新天皇陛下が特別寄稿で吐露していた「子供時代」の複雑な心情

文春オンライン / 2019年5月12日 6時0分

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「皇太子殿下は平安時代の牛車の研究をご熱心にされているらしい」――しばらく前から歴史研究者の間でささやかれていた噂は本当だった。

 新天皇陛下は即位の半年ほど前、秘かに執筆されていた論文を特別寄稿されていた。掲載されたのは、霞会館(旧華族会館)が2018年12月に出版した『御料車と華族の愛車』。非売品のためこれまで世間では知られることがなかったが、この豪華本の巻頭に新天皇の論文「前近代の『御料車』――牛車と鳳輦・葱華輦――」が掲載されている。

街を自由に歩きたくとも、「それができないうらめしさ」

 冒頭に綴られているのは、子供の頃に感じていた御料車に対するアンビバレントな心情だ。

〈車は、自分を短時間で遠いところへ連れて行ってくれる有り難い存在であった。一方で、子供時代の私は、街を自由に歩きたくても、車があるためにそれができないうらめしさを、少しばかり車に対して抱いていたことも確かである〉

 陛下と言えば、水の研究や海や川の水運のご研究が有名だ。学習院大学では中世瀬戸内海の海運について、留学先のオックスフォード大学では、テムズ川の水上交通史について研究をまとめられている。だが実は20年ほど前から学習院大学史料館の客員研究員として平安時代から室町時代にかけて貴族が使っていた「牛車」の研究を続けられていた。「前近代の御料車」はその研究をまとめたものなのだ。

 論文の冒頭は、牛車に興味を持つようになったきっかけからはじまるが、後半では、天皇と上皇の乗り物の違いについても興味深い指摘をなさっている。

 御代替わりのこの時期にこのような論文を公表されたのは偶然だったのだろうか。新天皇の素顔を知るうえで必読の読み物であることは間違いない。

 詳しい内容は、友納尚子氏による「新天皇皇后『知られざる履歴書』」(「 文藝春秋」6月号 )に記されている。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2019年6月号)

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