内定辞退続出で“トホホな”人事部 就活生がメールだけで辞退すべきでない3つの理由

文春オンライン / 2019年5月21日 6時0分

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今年度の就職活動は6月1日が建前上の「選考解禁日」。この日に内定が出る就活生も多いと見られる ©iStock.com

 就活生が企業からの内定を辞退する場合、次のどれが正しいのだろうか? あなたはどうお考えだろうか?

(1)内定辞退のメールを人事に送るだけでよい
(2)電話した後、企業に出向き、お詫びして辞退する

 日経産業新聞の記事「内定辞退の正しい伝え方、『直接会って、まず感謝』を」就活探偵団(19年5月15日)が話題となっている。ツイッターなどSNSでは大炎上状態だ。

 私、福島直樹は、就職コンサルタントとして長年学生の就活を支援してきたが、その経験から私見を述べたい。

「人事は忙しいから、メールで断ってくれ」は本当か?

「企業はお祈りメールで学生を落としているんだから、就活生がメールで断るのは当然だ」
「労働契約の場なのだから、感謝とか、お詫びとか、バカらしい」
「人事は忙しいから、むしろ会社に来ないでほしい。メールで断ってくれ。この記事は勘違いしている」

 このように、『直接会って』を勧める日経産業新聞の記事を批判する意見がツイッターなどでは大勢を占めている。確かに間違ってはいないし一理はある。

 しかし、私の就活生へのアドバイスはこうだ。

(1)    就活生から人事に内定辞退のメールを送る
(2)    そのうえで就活生から電話をして内定辞退のお詫びをする
(3)    内定辞退を想定済みの人事の場合…「辞退を承知しました。来社不要です。これで大丈夫です」で済む
(4)    想定していない人事の場合…「来社して話を聞かせてほしい」と言われるだろう
(5)    上記(4)の場合は企業に行き対面で内定辞退を告げる

 つまり、就活生は内定辞退をする場合、自ら企業に電話をし、必要であれば「会社に直接出向く」べきなのだ。

売り手市場で内定辞退が増えている

 私のアドバイスが有効な理由を説明する前に、今、内定辞退が話題になっている背景から説明したい。

 ここ数年、一部人気企業を除き、売り手市場が続いており、学生優位な状況が続いている。就活解禁ルールの変更もあり、「キャリタス就活」の調査では、5月1日時点での内定率は51.1%(前年42.2%)と昨年より約10ポイントも高い。

 また、リクルート就職みらい研究所「2018年9月1日時点 内定状況」就職プロセス調査(2019年卒)では、内定解禁日である6月1日時点での内定辞退率は、32.8%(17年卒)→36.5%(18年卒)→43.2%(19年卒)と年々、内定辞退を経験した学生が増えていることがわかる。

4月1日の入社式をバックレるケースも……

 今年の就活生も内定を得やすい状況にあり、内定辞退も増えてしまう。ある有名企業の人事は言う。

「事前に、内定辞退をする場合は電話をください、と伝えています。でもメールで断ってくる人もいます。そんな人に電話しても、出てくれないことがありますね。世間では、メールも電話も何も連絡がないまま、消えてしまう学生もいるようですから、メールをもらえるだけウチはマシかもしれません」

 実はもっとひどい対応をする就活生もいる。ある「不」人気企業の人事担当者から次のような話を聞いたことがある。

「一番緊張するのは4月1日の入社式です。このタイミングでドタキャンする人もいます。本人の携帯に電話しても繋がらないし、自宅に電話して親に話をしても、本人の問題ですから、と相手にしてもらえない。我々が役員から怒られるわけで、これだけは何としても避けたい」

 実にトホホな状態だが、このような就活生の対応は褒められたものではないだろう。

 では先に述べた「電話をして、必要があれば直接企業に行くべき」という私のアドバイスが有効である理由を3点、述べたい。

(理由1)成りすまし防止のため、本人確認をしたい

 まず企業側が就活生に直接会いたいと考えるのには2つのワケがある。1つ目は、就活生の気持ちを翻意させたいから。そして2つ目は、成りすまし防止のため本人確認をしたいからだ。

 例えば、A君の内定を快く思わないB君が、A君に成りすまして内定辞退の電話をし、A君が非常に困った、という話を私は聞いたことがある。

 もちろんA君は無実であるが、「A君は、周りから、よく思われていない人物なのかな?」とネガティブな印象を人事から持たれてしまうだろう。これはあまり得策ではない。

「それなら電話よりメールの方が良いのではないか?」

 あなたはそう考えるかもしれない。ところがメールも危険だ。私は成りすましメールも目の当たりにしたことがある。ある男子が、女子のPCメールに成りすまして何本もメールを送信し、その女子がショックを受けていたのだ。

 そこそこのIT技術があれば、このような嫌がらせも不可能ではない。就職内定は人生に関わる重要な分かれ道だ。よって「念のため直に会って確認したい」と企業が考えることに合理性はあるのだ。

(理由2)辞退先の企業が、将来あなたの取引先になる可能性も 

 例えば、宣伝部志望で飲料メーカーSから内定を得ていたが、辞退して、広告D社に入社した場合を想定してみよう。

 Dに入社後、営業はもちろん、制作、マーケティングなどでも、Sの担当になる可能性はある。その時に、Sの社内で、あなたについて悪い噂が流れていては、仕事がスムーズに進むはずがない。このような将来のリスクを考えれば、できるだけ印象の良い丁寧な内定辞退をしておくべきだろう。

(理由3)競合他社同士が仲がよいケースもある

 例えば、自動車T、自動車Nを蹴って自動車Hへ就職したとしよう(同一業界内で多数の企業を受ける就活生は非常に多い)。

 競合他社同士はライバルだから仲が悪い、と就活生は考えるかもしれないが、そうとも言えない。実はライバルにも関わらず、クルマ好きの社員同士が集まって仲良く交流していることもあるのだ。ここでもリスクがある。

「おたくの新人C君は、うちを内定辞退したけど、ひどい断り方だったよ。人として信用できないね」

 もし、こんな風に言われたらC君の社内の立場はあまり良いものにはならないだろう。仮に本人は覚えていないとしても、ひどい仕打ちをされた方は、いつまでも覚えているものだ。

印象のよい内定辞退は就活生自身のため

 このような理由を踏まえれば、出来るだけ印象のよい内定辞退をした方が就活生の為になる。ゆえに就職支援の世界や、大学キャリアセンターで、日経産業新聞の記事のような指導が行われることには合理性があるのだ。

 電話をしたり、直接会って内定辞退をすることは、就活生にとって面倒だし、「うざい」し、苦しい気持ちになる。反対に、メールなら嫌なことから逃げることができる。

 でも私は個人的に、逃げないでほしいと思う。なぜなら将来の仕事で、面倒なことから逃げてはいけない時があるからだ。肝心な時に逃げていると周りから信頼されなくなる。逆に逃げずに対応すれば成長できることが多い。

「今時、就活生がメールで内定辞退するのは当然だ」
「人事は忙しいからメールで断るべき」

 世間には、このように言う人たちがいる。その考えにも一理あるかもしれない。しかしひとつ言えることは、彼らは就活生であるあなたの将来に関心はないということ。ぜひ無責任な意見に流されないで欲しい。

(福島 直樹)

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