大草原にはエポナがいた? 中国・ハイラルでリアル『ゼルダの伝説』を体験してきた

文春オンライン / 2019年8月24日 17時0分

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『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のプレイ画面では自然が美しく描かれ、馬で草原を駆け巡る爽快感はゲームの世界とは思えないほどだ。©2017 Nintendo

 週末ハイラル王国に行ってきた。いや、ゲームじゃなくて正真正銘本物のハイラル。

 中国東北部の内モンゴル自治区フルンボイル市に、ハイラルという場所がある。ファミコンディスクシステム世代からSwitch世代まで、その名を聞いて思いつくのは任天堂『ゼルダの伝説』シリーズで毎度災難に見舞われるハイラル王国だろう。

 ハイラルが位置する内モンゴル自治区と言えば、壮大な大草原が観光の目玉。2017年3月に発売され国内外で大ヒットした神ゲー『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以降BotW)で、風にたなびく草原の美しさと被るものがある。名前が同じで風景も同じなら、そこはもうハイラル王国だ。中国でハイラル王国が見つかるかもしれない期待を胸に中国旅行へと旅立った。

注)ここより先はBotW序盤のネタバレが少々含まれます。

中国の寝台列車でハイラルへ

 2017年1月、LCCのSpring Japanが東京からハルビン直行便を就航し、中国東北部へ格安で行けるようになった。東京からハルビンまでは飛行機で3時間。ハイラルまではハルビンから更に飛行機を乗り継いで1時間20分で着くが、せっかくなら中国旅行の醍醐味である寝台列車に乗りたいところ。

 中国の寝台列車には、高包(スイート)、軟臥(1等)、硬臥(2等)など、様々なクラスがある。高包は個室、軟臥は2段ベッド、硬臥は3段ベッド。字面の通り硬臥より軟臥のベッドが柔らかい。

 硬臥のコンパートメントにたどり着くと、早くも下段で宴会が始まっていた。軟臥では物静かな乗客が多いが、庶民的な硬臥では乗客みんなで食べ物を持ち寄ってワイワイ楽しむ習慣がある。いつもなら宴会に混ざってお互いにツマミを振る舞い合うところだが、ハルビンまで旅程が一緒だった友人にハルビン市内を案内して疲れていたので、「おやすみ」と一声かけて上段のベッドに横たわった。

 21時半に車内が消灯されると、乗客はすぐにお喋りをやめて就寝する。静かに進む鉄道の音がカタンカタンと心地よく、車掌がダミ声で起こしに来るまでぐっすり寝た。

チベット仏教僧院でアイテム拾い

 定刻より1時間弱遅れた朝7時14分、列車はハイラル駅へ到着。駅を出てタクシー運転手に「草原でパオ(遊牧民族の移動式住居)に泊まりたいんだけど、良いところ知ってる?」と聞くと、「もちろん。タクシーは2日間貸切、ハイラル周辺の観光地巡りも含めて500元(7,522円)でどう?」と言う。悪くない金額なので交渉成立とした。

 最初に到着したのは、達爾吉林寺というチベット仏教僧院。白く巨大な菩提塔の中には10万体の仏像が納められているそうだ。この塔が灰色で足が生えたら『ガーディアン』っぽいと感じるゼルダ脳には困ったもんだ。

 お寺を一通り回ると、タクシー運転手が寺の裏手にある草むらを指さし「あっちにいいものがあるから行こう」と笑顔で言う。ついて行くと、そこには仏像や経典が山ほど捨ててあった。タクシー運転手は「好きなだけ持っていくといいよ!」と言いながら自分の手土産を確保し始めた。

 確かにBotWでは草むらにアイテムが転がってるけど、そこは忠実に再現しなくていいんですよ? キノコならともかく、仏像なんて拾ったら罰が当たりそうで怖いじゃないか。

ハイラル王国は、中国のハイラルにあったんだ!

 手土産に満足したタクシー運転手がほっくほくの笑顔で次に連れて行ってくれたのは、本日宿泊するパオ風ホテル。門をくぐって小高い丘を登ると、見渡す限りの大草原が突如視界に飛び込んできた。
 

 ゲーム画面に入り込んだかのような感覚に陥るほどのハイラル王国感。1986年発売の1作目『ゼルダの伝説』以来、子供の頃から幾度となくテレビ越しに見続けたハイラル王国は、日本から案外近くにあったんだ。BotWの映像美で目を奪われたあの草原は、本物であればなおさら美しさが増し、いつまでも見ていられる。

 と思っていたのもつかの間。大型ツアーバスが数台現れ、中からオバチャン達が大量に出てきた。それぞれ手には派手なストールを持っている。あぁ、中国のオバチャン恒例のアレを始める気ですね……。

