“生粋の慶応ボーイ” セレッソ都倉賢「『諦めの悪い男』のあだ名が嬉しい」

文春オンライン / 2019年3月24日 17時0分

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今季からセレッソでプレーする都倉賢選手

 昨季J1で12得点。コンサドーレ札幌の絶対的エースとして、J2優勝、J1での上位進出に貢献してきた都倉賢。

 5年間を過ごし、強い愛着が生まれた北海道を離れ、今季セレッソ大阪へ移籍した。32歳にしてJ1キャリアハイを記録した男は、幼稚舎から慶応に通い、大学在学中にプロになる。しかしその後の道のりは決して順調ではなかったと本人も認める。

 そんな都倉に今季の決断、そしてサポーターから呼ばれる愛称について聞いた。(全2回の1回目/ #2へ続く )

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セレッソに感じた「コーヒーの香りがいいな」のようなワクワク

――5年間在籍したコンサドーレ札幌を離れて、スペイン人のミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が就任したセレッソ大阪に移籍しました。大きな決断をするなかで、何が決め手になったのでしょうか。

「僕は今年、33歳になります。自分の価値をシンプルに評価していただいたことは素直にうれしかったですし、対戦相手としてセレッソと戦ってみて魅力も感じていました。移籍の話をいただいて、セレッソに身を投じたらどうなるかってことを想像したときに結構ワクワクした自分がいたんです。これは別にコンサドーレではワクワクできないということではありません。去年もその前もこの5年間はコンサドーレでプレーすることを選択してきたわけですから。ただ、現役生活が残り少なくなってきたなかで、そのワクワク感の度合いを大切にしました。抽象的な表現になってしまいますけど、朝起きたらきょうは天気がいいな、とか、におってくるコーヒーの香りがいいなとか、それによって今日一日、ちょっと先の明るい未来を想像できて、何かワクワクを感じる、胸が高鳴る。セレッソから話をいただいたときに、そんな感情を持ったことを覚えています」

――プロのサッカー選手に移籍の決断はつきものです。

「確かに大きな決断ではあるんですけど、(言葉にするなら)一つの選択だと思うんです。たとえば目覚まし時計で起きる時間の設定を変えるのも選択ですし、日常を切り取ってみても選択の連続です。そういった選択を積み重ねてきて今があると思っています。その延長線上に、今回の移籍があったというだけ。普段、自分が選択してきたその積み重ねが、セレッソに移籍するという判断をさせたと僕は考えます」

途中出場のときはHPで差がつけられる

――開幕戦(2月22日)でアンドレス・イニエスタ、ダビド・ビジャら世界的なビッグネームを擁するヴィッセル神戸と対戦し、1-0で勝利しました。都倉選手は0-0の後半途中に出場し、攻守にハードワークして流れをチームに引き寄せました。札幌時代もそうでしたが、流れを呼び込むコツが何かあるように思うのですが。

「サッカーは11人でやるもの、そして当然ながら相手もいます。自分1人の力でどうこうできるものではありません。僕としては途中から出ていく場合、チームに何か影響を及ぼさないと意味がないと思っているし、逆に僕が先発で出ていたら途中から入ってくる選手にはそう期待します。途中から入る選手のメリットは、試合を客観的に眺められるという部分と先発の選手は90分間で100のエネルギーを使うことになるので、途中出場の選手とHP(キャラクターの体力値を意味するゲーム用語)で差が出てくる。逆に言うなら、このメリットを活かさないといけないんです」

――監督からの指示があるとしても、まずは自分で分析しておくことが大切になってくる、と。

「(神戸は)全体をコンパクトにして、ハイプレス、ポゼッションと、こちらとしては押し込まれた状態でした。そうなっている以上、自分が出たら相手のセンターバックを下げることは間違いなく求められます。裏に抜ける、または相手センターバックの間に入ることで彼らを前に出させないようにする。ここがまず1点。そして味方が苦し紛れにロングボールを出した場合でもしっかりとキープする。この2つを解決できれば、状況は変わるんじゃないかなと思いました。実際、そのイメージどおりにプレーして相手のラインを下げることはできました。ただこれは自分1人でやったことではなく、11人の歯車が合っていないとサッカーというものはやれない。うまく回すための、いいピースでなければなりませんから」

