いくら資産があれば投資をしてよいのか?――村上世彰が西原理恵子に教える初心者のための「投資教室」

文春オンライン / 2019年6月20日 6時0分

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“生涯投資家”の村上世彰先生 ©文藝春秋

「週刊文春」読者のために特別開講した村上世彰先生の「投資教室」。生徒役は、漫画家の西原理恵子さんです。初心者にお薦めの銘柄は? トランプ・ショックは怖くない? 高齢者が気をつけるべき点は? ドル預金ってどうなの? 西原さんが村上先生に色々聞いてみました!

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西原理恵子氏が21歳の息子と投資にチャレンジ

村上 その後、日経225はいかがですか?

西原 村上さんに勧められるがまま昨年10月に780万円分買いましたが、年末にドーンと下がっちゃって、自分の引きの弱さを再確認しました。

村上 トランプ・ショックですね。トランプが米中貿易戦争を仕掛けたり、為替介入に乗り出したりしましたから。日本の株式市場全体の時価総額で見れば、2カ月で100兆円が吹っ飛んだことになります。

西原 親子で株を買ってから、トランプ政権と日本のことにすごく興味を持つようになりました。息子は留学経験があるので、CNNのニュースなんかを同時通訳で教えてくれたりして。「次のケンカでまた落ちるな」なんて言ってますね。前は親子の会話なんて、猫の話ぐらいでしたけど(笑)。

村上 そこからまた盛り返して、5月5日のトランプ大統領の「対中関税を25%に」というツイートでまたガクンと下がりましたよね。

西原 だから、今だいたいマイナス30万円くらいです。

 様々なギャンブル体験を重ねてきた“生涯漫画家”西原理恵子氏(54)が今回、21歳の息子と初めての投資にチャレンジした。先生役は“生涯投資家”村上世彰氏(59)。初心者向けの商品として西原氏が村上氏に勧められたのが、日経225だった。

株価を左右するのはすべてマインド

村上 初心者はまず日経225やTOPIXから入るのがいい。225は東証一部上場の代表的な225銘柄、TOPIXは東証一部全体を対象にしていますが、そう変わりません。両方とも日本経済全体に投資をするような商品。つまり日本経済が成長すれば、その分、得をするんです。

西原 でも、トランプさんのせいで下がっていて。

村上 株価を左右するのはすべてマインドです。だから米中関係が悪化したりして、世界が悪くなるとみんなが思うと、株価も下がっていくんです。ただ、その下がり方の幅はだんだん小さくなっている。それを“織り込む”と言います。

「米中戦争はあり得ない」という予想が株価に反映

西原 織り込む?

村上 うん。米中戦争なんてやっぱりあり得ないから、今後、6カ月から12カ月かけて何らかの形で解決に向かうだろうって。その予想が反映された株価になっています。だから、僕は2020年秋まで我慢してって言いましたよね?

西原 アメリカの大統領選挙ですね。

村上 そう。トランプさんは政治家の前にビジネスマンです。だから最後のゴールが頭の中に描かれているはず。このまま米中関係が悪化して、株価が下がっていくと、ビジネスマンであるトランプにとっても困るわけです。

西原 自分が損することはしないと。

村上 来年夏までは下がるかもしれないけど、どこかで習近平と手を握るようなターニングポイントが来ると思う。それならそれでいいし、逆に株価が低迷してトランプが負けるようなら、大統領が代わることで株価はプラスに転じます。トランプが勝っても負けてもアメリカ経済は良くなる。

西原 でも、日本の経済は将来、人口も減るし、大丈夫なんですか?

村上 日本の中だけで考えてちゃいけない時代ですよ。例えば、トヨタがどこで車売ってるかというと、世界で売ってるわけですよ。国内販売が160万台ぐらいなのに海外販売は800万台近くある。だから日本の人口が減っても日本企業の将来は暗くない。しかも「企業は儲けた分を再投資しないならちゃんと株主還元しなさい」と僕がずっと言ってきたようなことを、政府もようやく言い出したわけです。だから、日経225も今後10~20年でもう少し良くなるだろうと、読んでいるわけです。

日経225を100万円買ったら、10年後にはいくらになる?

西原 この前、郵便局に2000万円貯金したんです。そしたら、利子は10年で500いくらとか。それならちょっとくらい損しても資産の一部を投資して、お金を世の中に回すほうが大事なんじゃないかって。

村上 だって日経225買えば、配当だけで年間2%以上もらえるんですから。

西原 じゃ今100万円入れたら、10年後にはどのくらい増えていますか?

村上 200万円くらいじゃないですかね。

西原 税金で取られて儲けは80万円か(笑)。

村上 息子さんの買った株はどうですか? スクウェア・エニックス・HDの株を買ってましたよね。

西原 息子はゲームが好きなので、ドラクエの会社の株を超前借りしてお小遣い100万円分、買いました(笑)。

会社によって株価の変動に特徴がある

村上 今、どうなっているかな(スマホで株価をチェック)。4155円だったのが、3割以上下がって、2割上がって今3640円。息子さんには経済の勉強をして欲しかったので西原さんには言わなかったんですけど、この会社の株には特徴があって。

西原 エッ?