 派手なストールを振り回し仙女のようにはためかせ、キメキメのポーズで写真を撮り始めた。撮影大会の始まりである。ストール仙女持ちは、中国全土で見られるオバチャンの流行りだ。どこを向いても仙女ごっこに躍起になる面白いオバチャン達が視界に入ってきて、ハイラル王国から現実世界に一気に引き戻される。撮影大会が始まると1時間は終わらないので、チェックインを済ませてパオに入室した。

 本来パオは木や布、毛皮などでできているが、中国では観光客向けに作られたトタン板製のものが多い。内部はベッド、トイレ、シャワー、エアコン完備。遊牧民の雰囲気は皆無だが居住性は高い。日本で流行りのグランピングに近いイメージだ。本物のパオの場合、野糞生活の可能性もあり得るので、そこまでのワイルドさを求めない方にはオススメだ。
 

大草原の馬柵にはエポナがいた

 フルンボイル大草原のホテル施設には各種アクティビティが用意されている。馬車、弓矢、鷲、バギー、とどれも楽しそうだが、やはりここは内モンゴルで一番人気の乗馬体験で、リンクのように颯爽と草原を駆け抜けたい。ホテルから少し離れた場所に『馬宿』そっくりの馬柵があり、さっそく行ってみる。
 

 伝説の馬『エポナ』のような尾花栗毛の馬を見つけ、「この子に乗りたい」と言ったところ、馬乗りに「こいつは気性が荒いから無理だ」と断られた。やはりエポナはリンクにしか懐かないのか。観光客向けのおとなしい性格の馬に乗り、小走りで1時間の草原散歩。BotWでも疾走すると絶景が楽しめないので、小走りで移動したもんだ。

 お次は『パラセール』ならぬ「マイクロライトプレーン」。軽量な機体を有する航空機だ。他のアクティビティは1回100元(1,504円)なのに、マイクロライトプレーンだけ1フライト548元(8,244円)と異様に高く、『祠の試練』よりもはるかに辛い財布の試練に立ち向かうことになったが、パラセール疑似体験をするためには乗るしかあるまい。係員に「上空は寒いから上着を貸すよ」と分厚い防寒着を渡された。

 パイロットの後ろに乗り、いざハイラルの空へテイクオフ。風の影響を受けて上下に揺れるスリルを味わいながら一気に上昇した。係員が言っていた通り、上空はかなり寒い。BotWの序盤、半裸で雪山『ハイリア山』へ突入してゲームオーバーになった甘酸っぱい思い出がよみがえる。

 マイクロライトプレーンが上空で旋回を始め空から地上を見下ろした瞬間、目前に広がる風景がパラセールを使って滑空しているハイラル王国の景色そのものだった。やはり中国のハイラルは、ハイラル王国で間違いなかったんだ!

 ここまで散々ハイラル完全一致っぷりをお伝えしてきたわけだが、任天堂に確認したところ「ゲーム中のハイラルという地名は、中国のハイラルとは特に関係性はございません。」との回答をいただいた。しかし、地球上にある自然美の要素をふんだんに盛り込んだBotWのどこかにモデル地として採用されているような気がしてならない。2019年6月に米国ロサンゼルスで開催されたE3でBotWの続編が発表された。続編でも中国のハイラルに似たどこかがあるかもしれない。

今回の予算とスケジュール

<スケジュール>
■2018/6/14(木)
08:10 NRT - 10:05 HRB / Spring Japan IJ1051
ハルビン観光
20:24 ハルビン駅 - / K7091
車中泊
■6/15(金)
- 07:14 ハイラル駅
フルンボイル大草原観光
草原のパオに宿泊
■6/16(土)
ハイラル市内観光
19:59 ハイラル駅 - / K7092
車中泊
■6/17(日)
- 06:19 ハルビン駅
11:05 HRB - 14:55 NRT / Spring Japan IJ1052
 

<費用>
計50,038円
航空券代 16,848円
寝台列車代 9,940円(往路硬臥2等寝台+復路軟臥1等寝台 )
タクシー代 7,840円(2日間貸し切り)
宿泊代 3,140円(エアコン・シャワー付きパオ1泊)
マイクロライト 8,270円
その他(飲食、お土産) 4,000円

 雄大な草原で乗馬やパオ生活を楽しみたい場合、モンゴルだとフライト代がネックになるが、中国の内モンゴルはお安く楽しめる穴場だ。中国人に人気の観光地で、夏場は鉄道もパオも予約必須。中国は国土が大きく、島国日本とは比較にならない壮大なスケールの自然がてんこ盛り。お隣中国でブレス オブ ザ ワイルド(自然の息吹)を感じる旅はいかがでしょ?

(多田 美和)

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