体制側が語る香港デモ「政府は完全に判断を誤った」「警察はもう限界だ」――大物議員に聞いた

文春オンライン / 2019年9月23日 11時0分

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田北辰。田ファミリーは香港の政財界に多大な影響力を持つ財閥である。兄の田北俊も、建制派政党・自由党の名誉主席という有名政治家だ。写真は田北辰の秘書提供

香港デモは「オタク戦争」? 最前線のガチ勢“覆面部隊”の意外な正体とは から続く

 香港で逃亡犯条例改正案問題を発端に発生した大規模な抗議運動は、発生から100日以上が経った現在も収束の気配を見せない。この事件は日本国内でも比較的関心が高く、催涙弾が飛び交う激しい衝突現場のレポートやデモ参加者の肉声、事態の背景などが数多くのメディアで報じられてきた。

意外と少ない「体制側」の意見の報道

 だが、意外と少ないように思えるのが香港の「体制側」の意見の紹介だ。

 もちろん、香港政府は北京の中国政府の強い影響下にあり、重要な政策決定は北京の意向に従わざるを得ないのだが、いっぽうで香港の立法会議員(国会議員に相当)の一部は普通選挙で選出され、市民にはデモ活動や体制批判的な言論も許されている。ゆえに中国内地と比較して、香港政府はある程度までは民意を汲み取った政治をおこなうことが求められている。

 今回、私があえて話を聞いたのは、香港政界では建制派(中国に融和的な体制派)とみなされる立法会議員のひとり、田北辰(Michael Tien)だ。彼は現在、香港の議員としての身分のほかに北京の全国人民代表大会の香港地区代表をつとめているほか、中国大陸に店舗多数を展開している現地の有名アパレルブランド「G2000」の創始者としても知られる。

 もっとも田北辰は、今回の抗議運動の初期段階である6月14日に逃亡犯条例改正案の慎重な検討を求める声明を出すなど、建制派としては尖ったポジションにいる(ちなみに彼の兄の田北俊も大物政治家なのだが、2014年の雨傘革命の際、当時の行政長官だった梁振英の辞職が必要であると発言。北京ににらまれて中央政府の政治協商会議代表から外されている)。

 香港デモの姿をさまざまな視点から知るうえでは、現体制を擁護する枠内の人たちの現状認識と、彼らが考える解決案を聞いてみるのも悪くないだろう。以下にインタビューをご紹介したい。

◆◆◆

デモはなぜここまで大規模化してしまった?

――逃亡犯条例改正案への反発から始まった香港デモですが、9月4日に同案の撤回が示された後も終わる様子がありません。田議員は現在のデモ参加者たちが何を求めていると思いますか?

田北辰 発端となった逃亡犯条例改正案の問題から話させてほしい。抗議運動がここまで深刻になったのは、改正案問題がいくつかの要因を与えたと考えている。まずひとつめに挙げたいのは、香港政府側が全体的に説明不足のきらいがあったことだ。

――逃亡犯条例改正案が検討された契機は、2018年2月に香港人男性が旅行先の台湾でガールフレンドを殺害した事件です。香港から台湾への犯罪者の引き渡し問題が発端となりました。

田北辰 ああ。しかし、台湾の殺人事件とこの件(中国への容疑者送還を含めた逃亡犯条例改正案)は、別々に解決すべきだったのだが、一緒に進められてしまった。結果、条例改正案に反対する人の宣伝によって、「たとえ香港の域内でも、中国内地で違法とされる行為を犯せば、中国内地に送られて現地で裁かれる」といった誤解をする市民が多く出たのだ。

田北辰 むろん、これは正しい理解ではない。実際にそんなことがあれば一国二制度の原則に反する。しかし、香港政府の説明不足によって、そのような宣伝がなされてしまい、多くの市民の誤解と反対を招いてしまった。

「香港政府は完全に判断を誤った」

――他に要因はありますか?

