『ブラインドスポッティング』――桜庭一樹のシネマ桜吹雪

文春オンライン / 2019年9月8日 11時0分

写真

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 舞台はアメリカ西部のオークランド。コリンとマイルズは十一歳からの大親友で、大人になった今は同じ引越し業者で働いている。ところがある夜、地元のバーで暴力事件を起こしたところ、主犯のマイルズではなく、一緒にいたコリンだけが逮捕されてしまった。マイルズが白人、コリンが黒人だったために――。

 この作品は、そんな苦しい事件の記憶から始まる、社会派青春映画なのだ。

 ずっと一緒にいた大親友のはずの二人。でも、事件をきっかけに、実はお互いが全く異なる風景を見ていたことに気づく。コリンが生活していたのは、いつ警官に撃たれるかわからない危険な街。でもマイルズが遊び暮らしていたのは……?

 みんな、自分の立ち位置からしか世界を見渡すことができない。だから、盲点(ブラインドスポッティング)が毎日どんどん生まれる。でも自分の力で盲点をみつけて修正するのは、すごく難しい。

 だからこそ、己とは異なる者と「みつめあい、魂をみつけろ。通じ合い、理解するんだ」と映画は私たちに訴える。その上で、相手の意見を無理に変えさせて“自分と同じような人”に塗りかえるのではなく、他者とは本来“異なる存在”“個”なのだということを、今こそ、真に、真に知る必要があるんだ、と。

 観終わって、わたしはいまの日本に横たわる様々な問題のほうを、ひどく重たい気持ちで振り返りました。移民、韓国や中国との問題、広がる経済格差……。憎悪と不寛容を乗り越えなくてはいけないこの時代にこそ、撮られるべき映画なのだと思えました。

 主演俳優二人は、実は長年の友人で、今作の脚本とプロデュースも兼任しているとのこと。「きっと、二人がこれからも一緒にいるため、みつめあい、魂をみつけ、通じ合い、理解し、この映画を完成させる必然があったんだ……」と想像したら、そこはすっごく、萌えました。

INFORMATION

『ブラインドスポッティング』
新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほかで上映中
http://blindspotting.jp/

(桜庭 一樹/週刊文春 2019年9月12日号)

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