異例の国会答弁 日銀・雨宮副総裁がため息をもらす理由

文春オンライン / 2019年3月25日 6時0分

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“日銀エース”の趣味はクラシック鑑賞 ©共同通信社

「3月14日の金融政策決定会合を直後に控え、“1万8000円発言”は衝撃的だった」

 市場関係者がこう指摘するのは、12日の国会に参考人招致された日銀の雨宮正佳副総裁(63)の答弁。「日銀が買い入れたETF(上場投資信託)は株価がどこまで下がれば簿価を下回るか」との質問に対し、「機械的に試算すれば、1万8000円程度を割ると簿価を下回る」と答えたのだ。いわば1万8000円が“株価防衛線”と明かしたようなもので、日銀にしては踏み込んだ異例の発言だった。

「雨宮氏は早くから日銀のエースと呼ばれ、金融政策を立案する企画畑を歩んできました。酒は飲まないものの、政治の人脈もあり、日銀マンらしくない野心家です。一方で若い頃は、家族の看病で閑職異動を願い出るような“情の人”でした」(日銀関係者)

「2%の物価目標」はどうなる?

 13年の黒田東彦総裁の就任に伴い、大阪支店長から企画担当理事に再就任。これまで異次元緩和の策定やマイナス金利政策を、黒田氏の“知恵袋”として主導してきた。だがここに来て、打つ手がなくなっているのが実情だ。

「残された有効な施策と言えば、ETFの買い入れ増額くらい。ただ、すでに日銀が保有するETFの残高は29兆円に達しています。リーマンショック級の暴落があれば、一気に財務の健全性に赤信号が灯る。しかも今回、“株価防衛線”を明かしたことで、海外のヘッジファンドなどに付け入る隙を与えてしまいました」(同前)

 かといって、マイナス金利の“深掘り”は収益環境の悪化を嘆く銀行界が猛反対。全銀協の藤原弘治会長(みずほ銀行頭取)は14日の会見でマイナス金利を「見直すべき時期」とし、2%の物価目標も「手段であって目的ではない」とまで吐き捨てた。

「黒田氏も内心では2%の物価目標という旗も降ろしたがっているようですが、降ろした瞬間に円高に振れることを恐れています」(同前)

 だが身動きが取れないまま時間だけが過ぎ、次の総裁が異次元緩和の尻拭いをする羽目になりかねない。財務省と日銀プロパーのたすきがけ人事という慣例通りなら、その役割を担うのは、雨宮氏だ。自らが蒔いた種を刈り取る日が刻一刻と近づき、時にため息を漏らしているという。

(森岡 英樹/週刊文春 2019年3月28日号)

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