田北辰 政府側が改正案成立を焦っているように見えた問題も大きい。多くの市民は香港政府の拙速さをみて、北京の中央政府の命令や香港政府による陰謀があるのではないかと考えた。香港政府を信頼しないようになったのだ。

 近年、香港市民の一国二制度に対する信頼が弱まっていること、すなわち自分たちの意見が(北京の中央政府から)尊重されていないと感じるようになっていたことも重要な要因になっている。

――なるほど。

田北辰 今回、香港政府は完全に判断を誤った。なかでも(大規模な抗議行動が事実上開始された)6月9日、数十万~100万人が反対デモをおこなった当日の夜に、政府側が改正案の審議継続を表明したことの影響は大きい。多くの市民に、民意が無視されているという感覚を与えてしまったのだ。

 抗議運動の動機はいまや、条例改正案問題についてではなく、香港政府が民意を無視したことへの反感に変質している。

 香港政府、さらにはその背後に存在する北京の中央政府が、香港市民の民意を汲み取っていないという思いが強まっているのだ。それが、今回の抗議運動がこれほどのものとなった理由だと考えている。

「暴徒」と「普通の人」と……デモ参加者は3種類

――今回の抗議行動は、事前に許可された平和的なデモや集会に参加する「和理非」と呼ばれる穏健な多数の参加者と、警官隊と激しく衝突する「勇武派」と呼ばれる過激な少数の参加者に分かれています。

田北辰 デモ参加者には3種類の人たちがいる。まず私の見るところ、数百~1000人は極端に暴力的な人々だ。彼らは2016年2月の旺角の暴動など、過去にもさまざまな騒動を起こしてきた。

 旺角暴動の容疑者らは現在、逮捕・起訴されており、一部の者はドイツへ行ったのではなかったかな?( 参考記事 )。彼らについては誰も同情していない。つまりは「暴徒」ということだ。

――ただ、毎晩のように起きる警官と市民の衝突では、もっと多くの人が衝突に加わっているように見えます。

田北辰 その通り。極端に暴力的な人たちの後ろには、数千人から数万人の血気盛んな若者たちがいる。いわば、今回の(警官隊との衝突を伴う)抗議運動は、まずひとにぎりの極端に暴力的な人たちが騒ぎを起こし、そこに非暴力的だが彼らの思想を支持する若者たちの集団が加わる形で起きている。

 さらにその後ろにいるのは、数十万人の普通の人たちだ。この普通の人たちは(それぞれ事前許可を受けた大規模な平和的デモである)6月9日、6月16日、7月1日、 8月18日のデモなどで姿を現している。

「悪いやつら」ほどよく逃げる

――なるほど。確かにデモ現場を見ていても、そのような構図はありそうです。

田北辰 今回の1件を通じて、香港警察は1000人以上(注.9月16日までに約1453人)を逮捕しているが、そのなかには後者の若者たち(=「極端に暴力的な人たち」と一緒に衝突現場に出てくる血気盛んな若者集団)がかなり含まれている。

 むしろ、私が聞いたところでは、中核となる極端に暴力的な人たちは逃げ足が早く頭がいいため、ほとんど捕まっていないという。彼らを捕まえることが非常に重要だ。対して、それにつられた若者を捕まえる行為は意味がない。むしろ、警察に対する反感をむやみに招くことになるので、彼らの逮捕を盛んにおこなうことは適切でないとすら言える。

 毎回の衝突現場では、デモ参加者側が先に手を出していることが多く、彼らには誤りがある。だが、過度の逮捕をおこなっている警察にも誤りがある。現代は誰もがソーシャルメディアになる時代だ。(逮捕の)刺激的な場面が撮影されてネットで広まることで、より多くの人がデモ参加者を支持するようになる。

 まったく、ジレンマだと感じるだろう? 最も暴力的な一団は逮捕できず、それにつられた若者を逮捕することで世論の反発が強まる。結果、数十万人の一般の市民が動き、彼らを支持することになっているのだ。

「警察の暴力に対する調査委員会」が最も重要だ

――デモ参加者らは7月以降、(1)逃亡犯条例改正案の撤回に加えて、(2)香港警察の暴力を検証する独立調査委員会の設置、(3)拘束された参加者の釈放、(4)当局側による「暴徒」認定の撤回、(5)立法会議員と行政長官(国会議員と大統領に相当)の普通選挙による選出という「五大要求」を掲げています。

田北辰 私は最前線のデモ参加者(=勇武派)とも平和的な参加者とも数多く話をした。もはや(1)の条例改正案の撤回は重要ではなく、誰も関心を持たなくなっている(注.9月4日に撤回が表明された)。また、「五大要求」の後半の(3)~(5)は必須ではないと考える人も多い。

 現在、多くの人が最も求めているのは(2)の調査委員会の設置だ。仮に香港政府がこちらに同意すれば、問題の多くは解決する。これが最も重要だ。

田北辰 (穏健な)デモに加わっている数十万人の市民が求めているのは、公平な正義だ。独立調査委員会を通じて、警察の行為の是非が明らかにされ、またデモ参加者についても、どのようなバックグラウンドがあるのかを明らかにされることが求められている。

「背後にCIAがいる、台湾や日本がいる」デモ参加者の不満

――確かに世論調査でも、独立調査委員会を重視する意見が強いようです。

田北辰  現在、香港の社会では多くの人が警察に不満を持ち、暴力を濫用している、逮捕時や拘束中にデモ参加者を殴打していると批判している。

 いっぽう、多くの人はデモ参加者にも不満を持ち、背後にCIAがいる、台湾や日本の勢力がいるといった(陰謀論的な)話をしている。

 現在の状況が継続すれば、香港社会は深刻な分断に見舞われてしまう。たとえば家族の間ですら意見によって分断されてしまいかねない。これは非常に憂慮すべきことだ。

 現在の香港にある独立監察警方処理投訴委員会(警察の監査機関)は、多くの市民から香港政府の一部分だとみなされており、信頼されていない。ゆえに(中立的な)法曹関係者が参加する独立調査委員会が必要なのだ。

雨傘革命はなぜ失敗した? 今回のデモと何が違う?

――今回の抗議運動の要因について経済問題を指摘する声もあります。不動産価格の高騰や若者の貧困化、過去の時代と比べて若者が将来への展望を抱きづらいといった問題です。これらは抗議運動の激化と関係していますか?

田北辰 もちろん関係はあるが、主たる理由ではない。5年前にも「占中」(注.オキュパイ・セントラル。雨傘革命の契機のひとつだが、体制側は雨傘革命全体をこう呼ぶ)があっただろう? だが、あれはうまくいかなかった。

 それはなぜか。占中のデモ参加者らは道路を占拠したが、政府が相手にせず放っておいたのだ。ゆえにデモ側は騒ぎを起こすことができず、警察に暴力を振るわせることもあまりなかった。結果、道路占拠をうっとうしがる市民も増え、民意は逆転し、デモ参加者らは自発的に立ち去ることになったのだ。結局のところ、(抗議運動の成否を決めるのは)民意ということだ。

 当時も不動産価格は非常に高く、人々は強い不満を持っていた。こちらは長年の問題であり、現在と状況が違うわけではない。だが、(雨傘革命の)当時の大人たちは若者を支持しなかった。それは社会運動の基礎を欠いたがゆえだ。

 対して、現在の抗議運動は警察や香港政府への批判という点で広く市民の賛同を得るにいたっている。社会運動の基礎があるわけだ。

デモ隊を「ほうっておく」ことは出来なかった?

――では、今回の抗議運動に対しても、香港政府側は5年前と同じく「ほうっておく」という選択肢もあり得るのではありませんか?

田北辰 なるほど(笑)。それは面白い質問だな。ただ、この問題はちょっと注意して答えることが必要だ。前回と今回ではちょっと事情が違うのだ。

 前回の占中(=雨傘革命)では、デモ参加者たちは路上を占拠しており、警察側に手を出すように迫りはしなかった。だが、今回の彼らは、あえて警察側に「手を出させる」よう仕向ける戦略を取っている。

 今回の場合、香港政府側がデモ参加者を「ほうっておく」と、やはり(市民からの)批判を受けることになる。デモ参加者たちは公共物を破壊しているのだから、警察はそれを放置するわけにはいかないのだ。

 だが、ひとたび警察が手を出せば、なにかしら誤りは犯してしまう。デモ参加者側はアジ文書を多く出してそれを批判し、警察側を憎むムードをかき立てていく。

中国の軍事介入は「引き延ばせる」か?

――日本のメディアは、中国内地の人民解放軍や武装警察が香港に介入する可能性に強い関心を持っています。香港政府は事態をどう回避しようとしていますか?

田北辰 私の見るところ、香港政府はそれを引き延ばそうとしている。自分たちの警察力でなんとかできないかと。ただ、もしもそれができなくなるとすれば……。たとえばこういう状況が考えられる。

 ひとつめは、抗議運動が激化するなかで人命が失われることだ。これは現在はまだ起きていないし、決して起きてほしくはないが、仮にそうなれば多くの人の反感を集める(=そのため混乱状態が加速し、事態が次の段階へと動いてしまう)。

 ふたつめは香港警察が限界を迎えることだ。彼らがいよいよ疲弊して事態を押さえきれなくなると危うい。だが、そうした状況が起きない限りは、香港政府は(中央の武力介入を)引き伸ばせると思う。

北京に軍事部隊の要請をする万が一のケース

――ただ、激化する抗議運動の現状を見れば、犠牲者が出ることも警察の疲弊もあり得る話に思えます。

田北辰 仮に引き延ばせない状況となれば、行政長官はまず香港を戒厳状態にするだろう。夜間外出の禁止や(デモ隊がよくおこなう)マスク着用の禁止などさまざまな臨時的な法令が定まるはずだ。

田北辰 これは香港政府も望まない事態だが、(仮に戒厳状態に突入しても)言うことを聞かないデモ参加者はいるだろうし、警察がそれを充分に押さえきれないこともある。その場合は、香港基本法14条にもとづいて、北京の中央政府に軍事部隊を派遣する要請がおこなわれることになる。

……もっとも、私はこれは現時点ではありえないと考える。誰もそんな事態は望んでおらず、香港政府もやりたくはないのだ。私だって望まない。決してそんなことになってはいけないはずだ。

 ただ、警察とデモ参加者の対立は深刻だ。既に述べたように、大規模な衝突があれば警察側は必ず何か誤ちをおかし、それが市民の反感を招くという、頭の痛い悪循環に陥っている。

すでに香港政府の対応能力を越えているのでは?

――これだけの騒ぎが起きて、香港警察の人数的なリソースは足りているのでしょうか? 仮に東京で同様の騒乱が起きた場合は、埼玉や千葉など他の県警が応援に駆けつけるわけですが、香港においてそうした後背地は、中国内地しか存在しません。

田北辰 非常にいい質問だ。香港警察の限界は人数の点にあり、それが最大の問題なのだよ。加えて、香港には(人民解放軍の香港駐留部隊をのぞけば)軍隊や特別部隊はいない。警察しかいない。

 率直に言って、香港は大規模な暴乱に対応できるようなリソースを持っていない。かといって、中国内地から人を連れてくるのは一国二制度に反する。たとえ中国内地に、それに対応できる人員が何万人いたとしても、だ。

――悩ましいですね。

田北辰 その通りだ。……むろん、あらゆる事態には終わりがあり、それは今回の暴乱についても然りだろう。だが、これが終わった後に香港はどうなるのだろうか。香港市民と警察との関係はすでに非常に悪いものとなってしまった。非常に懸念している。

「もはや、一定の民主化は不可避だ」

――今回の抗議運動が終わった後、香港政府はどのように市民と向き合っていくことが望ましいと思いますか?

田北辰 独立調査委員会の設置はもちろんだが、政治改革が必要だ。今回の運動を通じて、香港人の政治改革への要求は以前よりはるかに強まっている。今回、多くの市民は林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が独断専行でものごとを進めたと考えているはずだ。

 現在の香港では、わずかな指名委員会のメンバー(注.定数は1200人)のみが行政長官を選出する資格を持ち、700万人以上の多数の市民はその資格を持たない。

――確かに、返還時に約束されていたはずの行政長官の普通選挙による選出は棚上げされ、かなり厳しい制限選挙がおこなわれ続けています。

田北辰 どのような選出制度であれ、かつては問題が発生せずに済んでいて市民が納得しているならばそれでよい、というところもあった。だが、いまや多くの香港市民はこの制度にはなはだ大きな問題があると感じている。市民は自分の1票で行政長官を選出したがっている。

 今回の大規模な抗議運動は、香港の民主化の発展の必要性を強める事態となった。私はそのように思う。この点は強調したいところだ。

誰でも立候補できる「公民提名」はありえない

――興味深い指摘です。普通選挙を通じた行政長官の選出は、2014年の雨傘革命と今回の抗議運動でも共通して要求されています。ただ、これは香港政府も北京の中央政府もかなり抵抗感が強い話だと感じますが……。

田北辰 むろん、政治改革をすると言っても、いわゆる「831の枠組み」がある。すなわち、香港特別行政区基本法にもとづいて、(市民の投票の対象となる長官候補者を選出する)指名委員会は絶対に必要だ。

――「831の枠組み」とは、2014年8月31日に北京の全人代が決定した、メンバーに親中派が多い指名委員会の過半数の推薦を受けた数人だけが行政長官に立候補できるルールです。市民はこの候補者(=実質的には「親中派A、親中派B、親中派C」)の選択肢から、1人1票で行政長官を選出する仕組みでした。2014年9月に起きた雨傘革命はこれに反対して、市民が誰でも行政長官選に立候補できる「公民提名」を要求しました。

田北辰 「公民提名」といったものはありえない。それでは(北京の「831の枠組み」に反するため)さながら、香港独立と同じことになってしまう。

――香港では結果的に「831の枠組み」すら実現せず、従来の厳しい制限選挙が続いています。これを、せめて「831の枠組み」にもとづく普通選挙の実現までは持っていこうというのが田議員の考えなのですね。

田北辰 ああ。もちろん「831の枠組み」のなかで、どれほど民主的にやれるかについては限界もある。可能ならば、候補者は2人ではなく、より(政策面などでの)競争が活発になる3人にするべきだ。「831の枠組み」のなかでも、より多くの選択肢が加わることになる。

◆◆◆

“ブラック化”した香港警察が中国軍を呼ぶ?

 インタビューは以上である。抗議運動の現状やデモ参加者の性質についての鋭い分析のいっぽうで、中国の介入や政治改革の実現についてはやや歯切れが悪くなるのが、一国二制度のもとで中国の一部に組み込まれている香港の現体制の限界を示しているようで興味深い。

 話を聞いて驚かされたのは、中国の人民解放軍や武装警察が香港に進駐する可能性について、私が事前に想定したよりも高く見積もっているように思えたことだ。その背景に、彼も懸念する香港警察の人数不足と疲弊があることは間違いない。

 2019年現在、香港警察の前線部隊の人数は2万6890人(ほか、前線支援と内勤が約4300人)で、デモの対処にあたっているのは1万人程度とみられている。参考までにいえば、人口が香港の約1.8倍、面積が約2倍である東京都を管轄する警視庁の警官数は約4.4万人だ。

 現在、香港の抗議運動はときに香港域内の数カ所~10ヶ所近くで同時多発的に発生している。東京でたとえれば、同日内に八王子と町田と池袋とお台場……と、都内全域の各地で突発的に騒乱が発生する状況が3ヶ月以上も続き、それを他県警の応援なしに警視庁が単独で対処し続ける状況に近い。

 当然、香港警察の個々の警官の過重勤務や精神的疲労は深刻な状態になっている。法律事務所では警官の家族の離婚相談も増えているようだ。

 香港の抗議運動の終わりは見えない。香港警察がいよいよキャパシティをオーバーしたときこそ、ついに地獄の扉が開くことになるかもしれない。

<※田北辰への取材は2019年9月16日、電話でおこなった。取材言語は広東語の通訳をはさみつつ、ときおり安田自身が普通話(標準中国語)を用いて直接質問している。また、上記のインタビュー記事中で田北辰の発言部分は本人の言葉をできるだけ忠実に伝えているが、私の質問部分は読者の利便性を考えて言葉を補った。>

(安田 峰俊)

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