大阪の“厄介な”終着駅&激狭ホーム駅 2つの「中津駅」には何がある?

文春オンライン / 2019年9月16日 5時30分

写真

大阪メトロ御堂筋線の中津駅には何がある?

 ふだん、当たり前のように乗っているいつもの電車。何も考えずにホームに滑り込んできた電車に乗れば、決まって目的地まで連れて行ってくれる。実にありがたいものである。

 ところが、そんな電車がときに牙をむく……というといささか大げさだが、中にはいつもの目的地より手前を終点としてしまう電車がある。例えば東京で言うなら京浜東北線の蒲田行。川崎・横浜方面まで帰ろうとしても、夕方以降はずいぶんな本数が蒲田で終点を迎えてしまう。このように、“途中の駅で終点になる電車”は厄介な存在なのである。

 そんな厄介終着駅、関西方面でその代表格とも言えるのが大阪メトロ御堂筋線の中津駅であろう。

なぜ「中津行き」は厄介なのか

 大阪メトロ御堂筋線はキタの中心地・梅田、さらには淀屋橋・心斎橋・なんば・天王寺と大阪の並み居る巨大タウンを結んでいる大動脈地下鉄だ。さらに北端では北大阪急行線に乗り入れて千里ニュータウンまでも結んでいる。新幹線のターミナル・新大阪駅も通っているから、大阪に住んでいる人でなくとも利用したことのある人は多いだろう。そしてこの御堂筋線、朝と夕方に「中津行き」という厄介な電車が4本に1本の割合で存在している。

 なぜ中津行きが厄介なのかと言うと、梅田やなんば、天王寺から電車に乗って新大阪を目指しても、中津駅は梅田駅のひとつ先。だからとうぜん新大阪まではたどり着かない。御堂筋線に乗りなれていない人が「これに乗ったら新大阪に行けて新幹線に乗れるな」と思って誤って中津行きに乗ってしまったら、もう大変なことである(まあ中津から新大阪まではたかだか2駅なのだが)。

 そんな“厄介者”の中津は一体どんな駅なのだろうか。梅田駅から地下鉄にひと駅だけ乗って、訪れてみた。すると……もったいぶるほどのことはなくて、ごく普通の地下鉄の駅であった。中津駅がある場所は梅田駅(JRでは大阪駅である)の少し北。御堂筋線は地上に出て新御堂筋と並んで走って橋で淀川を渡るのだが、その直前の地下駅が中津駅だ。ホーム上にはそこそこ乗り降りしている人の姿もあったが、梅田駅や新大阪駅のようにごった返しているわけでもない。

 地下のホームから改札を抜けて階段を登って外に出た。すると、そこは“梅田”という町とひとつづきになっているような街であった。近くには東横イン梅田中津1など、“梅田”の名を冠するホテルがいくつかあるし、周囲には高層ビルがいくつも建っていた。オフィスなのかマンションなのか、おそらくその両方だろう。また予備校もあるようで、予備校生と思しき若者たちの姿もあった。思えば東京でも新宿駅のお隣・代々木駅は代々木ゼミナールの最寄り駅。“大ターミナルのお隣は予備校の駅”はお決まりのようなものなのだろうか。

利用者数は梅田駅の10分の1以下

 ちなみに、大ターミナルのお隣という点でいうと、新宿のお隣小田急線南新宿駅が思い起こされる。こちらは新宿駅の駅勢圏に含まれているおかげで大都会の中にあるのに小田急線全駅の中で2番目に利用者数の少ない駅だった。では中津駅はどうかというと、御堂筋線最低ではなかったが、1日の乗車人員は2万290人。梅田駅が21万9739人だから10分の1を下回る。やはり、ターミナルである梅田駅まで歩く人が多いのだろう。

 結局、中津駅の構内や周囲を歩き回っても、“終点”になるほどの駅かどうかはよくわからなかった。ただ、よく考えれば“中津行き”があるということは逆に中津駅始発の電車もあるということ。梅田周辺で働く人たちが南方へと帰宅するために電車の数を増やす必要があり、そこで中津始発の電車を設定、結果として“中津行き”の厄介電車が生まれてしまったのだろうと思われる。

