リピーターも満足 2019年「絶対泊まるべき温泉宿」10選――2019上半期BEST5

文春オンライン / 2019年8月10日 11時0分

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広島県・宮島温泉「岩惣」

2019年上半期(1月~6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。トラベル部門の第2位は、こちら!(初公開日 2019年1月26日)。

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 2019年は日本の温泉宿の在り方を模索する年になるだろう。それは、四方八方に広がる道の交差点のようであり答えはひとつではない。そんなホットな現場へと、ぜひ足を運んでみていただきたい。

 ひとつの流れは原点回帰。ホンモノであり続けることが強みになる。海外からの旅行客の影響もあるのではないだろうか。単に日本へ旅してみたいという旅行客がすでに一巡し、“初めての日本”ではなく、もっと深い、もっと奥の“その先の日本”を求める「日本リピーター」が急増しているからだ。

 そこで、日本各地の温泉宿の出番がやってきた。箱根ではなく、東北の秘湯へ。京都ではなく、広島の宮島へ。と、さらに深い日本の魅力を求めて海外ゲストの大移動が始まっている。世界から注目を浴びれば、日本は日本であることを、さらに磨かなければならなくなるのは必然だ。世界から称賛される場所は、結局、日本人にも愛されるホンモノの場所なのである。

 近年、日常において、日本の文化や礼節を重んじることや、四季を愛でる喜びを感じることが少なくなってきているように思う。特に都会で生活をしていればなおさらである。実は、それらを体感できる場所は日本の温泉旅館ではないだろうか。

日本人の心の真髄に触れる

 歴史を重ねる老舗旅館の底力はすごい。広島県・宮島温泉「岩惣」は、伝統を守る純日本風の旅館というだけでなく、自然そのものを神として信仰してきた日本人の心の真髄に触れる旅をすることを可能にする。宮島といえば嚴島神社と思ったら、それはほんの入口にすぎない。そのことを私に知らしめたのは、「弥山(みせん)にはもう、登られましたか?」という女将の一言だった。紅葉谷駅からロープウエーに乗り徒歩で霊峰弥山へ登り霊山詣をしてみる。日本三景の真価は頂上からの眺めにあり、弥山の頂へ登らずして宮島の風景を見たとは言えないのである。冬は牡蠣が美味しさを増す。この宿の焼き牡蠣は絶品だ。

 群馬県・法師温泉「長寿館」は、1200年以上も前から変わらずにこんこんと湧く自然湧出の温泉に、日本の芸術ともいうべき登録有形文化財の美しい湯殿で入ることができる。ぷくりぷくりと湯船の底から湧き上がる温泉の囁きを聴きながら静寂の時を楽しめる。

 静岡県・修善寺温泉「あさば」は、凜とした日本の美学を感じさせる。夏に訪れた時には、ロビーに氷が生けてあった。つる草の青葉を纏った氷柱は、数時間で消えてしまう儚い旬だ。季節だけのご馳走をしみじみと味わう料理は気が遠くなるほど素晴らしい。ここには新しさもある。ゲストが寛ぐサロンには、日本文化の古書が並び、クラシックを聴きながらコーヒーを飲み、デザイナーズチェアに腰かけて能舞台を眺める。このさじ加減が絶妙だ。

ひとり旅でも楽しめる温泉とは?

 一方、自分のための温泉旅へのニーズも高まっている。ひとり旅は、ここ数年増加する一方だ。自由で気楽な旅がしたい、ひとりで旅するのが楽しいから、と自ら望んでひとり旅に出る人が増え、ひとりで宿泊しても楽しめる温泉への人気が集中している。

 現代湯治や新・湯治をテーマにした宿で体に優しい食事を食べて温泉に入り、自分の心や体をメンテナンスする旅が人気だ。その先駆者は宮城県・東鳴子温泉「百年ゆ宿 旅館大沼」である。2種類の源泉を8つの風呂で入り、通常の料理の他に玄米菜食を中心とした一汁三菜プランがある。

 神奈川県・箱根湯本温泉「養生館はるのひかり」は、箱根という便利な場所にありながら、本格的な自然食を中心とした養生食が美味しい。

 新潟県・栃尾又温泉「宝巌堂」は、伝統的な共同湯に入って湯治をする文化が残る温泉地にある。ラジウム泉と呼ばれる温泉は、体温と同じ位のぬる湯で、じっくりと温泉につかり、心身を癒す。この宿の女将が作る野菜たっぷりの料理と魚沼産コシヒカリのごはんが体へのご褒美である。

 大分県・鉄輪(かんなわ)温泉「サリーガーデンの宿 湯治柳屋」は、湯治宿をモダンに改装している。なんと宿の中庭にイタリアンの美食レストラン「オット・エ・セッテ オオイタ」がある。大分の食材にこだわり、温泉蒸気で蒸す「地獄蒸し」は、魚も肉も野菜もとびきりの美味しさにしてくれる。

 究極のデトックスをするならば、青森県・青荷温泉「ランプの宿 青荷温泉」だ。谷間にある秘湯の宿で、電気もテレビもない。しかも、携帯電話は圏外である。源泉かけ流しの温泉に身を委ね、ランプの灯りでぼーっとする。畳の上で大の字になってうたた寝する。それがいかに豊かな時間であるかを実感するはずだ。

今を感じられるライフスタイルホテル

 温泉宿にも新しい流れが入ってきた。従来の旅館、ホテル、リゾートとも違う、ライフスタイルホテルというカテゴリーの参入である。

 福島県・須賀川温泉「おとぎの宿 米屋」は、温泉旅館のスタイルを守りながら、厳しい基準をクリアして「ビオホテル」認証を得た。おとぎ話になぞらえて料理が運ばれる「おとぎ会席」は、美味しい・楽しい・オーガニックの三拍子が揃う。全館かけ流しの豊富な自家源泉はとろとろの美肌湯だ。

 神奈川県・箱根中強羅温泉「箱根本箱」は、玄関を入ると吹き抜けの天井まで本があふれる本棚が迎えてくれるブックホテルだ。選書は専門のチームが行い、エッジのきいたテーマで集めた本が並びワクワクさせる。宿には秘密基地のような場所が沢山あり、温泉を楽しみ、本に浸れる宿だ。箱根をテーマにした料理も美味しい。

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(石井 宏子/文春ムック 文藝春秋オピニオン 2019年の論点100)

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