“鉄道建設ラッシュ”の大阪 奈良~新大阪の新路線「おおさか東線」は誰が乗っている?

文春オンライン / 2019年5月13日 6時0分

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3月に新しく開通した「おおさか東線」。奈良~新大阪を約1時間で結ぶ

 今年3月、大阪にとある新しい鉄道路線が誕生したと話題になった。「おおさか東線」の新大阪延伸である。大阪のみならず、東京などでもニュースになっていたから耳にしたことがある人もいるだろう。なんでも、おおさか東線の新大阪延伸によって奈良と新大阪が乗り換え無し約1時間で結ばれるようになったのだとか。そう聞いて、筆者もなるほどと納得して「便利になったのだなあ」などと思ったものである。

「おおさか東線」どんな人が乗っている?

 ただ、よくよく考えてみると、奈良と新大阪が乗り換え無しで結ばれるというのはどこまで便利なのだろう。東京方面から奈良観光に行くならば京都駅で新幹線からJR奈良線か近鉄京都線に乗り換えれば済むこと。奈良市民にとっても東京方面に行く際はルートが真逆になるだけで同じことだ。わざわざ新大阪まで出向く必要はない。それにそもそも新大阪と奈良を直通で結ぶ列車は1日4往復の「直通快速」だけ。平日は朝の新大阪行と夕方・夜の奈良行という通勤を意識したダイヤ設定になっている。

 なんとはなしに「便利になった」と思わせるおおさか東線の新大阪延伸だが、実際はどうなのだろうか。どんな人が乗っているのか、そしてどのような路線なのか。百聞は一見にしかず、というわけで平成も残すところ数日という4月のとある平日、実際におおさか東線に乗ってみた。朝7時35分奈良駅発新大阪行の「直通快速」である。

 おおさか東線に乗ってみた、と言ってもこの「直通快速」は最初は大和路線(関西本線)を走る。ほとんどの列車は天王寺駅を経由して大阪環状線に直通、そのまま大阪駅や京橋駅までを結んでいる。それに対して「直通快速」は久宝寺駅からおおさか東線に入るのだ。

 

スーツ姿の通勤客で満員状態

 そういうわけで、朝の奈良駅。まだ件の「直通快速」がホームに入ってくる前から、ずいぶんとたくさんの人が行列を成していた。デカいスーツケースを抱えた外国人観光客もいたが、ほとんどがスーツ姿の通勤客だ。やっぱり新大阪まで行くんですか?と聞いてみたいところだったが、通勤途中でいくらか殺気立つ通勤客にはあまり気楽に声をかけられるものではない。

「直通快速」が入線するとホーム上の人たちがこぞって乗って早くも満員状態。出発してからも奈良盆地にある郡山駅や法隆寺駅などでさらに通勤客が乗り込んで、文字通りの満員電車は大阪府内を目指す。そして久宝寺駅からはいよいよおおさか東線に入ってゆく。

 久宝寺駅から放出駅までのおおさか東線は10年以上前、2008年に開業した区間だ。全線が高架で、車窓からは東大阪市内の住宅地。住宅地の隙間を埋めるように工場が見えるから、“町工場の街”東大阪らしい光景ということだろう。途中には近鉄奈良線と接続するJR河内永和駅や大阪メトロ中央線と接続する高井田中央駅に停車して、車内の乗客は新大阪駅に向けて増えるばかりであった。

放出、鴫野……「難読駅」が続く

 そして学研都市線(片町線)と接続する放出駅へ。これ、“はなてん”と読む。地元の人でもなければとてもじゃないけれどマトモに読めない難読駅だ。お隣の鴫野駅も続けて難読で、“しぎの”と読むのだが、こういう読めない駅が続くというのも大阪らしいといえば大阪らしい。放出駅では学研都市線からの乗り換え客をさらに詰め込んで、いよいよ今年3月に延伸された新規開業区間へ入ってゆく。おおさか東線には新たに5つの途中駅が生まれた(鴫野駅までは学研都市線と並行して走る)が、「直通快速」はすべて通過してひとっ飛びに新大阪駅だ。

 真新しい高架の上を走るおおさか東線「直通快速」は、沿線に建設中のマンションも見える住宅地を駆け抜けて、途中で淀川と神崎川を渡る。このうち神崎川を渡る手前で、東側に別の線路が分かれてゆくのが見える。「直通快速」が走る線路はピカピカの新築なのに、分岐する線路のほうがどうにも古めかしい。いったい、このナゾの線路の正体はなんなのか――。

