怖いのは熱中症だけじゃない! 夏に実践したい6つの“いいとこどり健康法”

文春オンライン / 2019年8月31日 6時30分

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「夏は脳梗塞のリスクが高い」脱水症状で思わぬ病気にならないための5つの健康法 から続く

 今年7月、大阪府枚方市の遊園地「ひらかたパーク」で、アルバイトスタッフが亡くなるというショッキングなニュースがあった。原因は熱中症だった。

 他にも連日の猛暑の中、相次ぐ熱中症による体調不良で倒れる人が続出。総務省消防庁によると、今年7月29日~8月4日までに熱中症で緊急搬送されたのは1万8347人、死亡数は57人に上っている。

 予防策は、決して他人ごとではない「熱中症」をまずは知ること。週刊文春で様々な視点から取り上げてきた、真夏の猛威「熱中症」企画をここに紹介する。

※「週刊文春」2015年7月30日号より転載。記事中の年齢や日付、肩書き等は掲載時のものです。

 夏ならではの病気は、熱中症だけではない。たとえばあまり聞きなれない「夏型過敏性肺炎」。夏に室内で繁殖する“カビ”が原因で、気づかずにいると恐ろしいことに……。

◆◆◆

(1)木造住宅のカビに注意。掃除はこまめに

 御茶ノ水呼吸ケアクリニックの村田朗院長が語る。

「高温多湿の日本に多い病気で、トリコスポロンという夏に繁殖するカビによるアレルギー性の肺炎です。家の中の水回りで繁殖しやすいため、カビ対策ができていない築20年以上の木造住宅に住んでいる方は注意が必要です。症状は咳と微熱ですから、夏風邪と間違いやすいのも特徴ですね。毎年夏に同じ症状を繰り返す方は受診することをおすすめします。特に室内にいる時間が長い専業主婦のような中年女性がかかりやすい。治療法と予防法は普段から家をきれいに掃除しておくこと。症状がひどい場合は、家のリフォームか建て替えが必要になります」

 慢性化すると命にかかわることも。

「毎年繰り返して慢性化すると、命を落とす方もいらっしゃいます。数年前に診た70代男性の方は、慢性化で肺が真っ白になって硬くなり、残念ながら亡くなられました。家をたずねたら毎日長時間過ごしていたというプレハブの書庫で、トリコスポロンが確認できました。早く見つけて慢性化を防ぐことが重要です。発症者が多いのは7月後半から9月なので、まさにこれから。木の部分を好むカビですが、最近は都市部のマンションでも発症者が確認されています。マンションだと気密性と湿度が高くなりやすい1~3階の低層階での発症者が多い。脱衣所と風呂場をつなぐ木枠には特に注意をしましょう」(呼吸器専門医の大谷義夫池袋大谷クリニック院長)

(2)感染症予防に長ソデ、長ズボンとニンニク

 夏といえば感染症の季節でもある。

「まず子供からお年寄りまですべての方に注意してほしいのは、虫刺されによる感染症です。2014年夏に東京を中心に流行した蚊を媒介とするデング熱、他にもマダニやヒルの感染症も危険です。山や公園に出かけるときは、なるべく長ソデ長ズボンで肌を露出しないようにすること。シャツの裾はズボンのなかに、ズボンの裾は靴のなかに入れて防ぎましょう」(山野医療専門学校副校長で医学博士の中原英臣氏)

 子供たちの間では現在、「リンゴ病」の流行が全国に広まっている。

「お子さんでしたら手足口病、プール熱、リンゴ病が夏の感染症です。特に今年はリンゴ病が流行していて、6月に東京で警報が発令されて以来、全国にも拡大し、長野や大分でも警報レベルを超えています。飛沫感染なので対策は難しいですが、人の集まるところではお子さんの行動に目を配っておいたほうがいいかもしれません」(同前)

 感染症予防には「ニンニクがいい」と語るのは、愛知学院大学の大澤俊彦教授。

「ローマの戦士たちは遠征先で負傷をすると感染症を予防するため、傷口にニンニクを塗っていたと言われるほど抗菌力があります。ニンニクやタマネギなどのユリ科の食べ物には、ビタミンBの吸収を助ける効果もある。ビタミンBが多い豚肉と一緒に、ニンニクやタマネギを炒めて食べるのもおすすめです」

(3)水分不足とストレスが尿酸値を上げる

 成人男性で夏に注意してほしいのは尿酸値の上昇だ。

 大櫛陽一東海大学名誉教授が語る。

「医療現場では昔から『夏は水分不足で尿酸値が上がって痛風発作が起こりやすい』と言われていました。今回、私たちが研究している70万人の健診データで月別に解析してみたら、男性は4月から8月にかけて尿酸値が上昇していました。普段から数値が高い方は、痛風発作と尿路結石に気をつけたほうがいいでしょう。尿酸には体を守る効果もありますが、数値が8を超える状態が長期間続くと、体内に尿酸の結晶ができやすくなる。その結晶が足にできると痛風、腎臓から膀胱にいたる尿管にできるのが尿路結石です。尿路結石は3大激痛の一つと言われていて、私も経験しましたが動けなくなるくらいに苦しい」