村上 だいたい、新ゲームの発売が遅れますという発表が出た時に下がります。

西原 あぁ、やっぱり。ゲーム会社の株を買って、次に出るゲームによっていかにアップダウンが激しいかってことを実感しました。

村上 西原さん、会社のIRには電話されましたか?

西原 してないです。ってか、それは何ですか!?

村上 いわゆる投資家向け広報です。丁寧に答えてくれますから。なぜこんなに下がったのか、なぜ利益が出てないのか、それを聞くと勉強にもなりますよ。

西原 そんな“株テレクラ”みたいなのがあるんですね。

村上 ただ、僕の場合は数字をずっと見てるから、この業界はこういうトレンドというのを見極めて投資します。でもこの業界のこの企業だけっていうのは実際は難しい。だから、最初は日本株全体を買う日経225をお勧めするんです。

西原 息子とは、これからはeスポーツ(電子ゲームの競技)が絶対に来るから、そういう株を買おうと盛り上がりましたが……。

村上 西原さんがそう思っているということは、みんなも思っているはず。eスポーツが流行った時にはその株はもう高くなっているかもしれない。だから知識と情報がないと、個別株は難しいんです。

年寄りこそネットで株取引を

 人生100年時代、リタイア世代にとって気になるのは、退職金や年金の運用方法。高齢者も投資を始めたほうがいいのか。

村上 60歳、70歳で株で儲けようというのは、やっぱり遅いと思いますね。特に、余剰資金のない人が株をやってはいけません。

西原 父親の代とかよく聞きますよね、おじいちゃんが株で大損をしてとか。いい歳こいて人生パッとしてなかったのに、一銘柄に注ぎ込むとか。そういうのがないっていうのが、今回の日経225だったので。

村上 退職してすぐ証券セミナーに参加する人がいますが、証券会社の言う通りにやると、だんだん損するようにできているんです。もし株を買いたいなら、お年寄りこそネットでやった方がいい。ネットで情報取りながらやることで、ボケ防止にもなる(笑)。

投資をしてもいいのは、5000万以上資産がある人

西原 どれくらい老後の資産があれば、投資をしてもいいものなんですか?

村上 不動産も含めて5000万以上資産がある人は、そのうちの2割くらいは投資に向けてもいいと思う。ただ、日本は企業と一緒で個人も溜め込む傾向があります。

西原 できないんじゃなくて、やらないと。

村上 そうです。アメリカでは、家計の金融資産の5割近くは株と投資信託です。日本は5割が預貯金で、株や投資信託は15%くらいしかない。そもそも投資に対する成功体験の少なさも一つの原因だと思います。だからといって、つみたてNISAみたいなのをちょろちょろっとやるくらいでは、あまり意味がない。

西原 円だけじゃなく、ドルで持つのはどうですか?

村上 僕も円を4割、海外資産を6割にしたことがありましたが、中国やギリシャで大損しました。自分でよく分からないことはやっちゃダメなんです。ドルだってどうなるか分からないし、日本で暮らすのであれば、ドルは1~2割程度にとどめておくべき。ただし、それも西原さんのように一定のゆとりのある場合の話です。

西原 私もまぁこれくらいは突っ込んでも大丈夫か、というところで留めています(笑)。不動産とかはどうなんでしょう? 五輪バブルとか地震のこととか気になりますが。

村上 日本でも、J-REIT(不動産投資信託)を買えば、3~4%の利回りは出ますよ。地震リスクも考えますけど、東京の不動産を対象にしているJ-REITなら、絶対ペイすると思う。東京の不動産は海外より割安だし、外国から人も入ってきますから。ただ、僕らがやってるアジアの不動産は15%くらいの利回りが出るんで。買います? うちのマンション。

西原 いやいや(笑)。

村上 どうして?

西原 アジアでぼったくられたことしかないんで。

村上 でも一度、遊びに来て下さい。国自体が経済成長しているんですから。

AIに「物言う株主」はできない

西原 きっとニセの村上さんが現れて、私ダマされると思う。今、AI投資みたいなものが増えているそうですが、AIには負けないって仰っていましたよね?

村上 圧勝でしょう(笑)。AIにアクティビスト(物言う株主)はできない。僕は目先の株価の動きじゃなく、企業の根本的な部分を見て投資しているので。

西原 さすが、日本最後の総会屋だ!

村上 違いますって!(笑)実際、投資をやってみてどうでしたか?

西原 ボケ防止になりました。生まれて54年、数字に触れる習慣が初めてつきました。息子も数字がメチャ苦手だけど、毎日ちゃんと自分の株見てるんで、その蓄積はすごく大きいと思うんです。だから子どもが株で損してガッカリしているのも、すごくいい勉強になったなと思いましたね。高いテラ銭(控除率)も取られるギャンブルにハマる前に(笑)。

村上 そうですね。だから70歳、75歳でもしお金が余っているなら、お孫さんに早くお金をあげたほうがいい。どんどん子どもたちに投資の機会を与えてあげて欲しいと思います。

むらかみよしあき/1959年大阪府生まれ。83年から通産省などにおいて16年強、国家公務員として務める。99年から2006年までファンドを運営。現在シンガポール在住の投資家。

 

さいばらりえこ/1964年高知県生まれ。2005年「毎日かあさん」「上京ものがたり」で手塚治虫文化賞。「西原理恵子展 人生はおきゃく」が7月28日まで高知県・香美市立美術館で開催中。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2019年6月20日号)

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