1人の女性警官をめぐるトリプル不倫――最新の警察不祥事ランキング1位は「異性関係」

文春オンライン / 2019年8月9日 17時0分

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 最新の警察庁のまとめによると、2019年上半期(1月~6月)に免職や停職などの懲戒処分を受けた全国の警察官や職員113人のうち、セクハラを含む「異性関係」が35人と最も多かったという。酒、金、そして異性に目がくらんでしまった警察関係者たちの実情を、ジャーナリストの今井良氏が明かす。

3人が既婚者と知った上で、個別に交際していた女性巡査

「前代未聞の破廉恥な警察不祥事」が明らかになり、高知県警に激震が走った。

 高知県警監察課は、いずれも7月8日付で20~30代の男性巡査長3人と不倫関係にあったとして20代の女性巡査を本部長訓戒、男性巡査長の1人を本部長訓戒、残る2人を本部長注意にした。女性巡査は2017年12月から今年6月にかけて、3人が既婚者と知った上で、個別に交際していたという。

「3人の男性警察官を手玉に取る。これは典型的な『毒女(どくじょ)』の女性警察官なんだろう」

 旧知の警視庁幹部は「警察内部では不倫は珍しくない」と前置きしたうえでこう話した。幹部によると「毒女」とは、周囲の男性警察官を惑わし、虜にする女性警察官のことを指す警察内部用語だという。

 7月30日、「週刊文春デジタル」が報じた「 高知県警『トリプル不倫』現地取材 3人の巡査長を虜にした20代女性巡査は“距離が近い女” 」によると、今回の破廉恥事案は新聞社の情報公開請求が元で明らかになったという。つまり、当初は発表する予定ではなかったのだ。この記事では、取材班が高知県警を直撃取材し、担当官が取材に応じている。

《「7月8日付で、男女2人が本部長訓戒、男2人が本部長注意の処分となったのは事実です。(交際の)期間は2017年12月から2019年6月。女性巡査は、確かに3人の男性巡査長と不倫関係にありました。ですが、3人と“同時並行”で交際していたわけではありません。1人との関係が終わると、また次の人へと移っていったそうです。

 同じ職場で出会ったということではありませんが、狭い業界なのでお互いが警察官だと認識していたようです。男性巡査長3人はそれぞれ他の(男性との)不倫の事実を知らず、女性巡査と『同じ職場で不倫関係にあるのは自分だけ』という認識でした」》

2019年上半期の不祥事 1位はセクハラを含む「異性関係」

「これは典型的な『毒女』」と断じた前出の警視庁幹部は、重ねてこうも語った。

「警察にも魔性の女は間違いなくいる。警察官だけではなく事務などを専門に行う一般警察職員にも。しかし、1人で複数の男と関係を持つのは、間違いなく『毒女』だね。以前自分のいた管内の、ある署の女性警察官で、柔道特練の警察官ほぼ全員、生安(生活安全)刑事とも数人と関係を持って処分されたことがあった。署内の風紀は乱れるし、男が仕事に手がつかなくなるから困るんだ。こればかりはいくら指導、教養しても防げないので、発生したら厳格に処分するしかないよね」

 最新の警察庁のまとめによれば今年上半期(1月~6月)に免職や停職などの懲戒処分を受けた全国の警察官や職員は113人で、前年同期比で8人減だった。このうちセクハラによる処分は前年同期と同じ6人、パワハラは0人(4人減)。逮捕者は20人(19人減)という結果だった。

 処分別では、セクハラを含む「異性関係」が35人(7人減)と最も多く、「窃盗、詐欺、横領など」が27人(2人減)、「交通事故、違反」が21人(1人減)などとなった。

 113人のうち、業務に関する処分は前年同期と同じ29人、万引きなど私生活に関する処分は84人(8人減)だった。免職は11人(11人減)、停職は28人(4人減)、減給は61人(2人増)、戒告は13人(5人増)だった。

 都道府県警別では警視庁の16人が最も多く、神奈川の8人、千葉、大阪の6人が続いている。

 警視庁は東京都警察だが、4万6000人を擁する日本最大の警察本部でもある。

 当然、「ブラック」な警察官が所属している確率が他の県警より高くなってくる。

「Bに取り込まれている女警が新宿署にいる」

 女性警察官の不祥事もある。2018年3月19日。警視庁の女性巡査(23)が停職6か月の懲戒処分を受けた。処分の理由は捜査情報を漏らしたとする地方公務員法違反容疑。処分と同時に同日、書類送検もされている。漏らした相手が警察組織にとって大問題だった。警察と敵対する暴力団員だったからである。

「B(暴力団員を指す隠語)に取り込まれている女警が新宿署にいる――」

 警視庁の捜査関係者がこんな噂を耳にしていたのは2017年暮れだった。関係者のところにまで届くほど噂は広範囲に拡がっていたのだ。警視庁によると女性巡査は新宿署の組織犯罪対策課に所属していた2017年夏ごろに組員と知り合い、食事や旅行を共にするなど親密な関係になったという。そして2017年12月頃、組員の求めに応じる形で捜査情報を伝えたとされる。

 女性巡査は警務部人事一課監察係の聴取に事実関係を認め「交際が発覚すると警察官を続けられなくなると思ったが、情報を教えれば黙ってくれると考えた」などと供述しているという。女性巡査は2018年1月頃、組員から金の無心を迫られたことをきっかけに、交際をやめたとも説明している。警視庁は、上司の課長など4人についても所属長注意などとして「警察に対する信頼を失墜させる行為であり厳正に処分した。再発防止に努めたい」とコメントした。

畏怖される、30人規模の「ヒトイチ」

 本件も速やかに警察署の警務課から方面本部を経由して、警視庁本部の警務部人事一課監察係に事案の報告がなされている。警視庁人事一課監察係は「ヒトイチ」もしくは「ジンイチ」とも庁内では呼ばれており、畏怖される存在である。現職の警視庁警察官の犯罪・不祥事を把握し、厳正に調査して懲戒処分を下す。その執ような調査方法から、ヒトイチは「警察の警察」と呼ばれている。ヒトイチは4万6000人の警視庁警察官全てに睨みを利かせている。

 ヒトイチは30人規模だ。組織としては警務部人事一課監察係という係のひとつに過ぎない。警務部参事官を兼務するキャリアの人事一課長を筆頭に、ノンキャリアのエリートの「首席監察官」が現場を統括する。実際に監察業務に当たるのは「監察官」たちだ。警視庁では警務部、総務部に優秀な人材が集まっている。一部の所属長は警察庁から出向するキャリア官僚だが、警務部・総務部に所属する警察官たちは、ノンキャリア組のエリートでもある。

 警察は年齢に関係なく階級がものを言う社会だが、とりわけ警務部・総務部に配属される人材は昇任試験を猛烈なスピードで突破していく。最短で30代半ばで「警部」に登用される者もいる。警部は本部では係長、所轄署では課長代理の役目を負い、警察内部では「上級幹部」と位置付けられている。こうした昇任試験の成績優秀者は「一発・一発組」と呼ばれ、警視庁全警察官の羨望の的でもある。ヒトイチでも一発・一発組がメンバーの大半を占めている。そして業務の特殊性から、警視庁公安部と密接に連携している。

「調査対象者に気付かれないように、行動確認や基礎調査を行う。対象を丸裸にするのは公安警察官の十八番だが、ヒトイチの監察官にも公安顔負けの捜査技術が求められるんだ」(警視庁関係者)

 実際にヒトイチには、公安部出身者が多いとされている。調査対象者は、捜査のプロであることがほとんどだ。つまり警察の手の内を知り尽くした人物を対象としなければならない。

 大掛かりな尾行を展開することもあるという。カップルや会社員に扮した、捜査員の集団が風景に溶け込みながら尾行する。上空2000メートルには警視庁航空隊のヘリコプターが対象者を監視する。都内の分室に陣取ったヒトイチの指揮官はリアルタイムで送られてくる対象者の画像を複数のモニターでチェックし、無線を通じて捜査員に指示を出す。公安仕込みのプロの技術にかかれば、警察官といえどもたやすく「丸裸」だ。

道を踏み外す3大要素は「酒、金、異性」

 酒、金、そして異性。警察官が道を踏み外す3大要素とされている。

 筆者が取材した「金」「異性」の2つのケースをご紹介したい。

 2018年2月。神奈川県内に住む50代男性が警視庁町田警察署を訪れるなり訴えた。

「封筒に入れていた28万円を落としてしまったようだ。店の中で落としたのは間違いない。誰かが盗んだんだ」

 この事案はすぐさま拾得物を管理する町田署警務課から警視庁警務部人事一課監察係に速報された。通常ではありえない報告ルート。それには理由があった。単なる拾得物横領ではなく、現職の警視庁警察官が関わった詐欺行為だったからだった。

 町田署に男性が訴える2日前。1人の男が町田署の受付に現れた。大学生のようなまだあどけなさも残る若者だった。

「私が落とした28万円を受け取りに来ました」

 男は落としたであろう場所、金品についてよどみなく答えた。対応した警察官は男に署名捺印を求め、発見された店から署で預かっていた28万円を手渡したのだった。この男は一体何者だったのか。男の職場は町田署から十数キロ離れた杉並区高井戸にあった。

 男は地域の治安の要、警視庁高井戸警察署の地域課に所属する巡査だったのである。

「すぐにばれるのにどうしてこんな事をしてしまったのか」

 東京・文京区後楽。ここに都内の落とし物=拾得物を一堂に集めて管理する、警視庁遺失物センターがある。警視庁遺失物センターは総務部会計課の附置機関で、警視である遺失物センター所長を筆頭に、遺失物第一係、遺失物第二係合わせて80人の警視庁の組織である。担当業務を細かく見ていくと、遺失物第一係は遺失物の再調査・警察からの受け入れ・鉄道会社からの受け入れ・貴重品・集荷報告となっており、遺失物第二係は、高額拾得物の管理・拾得物の統計・システム管理が主たる業務となっている。ちなみに警視庁遺失物センターはテレホンサービスも設けて、拾得物に関する問い合わせに対応している。

 今回のケースは町田市内の食料品店での拾得物28万円が店側から町田警察署に届け出られた。町田署の警務会計課の担当者は、警視庁内部の「遺失物総合管理システム」へ拾得物のデータを入力。システムへの登録は日常的に行われており、システムを活用することで警視庁の全ての地域警察官(主に交番などで職務に当たる制服警察官)が落とし物の照会を速やかに行うことができるのだ。

 28万円の拾得物は、本当の引き取り手が警察署を訪ねる2日前に男が受け取っていた。その男は警視庁高井戸署の地域課巡査Y(24)だったのだ。Yは詐欺の疑いで逮捕となった。Yは警視庁警務部人事一課監察係の聴取に、地域警察官なら誰でも触れることができる「遺失物総合管理システム」を使って、現金について把握したと答えたという。警視庁関係者によると、このシステムは警視庁や他の府県警ともデータ照会が可能で、専用端末は警視庁102署の管轄下にある交番に必ず1台設置されているという。Yは勤務先の交番でシステムに触れていたとみられる。警視庁の警務部参事官兼人事一課長は「警察に対する信頼を著しく損なう行為であり、捜査結果を踏まえ、厳正に対処する」とコメントした。警視庁の現職地域警察官のあるまじき犯罪行為。

 ある警視庁幹部はあきれた口調で筆者に語った。

「すぐにばれるのにどうしてこんな事をしてしまったのか。そもそも完全に犯罪者の思考回路だ。警察学校での教養を徹底的に見直さないといけない」

端緒の8割は「警察内部からのタレコミ」

 酒と異性でヒトイチからの出頭要請に怯えるのは、警視庁の捜査部門に現在も所属する、X氏。X氏は私立大学を卒業後、1990年代後半に警視庁に入庁している。父親は警視庁警察官だ。ちなみに警視庁では祖父や父、親族が警視庁警察官であったという者が多くを占める。親族が警視庁警察官であることは「最高の身分保証」となり、採用試験もパスしやすくなるという。X氏の警察学校卒業後の卒配(卒業配置)は東京郊外にある警察署だった。どの警察官も避けて通れない地域課の交番勤務から警察官人生がスタートした。初任署では職務質問による検挙や留置管理などさまざまな業務を経験。平均倍率10倍以上の巡査部長試験にも見事合格した。そこでX氏の最初の「事件」が起こる。飲酒に絡んだものだった。

 この一件でX氏はヒトイチから戒告処分を受けている。X氏は当初、希望を失っていたが一念発起し昇任試験の勉強に集中する。しかし、何度警部補試験を受験しても合格しない。X氏は所属の上司の推薦を受けており、通常は無条件で一次試験はパスできるとされている。当時の事案が尾を引いている――。最近になり、自分が昇任停止の処分を適用されていることをようやく悟ったという。

 X氏は警視庁本部での勤務経験はない。現在も警察署に所属している。妻と2人の子供にも恵まれている。しかし最近、ある一般女性と知り合い、酔った勢いもあり男女の関係となってしまったという。相手とはもう会うこともないと話すX氏。ヒトイチからの出頭要請に怯える日々を送っているという。X氏はどうなるのか。警視庁関係者が説明する。

「本件は明らかに懲戒処分の対象となる。この警察官の場合、過去の懲戒が昇任試験に影響していると考えるのが自然。本件で処分されたら左遷か諭旨免職だろう。警察官としての人生を終えてもらうしかない。そもそも適性がなかったんだよ」

 ヒトイチの調査の端緒の8割は「警察内部からのタレコミ(密告)」だという。同僚や上司の不法行為などが電話や投書という形で日々寄せられるのだという。そこから対象への行動確認、身上人事記録の確認、立ち回り先などありとあらゆることが調べられる。被疑者に対する捜査と同じで不祥事案の証拠が集められる。そしてある日、出頭要請がかけられる。その時点では対象者の「容疑」は完全に裏付けられている。監察官が対象者と対面した時点で、行く末は決まっているのだ。

 免職のような重大な懲戒処分でなくても、ヒトイチに接触されたら警察官人生は終わることは間違いないようだ。

(今井 良)

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