「白い巨塔」岡田准一版のほうが唐沢寿明版よりグッときたのは松山ケンイチのおかげ――青木るえか「テレビ健康診断

文春オンライン / 2019年7月13日 11時0分

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松山ケンイチ ©文藝春秋

 ちょっと前にテレビ朝日が社運を賭けて(?)5夜連続『白い巨塔』をやっていた。私は原作本をページがばらばらになるほど愛読し「田宮二郎版白い巨塔」を至上のものと考える「田宮財前主義者」で、DVDは全巻揃えてしょっちゅう見ているので内容を暗記するほどである。なので世評の高いらしい唐沢版もきっちり見たうえで「ケッ。田宮版に遠く及ばないぜ」と思っており、そんな私には先日のテレ朝版は見ながら途中でひっくりかえりそうになったりしたがここは白い巨塔の話ではない。

 と言いつつちょっとだけ続けますが、先日の白い巨塔では登場人物が「新味」を出したかったのか、とっぴな言動をしていた。岡田准一演じる傲岸不遜の天才外科医財前が、手術後のクランケをベッドから突き飛ばすとか(死ぬぞ)。

 そして財前と対照的な、誠実で信念の内科医である里見先生も、常にホニョホニョと微笑んでいるが目が笑っていないサイコパスみたいに見える松山ケンイチ。こんなんありえねーぞ、と思いながら見ていたら……。

 いつの間にか馴染んでしまって違和感なくなったんですよ松ケンに関しては。ぜんっぜん里見先生じゃないのに、とっぴなドラマの中では「ああ、こんな異様な財前の相手役としてはしっくりくる。財前もこういうヤツにしか最後は心を開けまい」って納得できちゃって、ラストなど唐沢版よりぐっときたのであった。

 まあそれっきり忘れてたのだが、NHK深夜の『聖☆おにいさん』に松ケンが出てきた。キリスト役。

 原作がマンガで、宗教ネタ(といっても血を見る宗論などではなく豆知識的なやつ)を「ゆるーい間やテンポのズレ」で笑わすギャグマンガ。そのゆるさやズレがしつこいぐらい忠実に再現されている。それでわかったけど、こうやって実写化して似せれば似せるほど、内輪のノリツッコミで「ウケるでしょ?」と言いたげなのを冷めた目で見ることになるなあ。けっこうツライものである。

 で、キリスト役の松ケンは、白い巨塔の時とちがって表面的な再現度が高い。フザケたことやクダラナイことを真面目にやって、作風にすごく溶けこんでいる、はずなのに何か異物感がある。白い巨塔の里見の時に感じたのと似た異物感。

 大河で平清盛やってた時には、力の入りすぎた異物感を感じたものだが、ここんところは抜け感が独特でそこで異物感を発揮している。で、最初こそ異物なんだけど、見てるうちに「こういうのが本物っぽいんじゃないか」と思えてくるんですよ。あまり見たことないタイプの名優なのかも。

 ただし、『聖☆おにいさん』は見てるのがいたたまれないぐらいノレないノリなので、他のドラマを早急に探して観察を続けたい。

INFORMATION

『聖(セイント)☆おにいさん』
NHK総合 土 23:30〜
https://www4.nhk.or.jp/P5848/

(青木 るえか/週刊文春 2019年7月18日号)

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