ゴールデンボンバーの新曲「令和」 その仕事ぶりはもっと評価されていい――近田春夫の考えるヒット

文春オンライン / 2019年5月16日 17時0分

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絵=安斎肇

『令和』(ゴールデンボンバー)/『ハルノヒ』(あいみょん)

 なんだかだいいつつ、ゴールデンボンバーが、新元号の発表のまさに直後『令和』を発表してみせた行動の機敏さに内包される“ユーモアのセンス”については、もうちょい、世間の評価がなされてもよかったのではなかったか。とかいいつつ、俺もちょっと斜に構えていた部分はあった。

 そもそも、そんな急ごしらえでは大したものも出来上がるまいと、高を括っていた。そしてもうひとつ。まァ偏見/先入観のようなものもなかったのかといえば、嘘になる。

 彼等に対しては私は、音楽そのものより、戦略/アイデアの奇抜さで生き抜いて来たイメージが強い。なのでこの『令和』配信を記事で知ったときも、サウンドなどは適当に済ませ歌詞で笑わせようとする、それこそ“昭和40年代の深夜放送”あたりがお似合いの、コミックフォークみたいなものでもって“お茶でも濁す”のだろうと、勝手に決めつけていたのだった。

 ところが開けてビックリ! 予想とは全く違う、きちんとアレンジの施された、EDM風味も本格的な“アゲアゲのユーロビート”に、見事振付も決まって、要するに相当前から用意周到に準備のなされていたことのよくわかる、決してやっつけではない、丁寧な作りの“商品”だったのだ。

 てな訳で反省しきりの私なのだが、ただ、そうした“秀でた企画力”がそのまま“楽曲の魅力”に繋がるものかというと、そこがなかなか一筋縄ではいかないのもこの商売の面白さだろう。思い出すのが、せんだって取り上げた氷川きよしの新譜なのであるが、今回も“気持ちは分かるんですけどォ”系なのか? という気に、少しなっていた。

 つまりはこの『令和』から“話題性”を差っ引いたときに残るものは何なのかの話にもなるが、楽曲を支える様々な実質的部分は――例えばボーカルに施す“オートチューン”の塩梅にしろ、シンセ音色のセレクト/微調整にしろ――もう、不満の一言もないクオリティである。だがそのように音から歌詞から絵から、いちいちが申し分ない“プロ仕様”の『令和』なのだけれど、ひとつの楽曲として聴いたとき、若干、新鮮味のなさを覚えてしまったのも事実。で、その理由を考えてみたのだけれど、結局そうした要素間にてケミストリーは生じず、足し算で終わってしまったってことなのかなぁと……。

 なのだけれど、そんなことはこの際どうでもいい問題だと最終的に俺は気付かされた。本来、一流広告代理店が商機とばかりやって見せなければならぬようなことを、アッケラカン! と彼らは先に実現させてしまったのだから。評価はひとえにそこにあろう。蓮舫議員の逸話ではないが、世界には、確かに一番目以外には意味をなさぬものもあるのだということを、ここまでわかりやすく示してくれた、その仕事ぶりに座布団10枚。

 あいみょん。

 この手堅さ満開の音が、若者達の圧倒的な支持を得ているってことの意味は考えたい。

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

(近田 春夫/週刊文春 2019年5月16日号)

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