「ワイルドな憲法審査を進めていかないといけない」消費税増税先送りだけじゃない、萩生田氏の失言4選

文春オンライン / 2019年4月25日 6時0分

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萩生田光一自民党幹事長代行 ©時事通信社

 安倍晋三首相の側近中の側近、萩生田光一自民党幹事長代行の数々の発言が波紋を広げている。一体どのような思惑があるのだろうか? その反響とともに、あらためて振り返ってみたい。

萩生田光一 自民党幹事長代行
6月の日銀短観で、この先は危ないと見えてきたら、崖に向かってみんなを連れて行くわけにはいかない。違う展開はある」
共同通信 4月18日

 4月18日、自民党の萩生田光一幹事長代行がインターネット番組『真相深入り!虎ノ門ニュース』(DHCテレビ)に出演し、10月に予定されている10%への消費税増税を先送りする可能性を示唆した。増税先送りは「まだ間に合う」と指摘した上で「その場合は国民の信を問うことになる」と明言。衆参ダブル選挙の実施に含みを持たせた。

 総裁特別補佐、官房副長官などを歴任している萩生田氏は、安倍晋三首相の側近中の側近。落選中には安倍首相の腹心の友、加計孝太郎氏率いる加計学園グループの千葉科学大学危機管理学部で名誉客員教授も務めていたほど。

 萩生田氏は「今まで(消費税増税を)『やります』と言い続けた前提は、景気が回復傾向にあったから。ここへきて、ちょっと落ちていますよね。せっかく景気回復をここまでしてきて、腰折れして、またやり直しになったら、何のための増税かということになってしまう」と、景気が「落ちている」のをあっさり認めて上記の発言へと続いた(プレジデントオンライン 4月19日)。アベノミクスの破綻を自ら認めた格好だ。

政権幹部たちは慌てて否定

 与野党は萩生田氏の発言を「安倍首相の意向を忖度しての観測気球」と受け止めた(東洋経済オンライン 4月19日)。これまで安倍首相は2回の増税延期を国政選挙の直前に表明し、いずれも圧勝してきたからだ。夏の参院選に向けて自民党内の危機感が高まっている中、3度目の増税延期から衆参ダブル選挙へなだれ込むというシナリオが浮上している。立憲民主党の福山哲郎幹事長はツイッターで「増税延期は私たちがかねてから主張しており、当然だ」とした上で「われわれとしては、解散を堂々と受けて立つ用意がある」と発言した(4月18日)。

 一方、菅義偉官房長官は18日の記者会見で萩生田氏の発言をすぐさま完全否定。「リーマン・ショック級の出来事が起こらない限り、10月に引き上げる予定だ」とあらためて強調した(読売新聞オンライン 4月19日)。世耕弘成経産相も「リーマンショック級のことが起きないかぎりは、法律に定められているとおり、10月1日から上げていくということだ」と打ち消している(TBS NEWS 4月19日)。麻生太郎財務相は「(増税準備に取り組んでいる)企業は迷惑している」と述べ、「日銀短観という言葉を知っていたか」と経済政策に携わった経験が少ない萩生田氏を皮肉った(時事ドットコムニュース 4月19日)。

萩生田光一 自民党幹事長代行
「安倍総理大臣と意思疎通したわけではなく、政治家としての私個人の見解だ」

NHK政治マガジン 4月19日

 党の内外の反応を受けて、萩生田氏は19日に記者会見を開き、「政府の方針に異議を唱えたつもりもない」「10%への引き上げをお願いする基本姿勢に変わりはない」などと釈明した。また、「国民の信を問うことになる」と発言したことについては、「仮に国民と約束した消費増税を凍結や先送りするなら、過去の例にならって何らか国民の了解を得る必要性があるのではないかと言及した」と述べた。

