「羽生の手を震えさせた男」渡辺明

文春オンライン / 2019年5月4日 11時0分

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渡辺明は、王将・棋王の二冠になった ©文藝春秋

 竜王位を弱冠20歳で獲得した渡辺明。彼はAIと真剣勝負を行った数少ないタイトルホルダーだ。2007年3月に将棋ソフト・ボナンザと対決。対局中「強すぎるナ」とボヤく一場もあったが、終盤で見落としをしたAIの隙を突いた渡辺が勝利した。

 翌年、挑戦者に羽生を迎えた竜王防衛戦は永世竜王を賭けた因縁の対決と注目された。遡ること5年前、19歳の渡辺は羽生王座に挑戦。五番勝負の対局終盤で羽生の手が震え、まともに駒を持てなくなった。この時は敗れたものの、渡辺は最強棋士を震えさせた男として記憶されるようになる。

 さて因縁の竜王戦、渡辺は緒戦から3連敗。だが第四局で終盤、玉が敵陣へ進む「入玉」と呼ばれるドローゲーム寸前にまでもつれ、羽生に辛勝。続く五局、六局と連勝し最終局を迎えた。戦いは何を指しても答えが出ない手が乱舞し、考慮時間一分を争う終盤まで勝敗は五里霧中。観戦棋士も「わからない、発狂する」と叫んだ。激戦を制したのは、「『勝ちたい』という強い気持ちが生んだ極限の集中力がこの手を選ばせてくれたのかもしれない」と語る渡辺だ。将棋を人間のミスと先の読めない怖さのゲームと定義した渡辺は今も打倒羽生の最右翼である。

わたなべあきら
1984年、東京都生まれ。永世竜王、永世棋王。理論派として知られ、指南書や棋士の心構えを書いたものなど著書多数。

(岸川 真/週刊文春 2018年5月3・10日号)

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