「おおさか東線」のルーツは貨物路線だった

 実は、この神崎川手前で分かれていく古い線路こそ、おおさか東線のルーツを教えてくれる線路なのである。今でこそおおさか東線という名前で旅客電車が行き交っているこの路線、もとを辿れば貨物列車のための路線であった。その名も「城東貨物線」。東海道線沿線にある吹田貨物ターミナルから南に分岐して、新大阪も大阪も経由せずに大阪市南西部にある百済貨物ターミナルまで(正確には百済貨物ターミナルに近い平野駅)を結んでいる。

 東海道線と関西本線を大阪市の中心部を通らずに連絡して貨物輸送を効率化するために建設された路線で、1930年代に開業した。その後、長らく貨物列車だけが走る路線であり続けたが、1990年代に入って旅客路線化が具体化して改良工事が始まり、2008年に放出~久宝寺間が、そして今年に入って新規建設区間を含めて新大阪~放出間が旅客路線の「おおさか東線」として開業したというわけだ。こうしたもともとの貨物路線が旅客路線化したというあたり、東京ならば湘南新宿ラインが走る山手貨物線や武蔵野線をイメージして貰えればわかりやすいかもしれない。

 と、少々ややこしい説明をしてしまったが、ともかくおおさか東線はもともと貨物列車専用の路線だったところを旅客列車も走れるようにして誕生、さらに新大阪まで延伸したというわけである。だから今でも貨物列車が走っていて、神崎川手前で東に分かれる線路のほうを通っている。ナゾの線路は、そうしたおおさか東線のルーツを辿る線路であった。

「今までは大阪駅で乗り換えだったので、便利になりました」

 さて、このあたりで「直通快速」の旅に戻ろう。と言っても、神崎川を渡れば南吹田駅を通り過ぎて、すぐに新大阪駅に。7時35分に奈良駅を発車して、新大阪着は8時31分。満員の通勤客がどっと降りて、ほとんどがそのまま改札口を出て新大阪駅周辺のオフィスビルへと消えていった。

「奈良方面から新大阪だと今までは大阪駅まで大和路快速に乗ってきて乗り換えだったので、便利になりましたよね。混雑具合は……あまり変わらないんじゃないかな」とは新大阪駅で会社へ急ぐ通勤客の話である。

 おおさか東線、新幹線接続路線というよりは“通勤路線”としての意味合いが強いようだ。では、新たに開業した区間の沿線はどうなのか。せっかく新大阪駅に着いたが少しだけ戻って途中駅の様子を見てみることにした。

「このあたりは電車がなかったから、嬉しいですね」

 新たに開業した駅は南吹田・JR淡路・城北公園通・JR野江(鴫野駅は学研都市線との接続駅で、新規開業ではない)。そのうち、JR淡路では阪急京都線、JR野江では京阪本線、地下鉄谷町線と乗り換えることができる(少し離れているので数分は歩かなければならないけれど)。

「阪急電車だとどうしても梅田まで出てから乗り換えないと新大阪に行けなかったから便利ですよね。それにおおさか東線で久宝寺まで行くと大和路線で天王寺まで行けるんですよね。一気に行動範囲が広がった、っていう感じがします」(JR淡路駅を利用していた男性)

「このあたりって電車がなかったから、嬉しいですね。これまでずっとバスやったから」(城北公園通駅近くを散歩していた男性)

 沿線には住宅地が続くおおさか東線の新規開業区間。ずいぶん歓迎されているようだ。JR西日本に聞いても、他社路線との接続が多いことからそうした路線沿線に暮らす人たちの新大阪アクセスがかなり便利になるという効果を期待しているようだ。

 新しい路線が生まれれば、その沿線の街がますます賑わうのは世の常というもの。今後、おおさか東線はさらに大阪駅北側の再開発エリアまで延伸して北梅田駅ができる予定だという。他にも大阪ではミナミとキタを結ぶ新路線「なにわ筋線」や2025年の万博開催にあわせて会場となる夢洲方面への地下鉄延伸など、新たな鉄道の開通予定が目白押し。もしかしたら、鉄道においていま最も注目の町は大阪なのだろう。そしてその象徴のひとつが、「おおさか東線」なのかもしれない。

写真=鼠入昌史

(鼠入 昌史)

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