日立が英国での原発建設計画断念 何が誤算だったのか?

文春オンライン / 2019年1月21日 7時0分

写真

首相を囲む財界人の会「さくら会」メンバーでもある中西会長 ©共同通信社

 日立製作所が英原発新設事業を断念する。このままでは米原発事業で巨額の損失を出した東芝の二の舞になりかねないためだ。最大3000億円の損失を計上する方針を固めた日立。浮上しているのが、昨年5月に経団連会長に就任した中西宏明会長の責任問題だ。

 日立の原発新設事業は英子会社「ホライズン社」を通じて、英中西部アングルシー島で原発2基を建設するもの。総額3兆円を超える大型事業で2兆円超を英国政府が融資し、残り9000億円を日立、英政府・企業、国内の大手電力会社や金融機関が3000億円ずつ出資する計画だった。

 だが、国内の出資交渉は難航する。誤算は「日立元社長の川村隆氏が会長を務める東京電力が出資しない意向を示したため、他社も二の足を踏んだ」(メガバンク幹部)こと。代案として「水面下で官民ファンド『産業革新投資機構』が出資する案も練られたが、同機構の混乱もあって立ち消えとなった」(同前)。追い込まれた日立は英政府に追加支援を要請したが、EU離脱問題で窮地のメイ英首相の理解は得られなかった。

 それにしても、なぜ川村氏は“後輩”の中西氏に助け舟を出さなかったのか。

川村氏が激怒した理由とは?

 そもそもホライズンの買収計画をいち早く日立に持ち込んだのは、元駐日英国大使で、11年6月に初の外国人取締役となったスティーブン・ゴマソール氏。ところが「交渉担当のゴマソール氏が取締役会に諮る前に英政府などと買収価格について合意し、中西氏が内諾していた」(経産省関係者)こともあって、買収価格はアナリストの予想価格の倍以上に跳ね上がってしまう。

 この高値掴みに激怒したのが、当時会長の川村氏だ。

「東大工学部時代から原発研究に取り組んできた川村氏は原発への思い入れは強かったが、買収までの経緯もあり英事業への深入りは危険と判断したのでしょう。結局、最後は“元上司”に引導を渡される形で、中西氏は『利益を上げるのは難しい』と撤退を決めた。これで日本企業による海外の原発計画は事実上ゼロになりました」(同前)

 成長戦略の目玉に「日の丸原発輸出」を掲げてきた安倍政権。だが、経団連会長として、その旗振り役だった中西氏の“白旗宣言”で、首相の青写真は大きく狂い始めた。

(森岡 英樹/週刊文春 2019年1月24日号)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング