老舗企業ツムラを立て直した“バスケットボール経営”とは?

文春オンライン / 2019年7月16日 11時0分

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宮永博史氏

 昨今、グローバル化やデジタル化などの激しい環境変化の中、多くの日本企業が苦戦を強いられている。2018年にはじつに8235社にも上る企業が倒産した。

 だが、毎年多くの企業が出来てはすぐに消えていく一方で、わが国には創業100年を超える“老舗企業”が3万4394社(2017年東京商工リサーチ調べ)もある。例えば、今年、任天堂は創業130年を迎え、オリンパスと日本ガイシが100年を迎える。日本の老舗企業の多さは、諸外国と比較しても突出しているという。

 なぜ、日本企業には老舗企業が多いのか。事業コンサルタント出身で、『顧客創造 実践講座』『ダントツ企業 「超高収益」を生む、7つの物語』など、多くの経営者向けのビジネス本の著者でもある東京理科大学大学院の宮永博史教授は、次のように分析する。

「日本の老舗企業は、マーケティングやビジネスモデル、経営全般において、企業を長く発展させるヒントを多く持っています」

ツムラ(創業126年)は“ピボッティング”に成功した

 宮永教授によると、企業が長続きするために最も重要なことは「ピボッティング」だという。ピボッティングとは元々バスケットボール用語で、片足は動かさず、もう片方の足を動かしていく動作を指す。そこから転じて、経営においては「軸となる自社の強みを持ちつつ、新規分野を広げる作業」という意味で用いられる。「事業や製品・サービス」、また、「顧客・利用者」を、いかに既存から新規に広めていくか――これこそが、企業が永続的に発展する、すなわち「老舗になる」カギだというわけだ。

 宮永教授は、ピボッティングに成功した老舗企業として漢方薬のツムラ(創業126年)を挙げた。

「ツムラは、3代目の社長の時代に、漢方薬以外の新薬の研究開発に乗り出しました。しかし、これは競争力のない二番煎じとして失敗に終わりました。その経営を立て直すために1995年、第一製薬(現・第一三共)から招かれたのが芳井順一氏です。芳井氏は、『漢方に特化し、漢方薬をこれまで処方していない新たな顧客(西洋医学を学んだ医師)に売ること』を目標に据えました。結果的に漢方薬市場そのものが拡大し、ツムラのシェアも増加したのです」

令和の「老舗企業」になれるのは?

 ここで気になるのは、まだ若いが、今後「老舗」となる可能性を秘めている企業だろう。

「何社か考えられますが、1つはアイリスオーヤマ(創業48年)です。家電、LED照明、調理用品、ペット用品、さらには米など、多岐にわたる商品を主にホームセンターで販売しています。2代目社長である大山健太郎氏は、メーカーでありながら問屋機能も内在させた、『メーカーベンダー』というビジネスモデルを選択しました。ホームセンターに問屋を介さずに直接製品を納入する直販体制をスタートし、顧客を問屋からホームセンターへと変化させたのです」

 この先の令和時代、日本企業が生き残るカギは日本の老舗企業にこそあると、宮永教授は指摘する。

「欧米流の経営術にも学ぶ点はありますが、まずは先達が培ってきた日本の老舗企業の知恵を見直すときにきているのです」

 ツムラやアイリスオーヤマの他、宮永氏が“老舗企業の知恵”を分かりやすく解説している「『100年企業』が日本を救う」は、 『文藝春秋』8月号 に掲載されている。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2019年8月号)

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