視聴率競争の行方 “絶対王者“日テレに死角があるとすれば……

文春オンライン / 2019年3月24日 17時0分

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 いま、民放で日本テレビ(日テレ)が絶対的な強さを誇っている。2014年から17年、4年連続年間視聴率3冠王に君臨。3冠とは、全日帯(6時〜深夜24時)、ゴールデン帯(19〜22時)、プライム帯(19〜23時)を指している。17年、日テレは全日8.2%(2位はテレビ朝日[テレ朝]で7.4%)、プライム12.0%(同じくテレ朝が10.0%)、ゴールデン12.4%(TBSが9.9%)と2位以下に大差をつけており、この強さで18年も連覇する可能性が高い。「テレビ離れ」が叫ばれている現在、各局が視聴率を落としていく中で、日テレがギリギリで視聴率を維持している結果だろう。

かつて視聴率争いは日テレとフジのシーソーゲームだった

 年間視聴率覇者の歴史は日テレとフジテレビ(フジ)のシーソーゲームだった。1982〜93年まで12年間、3冠王に君臨したのがフジ。「楽しくなければテレビじゃない」と掲げ「軽チャー」路線のバラエティ番組を軸にテレビ界を席巻した。94年、「知的エンターテインメント」路線で成功した日テレが大逆転勝利を収めると以後10年間、03年まで日テレが3冠王となる。

 そして04〜10年、フジが再び3冠王を奪還するも11年、番組編成が「韓流への偏重」であると批判するフジへの抗議デモや東日本大震災を経て世間のムードが変わったことが影響したのか、急激に視聴率を落としていく。その結果、日テレが3冠を奪取した。

 一方、12年にはテレ朝が躍進。プライム帯で1位に(日テレは2冠)。テレ朝は翌13年には、プライム、ゴールデンの2冠(全日は日テレ)に輝いた。そして、14年からは再び日テレの天下が続いている。

 このように栄枯盛衰あるテレビ界で、なぜ日テレは、安定した強さを維持しているのだろうか。

 その強さの原点はフジを逆転した94年にあるだろう。日テレは、当時絶対的な強さを誇ったフジの番組を、実際に2週間分録画。番組内容を徹底的に比較するなど、泥臭く研究した。その上で、フジの真似をするのではなく、フジがやっていないことを次々とやっていく。

視聴意識を考え抜いて生まれた「フライングスタート」

 象徴的なのはフライングスタートだ。正時(00分)に始まるのが当たり前だった番組開始時刻を56分からなど数分早めることにしたのだ。それは、泥臭い研究で実感したお茶の間の視聴意識を考え抜いたものだった。同様に、前後の番組の視聴ターゲットも揃え、視聴が途切れないような編成にした。

 また、マーケティング意識を浸透させ、わかりやすさと丁寧さを重視する番組づくりを徹底。装飾されたテロップやワイプを“発明”し、その工夫を隅々まで張り巡らせている。もちろん、こうした過剰な演出は時に批判に晒されるが、そうした声を上げる一部の視聴者よりも、大多数の“沈黙の”意思こそ重視した。なぜなら彼らは、ただ見ない、という厳しい判断をするからだ。そうした視聴者に寄り添った番組づくりと番組編成が日テレの強さの基盤になっている。

「変えない」日テレ、「若い」テレ朝

 では、日テレは今後も盤石なのだろうか。18年4月の改編(番組の入れ替え)率は、全日3.1%、ゴールデン0.5%、プライム9.3%と、いずれも1桁という低さ。ドラマ枠・ミニ番組枠を除けば、前年10月期と、2期連続でプライム帯無改編という異例の事態だった。もちろん、これは好調ゆえにイジるところがないからである。そもそも日テレはたとえ数字が出なくても我慢して続けることで視聴習慣をつけさせ、高視聴率に導いてきた。だから「変えない」ことは日テレの強さの要因のひとつだ。だが、一方で、それは新しいつくり手の活躍する余地が少ないことを意味する。つまり世代交代が進まないということだ。王者陥落が世代交代の失敗から起こることは、過去の歴史が証明している。

 その意味で注目なのはテレ朝だ。『あいつ今何してる?』の芦田太郎を筆頭に、『激レアさんを連れてきた。』の舟橋政宏、『しくじり先生』(現在は終了)の北野貴章など、20代後半〜30代前半の若い世代の製作陣がチャンスを得て、成功している。前述のように12〜13年には一部時間帯で日テレを上回ったテレ朝は、もともと『相棒』や『ドクターX』など中高年層を中心に支持され、高視聴率を安定して獲れるコンテンツが豊富。これらと若い世代がつくるバラエティ番組が融合し、若い視聴者をも巻き込むことができれば、打倒日テレの最右翼になる。

日テレ式の「テレビ的」演出はいつまで持つか

 では、かつての王者フジはどうか。『めちゃ×2イケてるッ!』、『とんねるずのみなさんのおかげでした』という局を象徴する番組を終わらせ、路線を変更。その結果が出てくるのはもう少し先になるだろう。そんな中でも当時入社2年目の千葉悠矢が立ち上げたクイズ番組『99人の壁』がレギュラー化されるなど、若い芽は出つつある。

 かつて「テレビ的」といえば、それは即ちフジのことを指した。その「テレビ的」なものに対するアレルギーがここ数年強くなり、その結果としてフジが苦しんでいる。だが、いまや「テレビ的」とはテロップやワイプなど日テレ式の演出を指すことが多くなってきている。ならば、視聴者がそれにアレルギーを起こし始めるのも時間の問題かもしれない。

 テレビ東京が近年高い評価を受けているのは、日テレ同様、タレントに頼らない企画重視で勝負する(しかない)が、日テレとは逆にテレビ的な演出を極力排し、初期衝動のままつくっているように見えるからだろう。

 最近ではタイムシフト視聴を含めるなど、視聴率自体も時代とともに変化しつつある。テレビを取り巻く環境もネットの動画配信サービスの充実などもあり、激変している。「変わらない」ということが強みだった日テレもこうした時代の変化に柔軟に対応できなければ、その強さを維持することはできないはずだ。

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