 なぜ夏は尿酸値が上がるのか。

「昔はビールのプリン体が原因と言われていましたが、食べ物や飲み物はあまり関係がない。最近の研究で言われている原因の一つは水分不足で、もう一つの原因はストレスです。尿酸は抗酸化作用の一つですから、ストレスから体を守るために尿酸が増える。暑さ、仕事の忙しさ、睡眠不足、家族サービス、男性へのいろんなストレスが重なるのが8月なのではないでしょうか。この時期こそ、ストレスはためこまないようにしましょう」(同前)

(4)あせもに注意。タオルは綿か絹を使おう

 夏はQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を下げる煩わしい疾患も多い。

 かくた皮膚科クリニックの角田美英院長が語る。

「夏は一年の中で来院患者が一番多い時期です。特に夏に増えるといえば、あせもです。子供に多いと思われがちですが、最近はクールビズにより冷房の設定温度が高くなる傾向にあるため、大人のあせもも増えています」

 角田院長によると、あせもには白っぽい水ぶくれができる「水晶様汗疹」と赤く小さいつぶができる「紅色汗疹」があり、かゆみが出て悪化しやすいのは後者だという。

「『あせもくらい』と放っておくと湿疹に移行し、細胞が破壊されてしまいます。かきむしって範囲が広がると治療が長期化することも。初期段階でも遠慮せず病院に行きましょう」(同前)

 あせもを予防するにはどうすればいいのか。

「シャワーを浴びることが最大の予防策ですが、一日中仕事をしている社会人にはなかなか難しい。男性はネクタイを締める首回りやベルトの下、女性はブラジャーのワイヤーの部分など下着に締め付けられている場所に発生しやすいので、このあたりをこまめに制汗シートなどで拭くようにしてください。

 また、身体を洗う時、ポリエステルやナイロンなど合成繊維でゴシゴシ洗うやり方は皮膚科的には絶対NG。あせもや湿疹を悪化させてしまいますし、肌を傷つけ色素沈着を起す原因にもなってしまいます。一番いいのは石鹸を泡立てて、泡で洗うように手で優しく洗うやり方です。泡で出てくるポンプ式の石鹸も便利ですね。どうしてもタオルを使いたい人は100%綿か絹のものを使ってください。これらの注意点はあせもだけでなく、夏の日焼け後の肌にも言えることです」(同前)

(5)抜け毛には日傘かUVスプレー

 7月~8月は年間で最も紫外線量の多い時期だ。日焼け対策を怠ると、シミや皺の原因になるだけでなく、皮膚がんにつながるケースもある。

 女性は比較的、日焼け止めや日傘で対策する傾向にあるが、男性は無頓着な人も多いのではないか。しかし、紫外線は男性に多い悩みの原因になっている。

「身体の中で一番日焼けによるダメージを受けるのは直に紫外線を受ける頭皮。夏の紫外線が秋の抜け毛に繋がってしまうのです。近年、街中でも日傘をさす女性が増えましたが、実は脱毛に悩む男性こそ夏の紫外線対策をしっかりした方がいいのです。

 とはいえ、男性の多くは日傘を差すことに抵抗があるでしょう。また、スーツ姿に帽子を被るというのも難しい。そこでお勧めしたいのが髪用のUVスプレーです。今、各社から発売されており、出かける前に髪にふりかけるだけと使い方も簡単です」(同前)

 髪にいい保湿成分が配合されている商品や髪から顔まで全身に使えるものもある。自分にあった一本を探してみてはどうか。

(6)躁うつ病予防に「一行日記」を

 意外に知られていないが、夏は身体だけでなく脳や神経の疲労も蓄積されやすい季節だ。

 銀座泰明クリニックの茅野分院長が解説する。

「躁うつ病などの気分障害患者数は春から夏にかけてピークを迎えます。

 一般に人が春夏にアクティブになるように、精神科の患者さんも自殺や暴力などの問題行動を起こしやすくなる季節でもあるのです」

 茅野院長によると、一般的に夏にはしゃぎすぎると、秋冬に“しっぺ返し”がきて、うつ状態になるリスクが上がるという。

「そうならないための対策としては、規則正しい生活をすること、一行でもかまわないので日記をつけることです。これは認知行動療法の基本なのですが、『遊びすぎたな』とか『お金を使いすぎたな』と、自分を客観的に観察することでブレーキをかけることができるようになります。

 また、夏は暑さや昼間の長さなどから、冬に比べ一日の睡眠時間が短くなる傾向にあります。睡眠不足が脳や神経に悪影響を及ぼします。夏を短い睡眠時間で乗り切れたとしても、体はもちろん脳や神経にも疲労は蓄積しています。最も健康的な睡眠時間は7時間。精神科の患者さんは8時間が望ましい。『なかなか眠れない』という人はまずベッドで横になり、電気を消して目をつぶる時間を8時間とるようにしてください」(同前)

 夏だからといってあまり羽目を外し過ぎないことが大事なようだ。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2015年7月30日号)

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