約束、夢、希望……マンウィズの歌詞に見るjpopらしさ――近田春夫の考えるヒット

文春オンライン / 2019年7月14日 17時0分

写真

絵=安斎肇

『Remember Me』(MAN WITH A MISSION)/『優しいあの子』(スピッツ)

 MAN WITH A MISSIONの新曲を聴いていると、歌い出しの英語歌詞に続く日本語部分に、なんだか懐かしさのようなものを覚えた。久しぶりに“jpopの王道的表現”に出くわした気がしたのだ。

 ちなみに、

♪ あの日 約束を信じて
ずっと時を重ねて来た
そう君だけの夢や希望
決して消させやしないため

 こんな塩梅なのだが、この4行を目にして誰もが知りたく/求めたくなることはといえば、ひとつは何を「約束」したのか。あるいは「君だけの夢や希望」といったものの具体性ではなかろうか? なにしろ決してその夢や希望を“消させやしない”とまで主人公はいっているのだ。また、約束を信じて“ずっと時を重ねて来た”のでもあるわけですよこの男。そりゃ気になりますでしょう、約束や夢や希望の中身!(笑)

 これはきっと、ストーリーの進行とともにその全貌も明らかにされていく的ドラマチックな展開が待っているに違いない! と思いきや、答えもないまま、あっけなく場面は変わり、

♪ 誰かを救うその強さも
戸惑い嘆くその弱さも
今この時この場所が
明日を描く事信じて

 となってしまった(それはそれでいいんですけど)……。

 で、コレ2行目まではまぁ普通に分かるんですが、さてその先である。それらの問題(強さ弱さのことね)は“この時この場所”という(おそらくは擬人化されている?)ものが“明日を描く”だろう事を信じて(いれば?)……どうなるというのよ一体! その件についても、この歌詞では触れられずじまいだ。

 てな具合にちょっと意地悪をすれば、いくらでも突っ込みどころの見つかるってぇのが、俺にとってのかつてのjpopの歌詞の醍醐味? だった。そして今回、そうした文章表現的曖昧さとともに、懐かしかったのが、いちいちのコトバの使い方/選び方である。

 例を挙げれば“時を重ねて来た”なんかがまさにそうよね。もうこのあたりになると、jpopというよりは、70年代のフォーク/ニューミュージックといってもいいぐらいかもしれぬ。昔はこういった手合いのいい回し、しょっちゅう見かけたもんだよなぁ。

 いってみればこの曲の歌詞は、ほぼ全域にわたって、過去によく耳にしたようなフレーズや常套的世界観で構成されているのだけれど、それを新鮮味がないと捉えるのか、馴染みやすいと感じるかで、評価は分かれるところだろう。

 といいつつ、やはり狼の被り物でステージを行う、それを素直に面白がり支持する層が一定量存在するのは紛れもない事実。答えはそこにあるということなんですかね?

 そう考えると、独自のマーケットを開発し安定化させた、彼らの商売のセンスは、なかなかなものだといえるのかも。

 スピッツ。

 こちらは、どこかチューリップを思い起こさせる。

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

(近田 春夫/週刊文春 2019年7月11日号)

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