司法試験落第の理由は「恋していたから」 “女性初”ECB新総裁の素顔

文春オンライン / 2019年7月17日 5時30分

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2人の息子の母親 ©共同通信社

「女性初」という形容詞では収まらない異色の総裁が誕生した。7月2日、EUの臨時首脳会議で、フランス出身のクリスティーヌ・ラガルド(63)が欧州中央銀行(ECB)の新総裁に指名された。

 現在IMFの専務理事をつとめるラガルドは「女性初」を常に勝ち取ってきた。大学卒業後、弁護士としてキャリアをスタートさせ、大手弁護士事務所ベーカーマッケンジーで女性初のパートナーに登り詰めている。

 2005年にフランスに帰国すると、政治家に転身する。07年には経済・財務大臣に就任。女性の財務大臣就任はフランス政治史上、初めてだった。そして11年に女性で初めてIMFのトップに就任する。

 輝かしい経歴を誇る一方、素顔のラガルドは実にチャーミングな女性だ。現地メディアの取材では、自身の挫折について司法試験の落第をあげ、「恋していたからよ」と開けっぴろげに語っている。

 13年、月刊「文藝春秋」の取材のため、ワシントンDCで彼女をインタビューしたことがある。シックなシャネルのスーツに身を包んだ彼女は、1時間にわたりどんな質問にも答えてくれた。

 取材の大きなテーマは、財務大臣時代の「3・11」への対応だった。

「あの時は公正性と尊厳のようなものに突き動かされた」

 震災直後、日本は突然の円高に見舞われ、3月17日、対ドルで戦後最高値(当時)を付けた。そこでラガルドはガイトナー米財務長官や、各国の中央銀行総裁と協議し、円売りを提案。この“為替介入”は成功を収め、円高は収束に向かった。この時、危機管理能力とタフな交渉力を発揮したことは、のちにIMF専務理事に推薦される大きな要素となった。

 インタビューで彼女はこう振り返った。

「私は日本も日本人も好きです。ただ、あの時はもっと、公正性と尊厳のようなものに突き動かされたといった方が正確かもしれません。(略)我々は地震を止めることも、津波をコントロールすることもできません。原発事故への対応を手助けすることもできません。しかしながら、円高については明らかに、何かやりようがあったのです」

 停滞続くEU経済を再建できるか。「フェア」を重視する彼女の手腕が問われる。

(近藤 奈香/週刊文春 2019年7月18日号)

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