石破茂に聞く「なぜ若手議員と料亭に飲みに行かないんですか?」

文春オンライン / 2019年7月8日 6時0分

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石破茂元幹事長

石破茂が明かす「安倍総理の後は誰かがやらなきゃ。その覚悟はある」 から続く

 安倍晋三首相が2021年9月に自民党総裁任期満了を迎えるにあたり、文春オンラインで実施した 「次期首相になってほしいのは誰ですか?」アンケート 。

 1位になった石破氏は「ポスト安倍レース」から逃げない覚悟を示した。では石破氏は菅義偉官房長官や岸田文雄政調会長などライバルと見られる人たちをどう見ているのか。

 そして「ツッコミが細かすぎる」「人間に興味がないのでは」という一部の批判について、どう応えるのか。週刊文春編集局長の新谷学が石破氏に切り込む。(全2回の2回目/ #1 より続く )

◆ ◆ ◆

「政治家・菅義偉」をどう見ている?

――令和への改元以降、にわかにポスト安倍として注目が高まる菅義偉官房長官ですけれど、政治家・菅さんに対する評価はどうですか?

石破 そんなに深く付き合ったことはありませんが、自民党の野党時代、安倍先生が総理になる前の4カ月間は、私が幹事長で菅さんが幹事長代行でした。一緒に戦って、政権奪還して良かったね、という思いを共有して、同志だと思いました。菅さんは安倍政権をつくるために一番働いた方だし、内閣のためにいろいろな批判を浴びながらずっと支えておられる。それは立派なことだと思っています。

 ただ、菅さんが国家観や憲法、安全保障について話されたのを聞いたことがないので、判断のしようがないですね。一緒にやった仕事でいえば、地方創生やふるさと納税、そういう個別の政策判断も的確だし、神奈川県内での選挙のやり方などを見ていても、さすがだと思います。この国をどうするんだという全体像についてはまだ判断できないですね。

――確かに、菅さんの憲法の話は聞いたことないです。

石破 もちろん、ずっと官房長官でおられるから、語ることもできませんよね。もし現在の権力構造を継承するとすれば、もっともふさわしい方の一人でしょう。

――たとえば他にポスト安倍として名前が挙がる岸田さんは国家観について語られていますか。

石破 岸田さんとは同じ昭和32年生まれなんです。私と、石原伸晃さんと、岸田さんと、中谷元さん、同じ年生まれという縁があって、定期的に4人で会ったりもしています。ですから人柄がすごくいいということはよく知っています。判断もクリアですね。だけど、やはり「この国をどうする」という全体像については、今まで外務大臣とか政調会長とかいう立場だったこともあるでしょうが、もう少し語っていただけると、今後さらに存在感が増すでしょうね。

石破さんはツッコミが細かすぎる?

――あえて石破さんに対する、今まで聞いてきたネガティブな話をします。防衛大臣時代、極めて細かいところまで通じていらっしゃる、それはいいところでもあるけれど、一方で“マイクロマネジメント”というか、重箱の隅までつつかれて辟易というような幹部もいました。

石破 防衛大臣が他の大臣と違うのは、自衛隊という実力組織をお預かりしているということです。自衛隊法に記されていない行動は1ミリたりとも取れないのが自衛隊なのですから、まずはその根拠法を知らなければ指揮のしようがないんです。次に装備。戦闘機、護衛艦、戦車、どんな性能を持っているかを知らないと作戦が理解できない。そして日米安保条約、日米地位協定を知らないと、米軍との関係がわからない。防衛省の幹部の方々からそういう批判があることは不徳の致すところですが、一方で「だから議論ができた」と言ってくださる方々もおられました。

――これまで「良きに計らえ」のような大臣が続いてきたことで、防衛省内でも細かいところまで勉強されることに慣れていない。

石破 そうだったのかもしれません。でも、防衛大臣、防衛庁長官というのは、他の大臣と違うからだ、と私は思っています。農林水産省からそんな批判はないはずです(笑)。

石破さんは人間に興味がないのでは?