もうひとつの「中津駅」

 さて、このように大都会の町中に佇む(と言っても地下駅であるが)中津駅。ところが、「中津」と名乗る駅はこの御堂筋線の駅だけではない。ごく近くに阪急の中津駅もあるのだ。こちらもターミナル・梅田のお隣。つまり、南新宿駅や御堂筋線中津駅のように利用者数の少ない小さな駅なのだろうか。せっかくなので足を運んでみた。

 路地を抜けてJRの梅田貨物線(大阪駅を経由せずに新大阪方面から大阪環状線の福島駅方面に通じている線路で、特急「はるか」などが走る)の下をくぐって約5分。「阪急中津駅」という看板が見えてくる。駅の入口はどこなのか。薄暗いガード下には、いかにも“昭和”という言葉がふさわしい、よそ者が初めて入るには勇気が要りそうな立ち飲み屋があるが、とても阪急の駅があるようには思えない……。

ものすごく狭いホーム

 が、実際にはこの立ち飲み屋の横を抜けると階段があって、その先に阪急中津駅の改札口があるのだ。つまるところ、大ターミナル・梅田のお隣とは思えないほどのさみしげな駅なのである。阪急の路線は、梅田駅から淀川を渡った先の十三(じゅうそう)駅まで神戸線・宝塚線・京都線の3路線が並走、十三駅で3方向に別れていく。中津駅はこの3路線並走区間の途中の駅。ただ、京都線の線路にだけはホームがなく、停車するのは神戸線と宝塚線だけである。そしてこのホーム、実に狭いのだ。

 3路線が並走する区間に作ったからなのだろうか。神戸線・宝塚線それぞれに1面の島式ホームがあるのだが、2本の線路の隙間に無理やり押し込んだかのように細長い。よく「黄色い線の内側でお待ち下さい」などと注意アナウンスされるが、阪急中津駅では黄色い線の内側は黄色い線の外側よりも狭いくらいだ。ホームドアなどとてもじゃないが取り付ける余裕はなさそうである。その上、あろうことか中津駅は各駅停車しか停まらないので特急や急行はさっそうと通過していくから恐ろしい。さすがに通過電車は比較的ゆっくり走っていくので危ないというほどのことはないのだが、少し気をつける必要はありそうだ。

阪急梅田駅1日50万人 vs. 阪急中津駅1万人

 そうした阪急の中津駅、その隣を国道176号線が通っている。こちらも高架で阪急のホームと同じ高さにあって、つまりは国道と阪急の線路が横並びなのだ。さすがの国道176号、ビュンビュンとクルマが通り、阪急の線路もマルーン色の電車が盛んに走る。国道と並んでいるのにわざわざ一度高架下まで降りて改札を通らなければならないのは少し不便に感じるが、各駅停車しか停まらない駅だから仕方ない。乗降人員は1日1万人を少し超えるくらいで、梅田駅の50万人超と比べると中津駅の立場は御堂筋線と同じくあまり強くないようだ。

 さて、その中津駅の狭いホームから国道側を眺めると、その先には件のJRの梅田貨物線が伸びていて、その先には梅田の高層ビル群が見える。高層ビル群の手前には広大な空き地もあるが、これは2013年に廃止された梅田貨物駅の跡地。とうぜん一等地の中の一等地で、“うめきた地区”として絶賛再開発中である。きっと、もう数年もすれば巨大なビルが建つであろう。現在新大阪駅まで到達しているおおさか東線が延伸し、梅田貨物駅跡地あたりに北梅田駅が設けられる予定もあるという。今はさみしげな阪急の中津駅は、そうした梅田の変貌をつぶさに見ることができる駅なのだ。

 そう考えれば、御堂筋線中津駅から阪急中津駅への小さな旅も、なかなかに興味深い。大ターミナルの隣にあるがゆえに存在感が薄く、時には“厄介者”扱いもされてしまうようなふたつの中津駅。だが、そこにも時代を見つめてきたドラマがあるということか。大阪・キタを訪れたなら、ちょっとだけ足を伸ばしてみてもよさそうだ。梅田駅を起点にくるりと一周しても1時間足らず、である。

写真=鼠入昌史

(鼠入 昌史)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング