徴用工問題の本質は「韓国の“李氏朝鮮時代”への回帰」と元外交官が指摘

文春オンライン / 2019年8月12日 5時30分

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文在寅大統領 ©getty

 日韓関係が破綻の危機に瀕している。

 7月4日、日本政府が半導体製造に必要な素材3品目の輸出管理を厳格化したが、これに韓国が激しく反応。

 続いて8月2日、貿易上の優遇措置を適用する「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を安倍政権が閣議決定したことを受け、韓国の文在寅大統領は会見で「盗人たけだけしい」などと言葉を極めて日本を批判。

 さらには韓国政府高官が、日韓間の安全保障の中核をなす軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄する可能性まで示唆した。

 もしGSOMIAが破棄されれば、日米韓同盟は根底から揺らぐことになる。

 なぜ日韓関係はここまでこじれてしまったのか?

常識外れの仰天判決

 一連の混乱の発端となったのは、2018年10月、いわゆる戦時徴用工をめぐって韓国大法院(最高裁判所)が驚くべき判決を出したことだ。新日鉄住金(現・日本製鉄)を訴えた原告4人へ1人あたり1億ウォン(約1000万円)を支払うよう命じたのだ。

 この判決がいかに常識外れであるか、重要なので改めて基本から説明しておこう。

提訴された日本企業は70社以上

 現在の日韓関係は1965年の日韓基本条約と関連協定の上に成り立っている。このうち日韓請求権協定は、両締約国およびその国民(法人を含む)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決」されており、「いかなる主張」もできないと定めている。これが日韓両国で批准され発効し、国際約束となった。

 この協定により、日本側は官民合わせて8億ドル(無償援助3億ドル、有償援助2億ドル、民間借款3億ドル)もの経済協力金を韓国に支払い、韓国側はこれ以上の請求を日本にしない、ということで落着した。つまり、韓国側が徴用工の補償を日本政府側に追加請求することはできない。それがすべてである。

 にもかかわらず、韓国大法院はこの国際条約をあっさり覆した。

 日本政府は日韓請求権協定にもとづき、韓国大法院の判決が不当であることを韓国政府側に何度も申し入れたが、韓国政府側は「三権分立」を楯に、一切応じなかった。

 同様に提訴された日本企業は三菱重工など約70社を越える。

 すでに原告側は、差し押さえた資産の現金化へ向けた手続きを開始しており、現金化は時間の問題とされる。

「韓国は、李氏朝鮮時代の姿に回帰しつつある」

 こうした韓国の振る舞いは、日本人の目には国際常識を無視した暴挙に映る。いわゆる慰安婦問題や昨年の日本海レーダー照射問題なども含め、多くの日本人が「なぜ韓国とは話が通じないのか?」「韓国に法の支配はないのか?」と驚き呆れているだろう。

 いったいなぜ、韓国は国家間の約束を反故にするのか?

「じつは韓国の振る舞いの本質は、『歴史』という視座を持つことによって見えてくるのです。韓国は、李氏朝鮮時代の姿に回帰しつつあると考えられます」

 こう読み解くのは、元外交官でキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦氏である。

 朝鮮半島の国家は地政学的な脆弱性を抱えている

 朝鮮半島の歴史を長い射程で観察することによって、われわれ日本人にとっては理解しがたい韓国の振る舞いの本質が見えてくるのだと宮家氏は指摘する。

「地政学的に脆弱な朝鮮半島の国家は、歴代中国王朝に朝貢し、冊封体制に組み込まれてきました。一方で、中国に完全に飲み込まれないよう、面従腹背の姿勢も忘れませんでした。李氏朝鮮は、周辺強国のあいだを振り子のように行ったりきたりしてバランスを取りながら生き残ってきたのです」

 第二次大戦後は朝鮮半島が南北に分断され、韓国は米国主導の自由主義陣営に属した。日本からの経済援助をもとに、「漢江の奇跡」といわれる経済発展を遂げ、繁栄を謳歌してきた。

 ところが今世紀に入って米国一強体制に揺らぎが生じ、中国の台頭、北朝鮮の核保有というあらたな変数が東アジアに持ち込まれた。

「韓国は北朝鮮と統一し、ふたたび李氏朝鮮時代の姿に戻って振り子外交を繰り広げ、強国のあいだでバランスを取りながら東アジアで存在感を発揮する――そんなシナリオが現実味を帯びてきたわけです」

 では、韓国は最終的に何を目標としているのか? また、そんな韓国を相手に日本政府は何をすべきなのか?

 宮家氏の分析は、 「文藝春秋」9月号 の特集「日韓炎上 文在寅政権が敵国になる日」に掲載されている。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2019年9月号)

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