――確かにそうですね。あともう一つ批判というか、石破さんが安倍政権の幹事長をされている頃に安倍さんなりが「石破さんは人間に興味がないんだよね」「お金の使い方がよくわかっていないみたいだ」ということを言っていたようですけれど。

石破 そうなんですか。人間に興味って何でしょう。

――おそらく、私の理解では、安倍さんは毎晩毎晩、会合を2階建て、3階建てと入れて、こまめに若手の面倒を見て、兵を養い、自分が勝負するときの準備をしていると。石破さんは恐らくその間、本を読んだり、政策の勉強をされていた。その違いでしょうか。

石破 人間に興味がないわけではないです(笑)。ただ私は、若手のことを考える、というときに、選挙で当選することを最優先に考えてあげたいと思っているんです。大臣のときも、あるいは無役になってからも選挙の応援は相当行っているほうだと思う。

演説でのポイントは「地元のおいしいラーメン屋」

――4月の統一地方選もずいぶん回られていましたね。

石破 26都府県を回りました。町長選挙にも行きました。もちろん会合を開いて親しく交流する、それもいいんでしょう。でも私は国会議員にとって何よりも大事な選挙、それを重視したい。だから応援に行くときは、すごく分厚い資料を用意します。市町村単位です。そこの人口動態――あと何年で人口が何人になるか、20代、30代の若い女性が何%減るか、あるいは名産は何か、おいしいラーメン屋さんはどこか……。

――そこでオタク的な気質が。

石破 そういうことを言うと演説で沸くわけ。

――なるほど。だからよく調べる。

石破 うちの●●ラーメンをよく知っていてくれた、◎◎寿司屋を名指しで挙げてくれた、とか。そこまでうちの地域を知って、応援に来てくれたんだと思ってもらえるようにする。それは膨大な準備が要ります。

 選挙中の応援では、私は会場でも街頭でも演説するけれど、あわせてできるだけ選挙カーに乗ります。自分でマイクを持って「私が石破であります。私が●●候補の応援にまいりました」と言って車を走らせれば、あらかじめ会場に集まる人の何十倍の人に知らせることができる。「あっ、石破が来たんだね」と思ってもらえる。

 ほんとに親友というのか、仲間というのか、「日本国はこうあるべきだ」と語りあえるような人は、たしかにそんなに大勢はいないと思います。うちの水月会のグループ(石破派)とか、他派閥でも応援してくれた人とか、それが73人という数字なのかもしれません。だけどひとつ、国会議員であれば誰でも共通しているのは、選挙に通らなければ、ということ。私は、そこでお手伝いをすることを重視したいと思っています。

料亭で夜な夜なという人付き合いは嫌い?

――毎晩料亭で夜な夜なみたいな、永田町的な人付き合いというのはそんなにお好きじゃないんですか。

石破 いや、嫌いじゃないけど、1年365日、1日24時間しかない。それをやっているとちゃんと資料を読めなくなる。選挙応援が通り一遍になっちゃうんですよね。山形市であろうが、霧島市であろうが、四條畷市だろうが、同じ話をしちゃう。そうすると票は増えないわけ。どうやってその候補の票を増やそうかということを考えた時に、地域のことを十分に知っている、だからこそ「ここにこの人が必要なんです!」と自信を持って言える、そういう展開をしないと、その人を当選させる力にならないんです。

――伺っていると、総裁選での党員票と議員票のギャップの謎が解けたような気がしました。

石破 それが謎の答えです(笑)。

これからどうやって「国会議員票」を集める?

――確かに地方の方々とお話をしていると、いろいろな小さい会合にも石破さんはいらっしゃって、一人ひとりにお酌して回ってみたいなことはよく聞きますし、地方での人気はすごく高いという実感があります。一方で永田町へ戻ってきて議員の方々に聞くと、「党内野党だ」「あそこまで言っちゃダメだ」と言う人もいる。このギャップが大きい。

石破 そうなんでしょうね。でも「党内野党」と批判される方も、ご地元でいろいろな話を有権者の皆さんから聞いたら、おそらく私と同じことを皆さんはおっしゃっていないでしょうか。国会議員は有権者から議席をお預かりしている。だから国会での議論を地元に伝えることも大事ですが、地元の意見を中央に伝えるのも大事なことでしょう。

 宮沢内閣の不信任に賛成票を入れたり、新進党に行ったり、自民党に戻ったり、第一次安倍内閣のときに「キングの会」、小坂憲次のK、石破のI、中谷のN、後藤田正純のG、この4人で安倍総理に責任を迫ったり。それはこんなことしないほうが絶対得ですって。