『諦めの悪い』はネガティブかもしれないけど……

――都倉選手と言えば、攻守にわたって全力を吐き出していくようなプレー。出場時間が何分であろうが、100%を出し切るスタイルです。昨季はゴール数の半分近くが後半アディショナルタイムでのゴールでした。「諦めの悪い男」と札幌サポーターから評されましたよね。

「何ごとにも全力で取り組む姿勢を、僕は一番大切にしています。勝利のために全力を尽くすことが、諦めの悪さにつながっている。世間的に『諦めの悪い』はネガティブな言葉なのかもしれないけど、僕にとってはポジティブな意味だし、すごく気に入っています」

――セレッソには柿谷曜一朗選手、清武弘嗣選手と、パスセンスの光る選手もいます。開幕戦も柿谷選手のパスから決定的な場面がありました。シュートは外れましたが、今後このような場面が増えていくと思うのですが。

「名前の挙がった2人は本当にスペシャルな選手だと思うし、自分としてはパスを引き出せる準備、予測をしっかりしていきたいですね。ボールをもらう前の動きでクオリティーを上げて、パスを出したくなるような動きができたらいいな、と」

「僕は速度は遅かったかもしれないけど、その分崩れにくい」

――都倉選手はここまで順風満帆なプロ人生を歩んできているわけではありません。慶応高から慶応大に進学するタイミングで川崎フロンターレU-18からトップ昇格。しかし出場機会に乏しく、J2ザスパ草津に移籍。ここでの活躍が認められて神戸に移籍して再びJ1の舞台に戻りましたが、ここでも活躍できずに札幌時代までブレイクを待たなければなりませんでした。J2で2ケタゴールを3シーズン連続で叩き出し、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が就任した昨季にJ1自己最多の12得点をマークしました。

「僕自身、理詰めでサッカーをやってきたつもりです。これまではたとえ疑問を感じたとしても、それを抱えながらも結果を出さなきゃいけないというところで難しさがありました。ミシャ(ペトロヴィッチの愛称)は理論から積み上げていくスタイルだったので、僕としてはガッツリはまったんです。チームビルディング、個人への要求についても、一つひとつが理にかなっていて、疑問を感じることもありませんでした。目指す方向に進んでいけば、チームも自分も結果を出せる。そんないい循環がありました。ミシャのおかげでサッカー観の幅がすごく広がった。それはロティーナも同じです。毎日が凄くいい勉強になっているし、刺激を受け、成長できているなという実感を持つことができています」

――自分なりにロジックを積み上げてきて考える力が身についたからこそ「ガッツリはまる」ことが可能だったとも言えます。刺激的な外的要素を目いっぱい受け入れられるほどの内的要素が広がったのだ、と。

「若いときにパーンとはねて一度挫折してしまうと、活躍できる舞台になかなか戻れないという話はスポーツの世界でよく聞きますよね。でも僕の場合、時間を掛けて積み上げていった分だけ崩れにくいというか、きちんとした実をつけることができているのかなという気はしています。その速度は遅かったかもしれないですけど(笑)」

(#2に続く)
写真=山元茂樹/文藝春秋

◆#2 セレッソ・都倉賢が「Twitterもインスタも積極的にやる理由」
https://bunshun.jp/articles/-/11161

とくら・けん/1986年6月16日生まれ。東京都出身。身長187センチ、体重80キロ。幼稚舎から慶応に通う。2005年、慶大に入学。同年川崎フロンターレのトップチームに。ザスパ草津(現群馬)、ヴィッセル神戸を経て2014年、コンサドーレ札幌に完全移籍。2016年、J2でリーグ2位の19得点、J2優勝。18年にはJ1で12得点を記録、チームのJ1・4位進出に貢献。今季セレッソ大阪に移籍、9番を背負う

(二宮 寿朗)

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