 22日、萩生田氏と同席して記者会見に臨んだ自民党の二階俊博幹事長は、「個人的見解で、相談や了解があったわけではない」と不快感を表明(時事ドットコムニュース 4月22日)。公明党の山口那津男代表は「到底論外」とした上で、萩生田氏の「国民に信を問う」という発言については「信を問う資格があるのは総理だけ」と切り捨てた(FNN PRIME 4月22日)。日刊スポーツの政治コラム「政界地獄耳」は萩生田氏の発言について「首相気取り」「少しはまともな観測気球を上げられないものか」とこき下ろしている(4月23日)。

「萩生田さんは安倍首相の『スポークスマン』に等しい」

 しかし、繰り返しになるが、萩生田氏の発言が「個人の見解」だと考える人は少ない。政治評論家の本澤二郎氏は「萩生田さんは安倍首相の『スポークスマン』に等しい存在。『萩生田さんの発言=安倍首相のご意向』と考えるべきです」とコメントしている(日刊ゲンダイ 4月20日)。

 二階氏は萩生田氏と反目していると言われているが、衆参ダブル選挙に関しては、「総理が『やる』と言えば、我々は総理の下にあるのですから、当然(衆参W選を)やりますよ。総理の判断に従うのは当たり前のことです」と断言している(『文藝春秋』5月号)。萩生田氏の発言の背景には、安倍首相ならびに首相官邸の意図が見え隠れしている。

萩生田光一 自民党幹事長代行
「新しい時代になったら、自民党は少しワイルドな憲法審査を進めていかないといけない」

NHK政治マガジン 4月18日

 こちらも同じ『真相深入り!虎ノ門ニュース』での発言。同番組は作家の百田尚樹氏、タレントのケント・ギルバート氏らがコメンテーターとして出演中。過去には安倍晋三首相や自民党の杉田水脈衆院議員も複数回出演したことがある。萩生田氏は5回目の出演だった。よっぽど居心地が良いらしい。

 衆議院の憲法審査会が、野党との調整がつかず、開催の見通しが立たないことについて萩生田氏は「この状況を国民は望んでいない」「やるしかないところまで来ている」と断言。「新しい時代になったら、自民党は少しワイルドな憲法審査を進めていかないといけない」と言い放った。与野党の合意なく、憲法審査会の開催を強行する考えを示したものだ。

 萩生田氏は「ここまで丁寧に我慢してきた。令和になったらキャンペーンを張るしかない」とも発言している(TBS NEWS 4月18日)。新元号が憲法改正と何の関係があるのだろうか? 

野党は猛反発、謝罪へ

萩生田光一 自民党幹事長代行
「特定の野党を非難したわけではなく、わが党の話なので撤回はなじまない」

日本経済新聞 4月19日

 萩生田氏の発言に野党は猛反発し、18日も憲法審査会は開催されないまま。結局、萩生田氏は19日、「野党の皆さんに不快感を与え、結果として(18日に)協議が成立しなかった。憲法審査を前に進めていただきたいという私の本意とは違う」と謝罪した(時事ドットコムニュース 4月19日)。

 しかし、萩生田氏は同時に「撤回はなじまない」と発言を撤回しないことを強調している。一応謝罪はしたが、「ワイルドな憲法審査」はやるということなのだろう。

安倍晋三 首相
「令和元年という新しい時代のスタートに立ち、この国の未来像について真正面から議論を行うべきときに来ている」

産経新聞 4月23日

 23日、超党派の国会議員らでつくる新憲法制定議員同盟が大会を開き、外遊中の安倍首相がメッセージを寄せた。

「平成は自衛隊への国民の信頼が揺るぎないものとなった。違憲論争に終止符を打つことが政治家の責任だ」「教育は全ての子供たちに真に開かれたものとしなければならない」と強調した安倍首相は、あらためて憲法改正に関して自衛隊明記と教育の重要性を強調。さらに新元号と憲法改正を結びつけて、憲法改正に関する議論を呼びかけた。

 萩生田氏の「令和になったらキャンペーンを張るしかない」と安倍首相の発言はピタリと符号している。相変わらず新元号と憲法改正の関連は不明だが、「萩生田氏の発言=安倍首相のご意向」という考え方は間違いないだろう。消費税増税の延期と衆参ダブル選挙も憲法改正へのステップなのかもしれない。

(大山 くまお)

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