――麻生政権のときも与謝野馨さんと一緒に「辞めろ」って言っていました(笑)。

石破 そうでした。これは権力者の怒りは買うし、自分にとって得することは何もない。だけど政治家というのは、国民の代表として、おかしいことはおかしいって言うためにいるんじゃないんでしょうか。私が安倍総理に責任を問うたときは、参議院選で自民党がぼろ負けしたとき(2007年)でした。まさか自分の鳥取県で負けると思わなかったです。県連会長だったので終わった後はほんとにお詫び回りでした。そうしたら、今までずっと自民党に入れてきた人が「今度だけは民主党に入れた」と言っていた。落選した現職の参議院議員も、自分がスキャンダルを起こしたわけでもなく、不真面目に仕事をしたわけでもなく、一生懸命やってきたのに、自分の努力と何の関係もないところで落ちる。その責任を誰もとらないのはおかしい、という気持ちでした。

――そろそろお時間なんですけれど、昨年の総裁選で石破さんに投票した議員72人の顔は全員把握できているんですか。

石破 数人を除いて。どうしても分からない方がおられます。

――政治は最終的に数が力です。その数を増やしていく努力は個別にされたりするんですか。

石破 できるだけ努力したいと思います。参議院平成研を中心とする、総裁選で力を貸してくれた方々の選挙は、全面的にお手伝いしたい。先ほども話に出ましたが、この間の統一地方選挙でも、お世話になった地方議員のところはできるだけ行きました。

進次郎さんは天才だから、パッパッパッとつかむ

――選挙で勝たせてあげることが鍵になってくる。

石破 あとは選挙とは関係なく、地方で地方創生などの講演会をやるんで来てくださいと言われたら行きます。この間行った大分県竹田市でも、人口2万ちょっとのところですが、ホールいっぱいに来てくれました。そういうことを積み重ねて、世の中が私を必要とする時が来るとするなら、成就するよう努力はする。1年は365日、1日は24時間しかないので、お酒を飲んでると、地方の講演も密度が薄くなるし、選挙応援も密度が薄くなる。どうしたらいいんでしょう。

――資料を揃えて、準備が大切ですよね。

石破 割り切れれば、それでいいのかもしれませんけどね。

――小泉進次郎さんは地方では方言を使って、うまくつかんでいます。効率的ですよね。

石破 うんうん、効率的(笑)。結果として、進次郎さんも同じような演説なんだけど、進次郎さんは天才だから、パッパッパッとつかむ。私は分厚い資料を読んで、これは使えない、これは使えるというのを取捨選択する時間がかかるのよ。

ラーメン屋は2キロ離れていたらウケない(笑)

――愚直にやられているわけですね。

石破 「このネタは受けるかな、受けないかな」って。例えば、行った先においしいラーメン屋が地元にあるとするじゃないですか。でも演説会場から2キロ離れていると、そのラーメン屋の名前を言ってももうウケない(笑)。

――距離が大事なんですね。

石破 うちの秘書たちは大変で、ぐるなびなんかで、おいしいラーメン屋、おいしいそば屋、おいしい焼鳥屋を調べて、地図を出して、会場から何メートルって調べています(笑)。

――やっぱりおいしくなきゃダメですもんね。

石破 おいしくなきゃダメだし、トンカツ定食600円とか、値段も知ってなきゃいけない。

――麻生さんは首相時代、カップヌードルを400円って言っていたことがありました。

石破 私ができるだけ地方を回っているのは、永田町や霞が関が地方とすごく遠いからなんです。この政策がこの地域でどういうふうに受け取られているんだというのを知らないと、結局は国民から離れていってしまうと思うんです。

 じつは今日も若手市長の会というのがあって、それに呼ばれて、講演してきたんです。市長としては国の政策にも、順番が違うって思うことがいっぱいあるんだけど、国会議員に言っても「それは国の政策ですから」ってはねられちゃうことがあると。それだと私たち困ってしまうと。だからやっぱり公共財たる内閣、総理大臣、大臣は、国民の納得と共感をどれだけ得るかというのが大事なことだと思います。でもこういうふうに愚直にやると、効率が悪くなってしまうのかもしれませんね。

(#1から続く)

写真=松本輝一/文藝春秋

(「文春オンライン」編集部)

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