亜文 ©上杉あずさ

 人生の大逆転劇はこれからだ! 本当によかった! おめでとうございます。

 ホークスから戦力外通告を受けていた山下亜文投手が、新天地・巨人で再スタートを切ることになりました!

 石川県の小松大谷高校から2014年育成ドラフト3位で入団したサウスポー。身長171cmと小柄ながら、野球センス抜群で力強い直球を投げ込む投手です。ホークスでは怪我に泣かされて不完全燃焼でしたが、巨人でも育成契約とはいえプロ野球選手としての夢が繋ぎ止められました。

トライアウトで躍動した山下亜文

 11月13日、ホークスのファーム本拠地・タマスタ筑後を舞台に12球団合同トライアウトが行われました。参加選手は48名。ホークスからも8名の選手が現役続行を目指し、受験しました。山下投手もそのうちの一人でした。

 しかし、毎年のことながらトライアウトから次の道が開ける選手はごくわずか。このトライアウトで2安打、1盗塁と結果を出し、さらに出場選手でおそらく1番の大歓声を送られた元ホークスの城所龍磨選手でさえ、他球団からの声が掛からず、11月30日に現役引退を発表しました。他にも多くの名のある選手たちも次の道が不透明なままです。

 そんな中、公式戦にさえほとんど登板できずにホークスのユニフォームを脱ぐことになった若鷹が、躍動して注目を浴びたのです。

 山下投手は、元オリックスの園部聡選手をレフトフライに打ちとると、同僚だった元ホークス育成の松本龍憲選手から空振り三振。最後は実績ある元楽天の桝田慎太郎選手からも空振り三振を奪いました。

 最速は147キロ! 小さい体でめいっぱい、力いっぱい、渾身の直球を投げ込む姿をみて、スタンドで見つめていた私にまで「このまま終わってはいけない」という悲壮な思いがひしひしと伝わってきました。

「悔しい想いしかない。見返したい……」

 今まで思うように投げられなかった悔しさ、“クビ”になった悔しさ、まだまだ野球をやりたいという想い……限られた打者3人のみのマウンドでしたが、それらの全ての想いが込められたような力強いピッチングを魅せてくれたのです。私はこれまで観てきた3軍戦でも、山下投手の投げっぷりが好きで引き込まれていましたが、この日は並々ならぬ想いが溢れていて、見惚れて、ものすごく感動しました。

 山下投手のトライアウトでの投球をテレビ放送で見たというあの和田毅投手も「どこにクビになる要素があるのかな」と後輩左腕の奮闘を称えていました。しかしそれに続けて、「でも、亜文が投げてるところ初めて見たかも」と苦笑いも。

 そうなんです。山下投手は入団4年目ですが、ホークスでの2軍公式戦登板は3試合のみ。2 回1/3を投げ、4四球、自責2、防御率7.71。主戦場は3軍。いや、それ以上にリハビリ組で過ごした時間の方が遥かに多い4年間でした。

「悔しい想いしかない。見返したい……」

 負けず嫌いな性格にさらに火が付き、1本勝負の舞台で見事結果を出したのです。そして、巨人から声が掛かり、入団テストを受験。12月3日、巨人との育成契約締結が発表されたのです。

「ホークス戦力外からの大逆転劇の人」へ

 山下投手のことをずっと評価してきた斉藤学リハビリ担当コーチは、「年間通して投げる体力と気力があれば、充分戦力としてやっていける」と言い、さらに「亜文は、投げれば目立つ子」と期待を込めていました。

 そして、これまでリハビリ組にいることが多かったことを踏まえ、「身体は大人になってきたからケガも減ってくるはず。これからは、とにかくずっと投げ続けること。今回の戦力外を、自分を見つめ直す良い機会にして欲しい。いや、しなきゃダメ!」と愛情いっぱいの喝も。

 他にも、たくさんの仲間たちが山下投手のことを気に掛けていました。私は、トライアウトにホークス選手たちを応援に行った翌日、ホークスの秋季キャンプの取材に行きました。すると、山下投手と同期の栗原陵矢捕手はじめ、多くの選手やコーチ陣から「亜文どうでしたか?」、「亜文よかったんでしょ?」と声を掛けられました。
トライアウトにも元同僚や知人友人等、応援団も多く駆けつけていました。たくさんの人に愛され、応援されてきた投手だと改めて感じました。ホークスでは叶えられなかった夢を、今度は巨人できっと叶えてくれるはず。

 ところで、“山下亜文”と言えば、あの高校野球史に残る“悲劇の……”とほとんどの記事に書かれます(私も敢えて書かせて頂きますが)。高3の時、エース山下投手率いる小松大谷高校は、星稜高校との石川県大会決勝で、9回裏に8点差をひっくり返されて甲子園出場を逃しました。ある意味、山下投手の代名詞的な出来事にもなっていますが、今度は自分が人生の“大逆転劇”をして、『ホークス戦力外からの大逆転劇の人』になって欲しいと思います。

 いつか、筑後で共に奮闘した若鷹たちと、日本シリーズの舞台で再会出来たら最高ですね。ホークスを離れても、これからも応援しています。もっともっと輝く姿を私たちホークスファンにも魅せてくださいね。がんばれ、亜文投手!

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ウィンターリーグ2018」実施中。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/10039 でHITボタンを押してください。

(上杉 あずさ)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング